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レポート:わたしのまちの魅力開発塾 第4回「わたしのやりたいからはじめるまちづくり」

 この記事では「わたしのまちの魅力開発塾~しょうおう志援塾2021~」の第4回「わたしのやりたいからはじめるまちづくり」についてまとめたいと思います。9月17日(金)に開催されました。

 「わたしのまちの魅力開発塾」の詳細についてはこちらの記事にまとめています。申し込み方法も記載していますので、この記事をお読みになってご興味のある方はご参加いただければと思います。

そして、以前の内容はこちらのマガジンにまとめています。

今回は、外部講師として、神奈川県横浜市で「認定NPO法人こまちぷらす」を運営されている森祐美子さんに講師をお願いしました。

1.講師の森さんの原点について

 冒頭は、森さんの自己紹介も兼ねて、3つの原点を紹介してもらいました。森さんの原点の1つ目は、学生時代の新潟県の、とある高齢化の進んだ「まち」との関係でした。

 まちづくりの研究を通じてまちと関わる中で、そのまちが好きになり、学生団体をつくり、さらにはバス2台で東京から64人の学生を連れて行き、テントで泊まり、音楽活動をしたり、カフェで交流したりする、という企画を開催します。この取り組みを通じて、地域の活動にもさらに深く関わるようになったようです。

 このエピソードを聞いただけでも、とてもワクワクしますね。地方で活動をする私達としては、この取り組みにも興味深々でした(…が、今回のテーマからは脱線するので詳細は割愛)。ここで森さんが感じた原点は、

一方がホストで一方がゲストでない関係になれる場を提供したい

ということでした。

 森さんの原点の2つ目は、出産を通じての「孤立感」から始まった経験です。

①社会との隔絶した気持ち
②子育て支援拠点に参加してみて、これまで情報が伝わりにくく自分が知らなかったことがたくさんあった悔しさ
③それが自分だけの問題ではなく社会の課題であるという認識
④まちの人に頼ったら良いんだという安心感
⑤集まりに参加するようになって社会の一員にになったという感覚

 出産後、森さんはこのようなマイナスからプラスへと多くの感情を経験しました。そして、森さんが「社会の一員」になれたと感じたのは「ラッキー」だったとも言われていました。そうでない人もいる、だから、何とかしたいということが2つ目の原点になっています。

 原点3つ目は、仕事を再開してからの経験です。海外の調査の仕事を通じて、財政が不安定な地域の公共サービスの不安定さを知ります。そこで、公共に依然せず、民間で続けられるモデルを作りたいという気持ちが沸き上がります。

 そして、行動への後押しになった震災でした。東日本大震災を都内のビルで経験することとで、「いつか」でなく、今行動しようと決意されたそうです。

2.こまちぷらすの活動

 次に、こまちぷらすの活動を紹介していただきました。活動ビジョンは『子育てを「まちの力」で豊かに』。こんなプラスのサイクルを目指していると説明をしてもらいました。(詳しくはHPをご覧ください)

社会とのつながりをもって生活している人が
ライフステージの変化(妊娠・出産・介護など)によって
社会的な孤立にぶつかることがあります
こまちぷらすによって
自分の価値を受け入れてもらうことを通じ
自分の能力に気づき
新たな自分として社会に参加していく

 具体的な活動は、こまちカフェと雑貨販売、イベントスペース運営があります。活動には、複数の収入源を持つように意識しているようです。事業収入や寄付金などを通じて運営されています。

●カフェ
 カフェで大切にしようとしていることは、おしゃれで「行ってみたい」というデザイン性、頼っていいという雰囲気、関われそうな余白、そして対話の機会ということです。こうした要素は森さんの原点からきたものです。

 さらに、カフェではアレルギーを配慮して提供しています。これもあるお母さんの子どもさんががアレルギーを抱えていたのがきっかけです。他にも農家さんともコラボもしています。カフェではボランティアさんがいて、子どもを抱えるお母さんでも、子どもに気兼ねなく食事をすることもできます。

●雑貨販売
 カフェのひとつのコーナーである雑貨販売は、制作者として関わることもできますし、カフェが苦手な方への来訪するきっかけとしての役割も果たしています。

 コロナ禍でオンラインショップも展開、オンラインの交流も行っています。

●イベントスペース
 イベントスペースは、参加者にとっては仲間をつくったり、外の世界に視野を向けるきっかけになったりします。フリーランスを目指す人にとっては、講師としての経験を積む場としても作用しています。

 イベントは多様なものがあります。これも参加者の想いから作られていきます。その中には、障害を持っている子どもさんの会、不登校の子どもさん会などもあり、こうしたサポートを必要とした人達の居場所としての役割も果たしています。

●情報提供
 情報提供としては、行政からでの委託の子育て情報スペースの運営と、独自事業での地域子育てカレンダーとしてHPに子育て関係のイベント情報を集約する活動をしています。これは、1件1件地域のイベントのチラシからボランティアさんが手入力しています。入力された情報は検索でヒットするので、外出ができずにチラシを手に取れない方でも情報を手に入れることができます。

地域こそだてカレンダー

https://comachiplus.org/calendar/

●ウェルカムベビープロジェクト
 このプロジェクトは、ヤマト運輸さんや商店街と一緒に取り組み、赤ちゃんとその家族をお祝いするためのプレゼントをお送りする事業です。これまで約3200人にプレゼントをしています。ボランティアさんがプレゼントに刺繍を入れたり、必要なものを考えてプレゼントを用意したりしています。

 こうした活動の中、1人のお父さんの声をきっかけとして進んだのが、「おむつ自動販売機」です。この取り組みは全国に広がり、近年はおむつだけでなく液体ミルクも購入が可能になっています。

 ここまで聞くと、うまくいったことばかりですごい感じですが、その裏には事業としてうまくいかなかったものもいっぱいあるそうです。共通認識ができなかったり、ニーズ、タイミング、担当者の熱意などがうまくかみ合わなかったり、ということが原因です。企業を巻き込むと言っても、ただの販促になってはうまくいきません。こつこつと小さな想いを大切にして、形にできるように取り組みをしているということです。

 困りごとを確認するのは、おしゃべり会やワークショップ、アンケートによって情報収集をしています。こうした声は、葉っぱの形の画用紙に書いて会場に貼っていることで、他の人の目に見えてアイデアにつながることがあります。

3.ボランティアさんとの関わり

●関わり方に合わせた多様な取り組み
 地域で活動をしている私達としては、活動の主体となるボランティアさん「こまちパートナー」との関わりのことも気になるところで、詳しく説明してもらいました。こまちぷらすの活動は、いろいろな参加者に関わってもらえるように、関心の低い方から、担い手になっていくまで、細かく対象を分けられた取り組みが行われています。

 特に印象に残ったのが、「パートナー登録会」。ボランティアとして活動に関心を持った人には、スタッフが2時間をかけてじっくりと関わります。そのうちの1時間はこまちぷらすの活動の説明、もう1時間はボランティア希望者のお話をじっくり聞く時間です。この時間をとても大切にしているということです。あまり理解できていない状態でボランティアを始めても、お互いに思ったことと違ったということがあり得ます。だから、ここにじっくりと時間をかけているということでした。

 ボランティアさんの多様な活動の機会も提供しています。はじめは自分でやりたいことは特になかった人でも、イベントや作業を手伝う中で、やりたいことに気づくこともあります。その期間は数か月の人や数年の人、人それぞれ。その人ペースに寄り添えるようにさまざまな取り組みがあります。

 そして、スタッフとボランティアさんとの関係性についても試行錯誤した経験を教えてもらいました。例えば、ボランティアさんの要望をスタッフが一方的に聞いていると、スタッフさんがいっぱいいっぱいになってしまいます。ボランティア同士で話をし合う場をつくったり、ボランティアさんが必要なスキルを学ぶ場(チラシ作りなど)をつくるようにして、ボランティアさん同士でできることを探し見つけていくようにするのが特徴的だと感じました。

●「やりたい」という気持ちを大切に
 こまちぷらすが、「○○してください」というボランティア募集ではなく、「何かやりたい人」を募集して、会費を払って関わってもらうようにしているというのもユニークだと感じました。

 そして、一緒にやりたいことをやっていって、ちょっとずつやりたいことが変わっていき、場合によっては離れていくこともある。でも、やっていくからこそ、一緒にやりたいとつながる人もいる。そんな感じで、関わる人を応援したいという気持ちを大切にすることで、関係が離れてもまたどこかでつながったり、戻ったりもできるということも教えてもらいました。

4.続ける原動力は「原点」があるから

 しんどいこともあっても続けられるのは、「原点」です。迷った時には、原点に立ち返ることが大切ということを、最後に話してもらいました。ここで、冒頭に森さんからお聞きした原点の大切さを振り返ることになりました。

 はじめから大きな社会と向き合うのではなく、大切にするのは、自分自身から。対話の中から自分自身を見つめる、知ることにつながります。そこから社会との接点ができ、行動につながる。だから、こまちぷらすは、対話をする機会を持てるような仕組みづくりを心掛けているということを教えてもらいました。

 今回の会では、参加者の中に実際にこまちぷらすのスタッフを担当した方がいて、参加のきっかけを伺ったり、関わる中で感じたことも話してもらいました。実際に関わった方のお話を聞くことも、イメージが深まりました。

 今回、何か「やりたい」という気持ちから、行動につながり、社会につながって広がっていくというプロセスをお聞きすることで、私自身もエネルギーをもらいました。こんな「子育て」を楽しみながら取り組める地域は魅力的に感じます。一人ひとりの気持ちから地域の魅力につながることも感じることができました。

 私自身も原点を見つめなおしてみようと思いましたし、この研修会を運営しているしょうおう志援協会の中でも、原点を振り返ることが大切だと感じました。

5.アーカイブはこちらから

お読みいただきありがとうございました。

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次回は10月15日(金)19:30~の予定です。ありがとうございました。


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