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発表は『真剣に聞いてくれない』相手を想定して準備しよう

学生である皆さんが研究室内で発表をしたとき、友人や先生達は親身になって聞き、真剣にアドバイスをくれることだろうと思います。この優しい環境は、発表の自信をつけ、また研究を進めるうえでは有利である一方、研究室を出た後の社会の荒波の中で『自分を守り、支えてくれる発表スキル』を身に着けるためには実は不利です。

近い将来、皆さんのもとには、真剣には話を聞いてくれない相手の前で、自分や、自分の大切な人の将来を左右する発表をしないといけないときがやって来ます。

そんな厳しい状況でも、しっかり考えを伝え、納得してもらえるような発表ができるように、研究室の優しい環境に甘んじることなく、『真剣には聞いてくれない』相手を想定して発表を準備することが大切です。この記事では、この点をしっかり解説します。

研究室は優しい環境

研究室の研究発表で、「ここは優しいな」と感じる学生さんはそれほどいないのかもしれません。頑張って取り組んだり、一生懸命考えたことを発表しても、「それはおかしくないですか?」あるいは「よくわからないのでもう少ししっかり説明してみてください」と指摘を受けるからです。

自分の表現したことを批評されるわけですから、もちろんストレスではあるでしょう。ですから、『褒めて褒めて、褒めてばっかり』という意味での『優しい環境』ではありません。

研究室での発表が優しいのは、下の図のように、発表資料がうまくできていなかったり、考えの整理が足らずにうまく喋れなかったりしても、頑張って説明さえしていればしっかり聞いてもらえるという意味においてです。「しっかり聞いているから頑張れ!」という応援の気持ちがあったり、「分かりづらいけど頑張って理解するぞ」と集中してもらえたり、「ここはこういうことですか?」と大事そうなところに注目してもらえたりはするのです。

研究室における発表環境はとっても優しい

優しい環境の罠

研究室は、「集まった全員が貴重な時間を自分のために割いてくれて、真剣に話を聞いて、アドバイスまでくれようとする、極めて特殊な環境なのだ」ということを知っておく必要があります。

優しい環境には罠があります。大きな罠のひとつは、「発表資料をつくるのに時間が取れなくてそんなにうまく作れなかったけど、うまくしゃべりで補えば、どうにか伝わるもんだな」と感じ、もっとうまく伝えるための発表技術を習得しないといけないという危機感が失われてしまうことです。

研究室では、未熟さは寛容的に受け入れてもらえます。それを成熟させていくために研究室に来ているからです。しかし、卒業後には、未熟さは受け入れてもらえないかもしれません。下の別記事でも書いているように、皆さんの立場は、成熟していることを前提にしてお給料をもらう、というものに急変するからです。

研究室の外はけっして優しくはない

大きな規模の学会発表や、何かの審査会での発表を経験したことのある人なら何となく感じていることだとは思いますが、研究室の外で何かを発表するときには、先ほどのような環境はあまり望めません。手元のパソコンで作業をしながら発表を聞いたり、途中で退席したり、聞くだけ聞いてとくに発言はしない、というような人たちの前で発表をするということは、むしろ普通です。

上記のような研究室外の人に非はありません。なぜなら、研究室外の人には、「忙しい時間と、限りのある集中力の多くを割いてまで真剣に話を聞いたり、アドバイスをする義務がない」からです。皆さんの発表に全集中で臨む理由がそもそもないのです。あくまで、興味や余裕に照らし合わせて、彼ら自身のためにそこに参加しているのです。

そんな中で、下の図のように、準備が足らなかった発表資料を見せたり、うまく説明の言葉が出てこなかったとしたらどうなるでしょうか。「次の仕事が気になるから、そっちの準備をしようかな」と見切られてしまったり、「話し方がまだまだ未熟だなあ。これは審査で考慮しますよ。」あるいは「こっちは忙しいのにわざわざ来たんですが」と怖い目をされてしまうかもしれません。

研究室外では皆それぞれの世界で真剣に生きている

参加している人たちは当然、その発表のためだけに生きているのではなく、皆ばらばらの世界に生きています。それぞれの世界で真剣になっているので、発表を真剣に聞いてはくれないのです。

優しいところで仮想トレーニング

外の世界は優しくはありませんが、だからといって悲嘆にくれる必要はありません。今に始まったことではなく、これまでもずっとそうだったため、「真剣に聞いてもらえない相手に対しても、伝わるようにするための発表の技法」を多くの人たちが磨き続けてきたからです。

学生の皆さんにとって重要なことは、研究室の優しい環境にいられる間に、真剣には聞いてもらえないという厳しい環境にいるという想定の下で、発表の技法を試し、体得していくことです。「みんな別の作業をしていて、集中しては聞いてもらえないかもしれない」とか、「厳しい目で審査されているかもしれない」ということを意識して臨む必要があります。

下の図のように、「次の仕事も気にしながら、あまり集中せずに聞いているけど、よくわかるな」あるいは「資料も話し方もよく練られていて、整理されていますね」と感じてもらえたり、「忙しいけど、聞く価値は確かにあるな」と判断してもらえるように、絶対に聞いて欲しいところと、聞き逃されてしまってもいいところにメリハリをつけて発表をするような練習が大切です。

集中してくれない厳しい目を意識して発表を準備する

おわりに

卒業後の社会の荒波よりは優しい環境にいられるうちに、自分で厳しい環境をイメージしてトレーニングをしましょう、という話でした。『真剣には聞いてもらえない相手にも大事なところは聞いてもらえるようにするための発表技法の習得方法』には色々なものがあります。石原のnote記事の中でお役に立てそうなものを下に並べておきます。

資料の構成要素について学ぶ

資料の整え方を学ぶ

受けた質問から学ぶ

発表を聴く中で学ぶ

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