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「良い」発表・論文・研究の実現のために大切なこと

「良い発表だったね。良い研究をして、良い論文を書いたね。」と言われるのはとても嬉しいものです。自分でも「我ながら良い発表ができたなあ。」と思いたいものですね。そんな風に自分にとっても相手にとっても「良い」発表・論文・研究を実現したいなら、「研究者(発表者、執筆者)自身にとっての良さと、読み手や聞き手にとっての良さは違う」ということを認識し、両者にとっての良さを両立できるように進めることが大切です。この記事では、「良さ」が自分と相手にとってどのように違うのかを解説し、それを踏まえて「良い」発表・論文・研究を実現するためのポイントをまとめます。

※この記事は、著者のブログ「駆け出し研究者のための研究技術入門」の転載(一部加筆修正)です。2024/1/24に追加で改訂を入れました。

良い発表とは?

まず、発表者自身にとっての良い発表とは、「自分の発見や成果、あるいは自分自身の価値を認めてもらい、その価値をさらに高めるための援助をもらえるもの」でしょう。自分では重要な発見や成果を得たり、よい取り組みをしたと考えていても、それを認めてもらえなければ、他の人の発表に埋もれ、なかったことになってしまいます。そうなってしまえば個人的にも悲しいですし、研究分野全体としても損失ですよね。なので、発表によって価値を認めてもらう必要があるのです。良い発表をしたときには、その価値をさらに高めるための支援も得ることができます。質疑応答を通じて、見逃していた点への気付きやアドバイスをもらえることもそうですし、一緒に研究(仕事)をしたいと声をかけられることもあるでしょう。

一方で、聞き手にとっての良い発表とは、「自分にとって価値の高い情報を限られた時間内で効率的に与えてくれる情報源」です。研究者は、限られた時間で最大の研究成果を挙げなければいけないため、情報収集の効率に敏感です。予稿集に記載された発表タイトルを見て、自分が成果を挙げる役に立ちそうであればその発表を真剣に聞き始めますが、それほどの価値はないと判断すれば、聞きにすら来ないか、途中で聞くのをやめてしまうことでしょう。

このように発表の良さは話し手と聞き手で異なるため、よい発表をするためには、「やったことや自分自身の価値が伝わるように内容を充実させつつも、聞き手に効率よく役立つ情報を得てもらえるように構成や表現を工夫する」ということが大切になります。

良い論文とは?

著者自身にとって良い論文とは、「後世の人に利活用してもらえるように、自分の歩んだ足跡と貢献を漏れなく書き残せたもの」でしょう。論文は、皆さんが人生の一部を費やして難しい課題に挑んだことを後世に伝え残す資料でもあります。「やったことに対して文章が少なすぎるから、とにかく説明をどんどんつけ足そう」と考えてしまうことがあるかもしれません。多くのことを苦労して試したのであれば、それだけ多くのことを文章として書き残したい気持ちが生じてしまうのも無理はないでしょう。

対して、読者にとって良い論文とは、「自分がさらなる成果を挙げるための足掛かりを与えてくれる、綺麗に整えられた信頼できる土台」です。研究者は、わかりやすく、正しく、かつ自分にとって有益な内容が記載されている論文を日々探しています。一から自分たちで研究を始めようとすると莫大なコストがかかり、研究の世界全体としての効率も落ちるため、他の人が到達したところから研究をスタートさせたいのです。ただし、内容が端的に整理されたわかりやすい論文でなければ、そのような土台としては扱いづらいので避けられます。結論の正しさや新しさが判断できない信頼できない文献も、それを土台にしてしまうと自身の成果の信頼性が損なわれるので避けられてしまうでしょう。

このような違いがあるため、良い論文を書こうとする際には、「自分の足跡と貢献をうまく役立ててもらうためにも、大切な部分に絞って情報を整理整頓し、正確さと信憑性が高まるように書く」という意識が大切になります。

良い研究とは?

研究者自身にとって良い研究とは、「自分が実現したい未来に向かって、世界を少しずつでも着実に変えていくための一歩」でしょう。一つの研究だけで何かがすぐに大きく変わるわけではありません。論文としてまとめる上で都合のよい結果が得られるとも限りません。ただ、その研究をすることによって、得られた結果がある意味失敗の結果であったとしても、その先にしたいと思っている研究を始めるためのきっかけとなるのであれば、それは良い研究だといえるでしょう。

一方で、本人以外の研究者にとって良い研究とは、「自分では取り組めていなかったが、解かれるべきだと常々考えていた重要な問題を解決してくれそうな研究」です。つまり、自分が実現したい未来に向かって世界を変えていくうえでの穴を埋めてくれる研究です。一人ではできることが限られているため、夢が大きな研究者は仲間を探しているのです。

このような観点からは、良い研究をするためには、「自分のビジョン達成と他の人の懸案事項払拭の両者をうまく組み合わせて研究テーマを定める」ということが有効であるといえるでしょう。

まとめ

本人と、本人以外の研究者の双方の視点から、よい発表・論文・研究とはなにか、ということを解説しました。自分ではよいと思っていたものがなかなか人に認めてもらえない、という悩みを持たないようにするためにも、双方の違いを認識しておくように心がけましょう。

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