研究発表の聞き方【中級編 - 穴埋め方式で情報把握】
別記事『研究発表の聞き方(初級編 - 大切な6つの意識)』では、発表を効果的に聞く技術を習得する「前」に備えておくべき意識について解説しました。この記事では、より難易度の高い、実践的な聞き方を解説します。
ポイントは、発表の序盤では「テーマの核と研究目的」、中盤では「アイデアのブレイクダウン」、終盤では「結論づけ」を理解できるように「穴埋め方式」で聞くというところです。少しややこしくなってきますが、大切な基本です。
※初級編をお読みでない方はまずは下の記事からお読みくださいね。
研究発表で把握すべき情報の構造
まずは下の図をみてください。これが、「1つの研究発表を聞く際に把握すべき情報全体の構造」です。課題、問題、目標、手段、結果など、なじみのある要素が多く含まれていますよね。発表を聞く際には、「この研究では、ここの要素はどんな内容になるかな?」と穴埋め方式で情報を集めていく、というのがこの記事で紹介する方法のポイントです。
すこし複雑な図ですので、3つのセクションに分けてみていきましょう。この3セクションは、それぞれ発表の序盤、中盤、終盤で聞くべき部分に対応します。
発表序盤で把握する内容
まずは、研究目的が宣言される、いわゆる「目的スライド」までの序盤の話です。下の図が、発表の「序盤」で把握すべき部分です。全体図の左側の部分ですね。発表序盤では、「テーマの核と研究目的」の理解を目指します。そのために把握すべきは「メインターゲット」「課題」「障壁」「突破のアイデア」の4つの要素です。それぞれの意味と、把握の仕方について確認していきます。
「主役」と「課題」の組み合わせを把握することができれば、「テーマの核」が理解できたということになります。テーマの核を把握し損ねると、この後の発表での大事な話を聞き損ねたり、勘違いしてしまう恐れがありますので、しっかり把握しましょう。
続いて残りの2つも見ていきます。
「障壁(問題)」と「突破のアイデア(アプローチ)」の組み合わせを把握できれば、「研究目的」を理解できたことになります。目的スライドで「本研究の目的は~というアプローチによって~という問題を解決することです」と紹介された場合には、非常に簡単に把握することができます。ただし、目的スライドであっても、「この研究の目的は、~を達成することです」のように、課題しか紹介されない場合もありますから、目的スライド以前のスライドにおいても、障壁と突破のアイデアをなるべく正確に把握することを目指しましょう。
発表中盤で把握する内容
続いて、下の図をみてください。図の右下の部分に、発表の「中盤」で把握すべき部分が追加されています。結果が紹介されるまでの発表の中盤では、「アイデアのブレイクダウン」の把握に努めます。すなわち、障壁突破のアイデアを、どのような具体的目標に落とし込み、さらに各目標に対してどのような手段を講じたのか?というものです。抽象的であったアイデアが、どのように分割され、また具体化されたのかを確認します。
「目標」と「手段」の組み合わせを把握できれば、「アイデアのブレイクダウン」を理解できたことになります。大切なことは、「目標と手段の組み合わせとその数」を正確に捉えておくことです。目標を把握し損なうと、発表終盤で説明される評価の話が何のために為されているのかわからなくなりますし、目標と手段の対応を掴めていないと、細かく説明される手段の必要性を理解できなくなってしまいます。
発表終盤で把握する内容
最後に、下の図を見てみましょう。図の右上の部分に、発表の「終盤」で把握すべき部分が追加されています。結果が紹介される研究スライド以降の発表の終盤では、「結論づけ」の把握に努めます。すなわち、得られた結果に基づいて、どのような議論でどのような結論を導き出したのか、というものです。発表の序盤の「テーマの核と研究目的」で説明された目論みを振り返る部分です。
得られた結果から、発表序盤で説明された「テーマの核や研究目的」に対してどのような振り返りを実施したかを把握できれば、「結論づけ」を理解できたことになります。大切なのは、「結論」を聞くことだけではなく、それを導き出すまでの議論の流れを掴むことです。そして、議論の流れを掴むには、結果だけに注目するのではなく、「結果はどのような意味で良かったのか、あるいは悪かったのか」という結果の価値判断をしっかり聞くことが大切です。結果から分かるどこの部分に、どんな知識や前提を組み合わせ、どのように価値を判断したのか、をしっかり考えながら聞くようにしましょう。そうでないと、妥当でない結論を鵜呑みにしてしまう恐れがあります。
まとめ
この記事では、研究発表を聞く機会を学びに変えるための、実践的な聞き方の方法を解説しました。ここで解説した方法によって、話されたことを整理しながら効率的に聞いていくことができます。この方法を実施したうえで、さらに発表聴講を実りのあるものにするための技術については、今後上級編の記事として公開予定です。
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