1996年センター英語本試験 長文問題 第5問 本文解説③概要

これまで、1996年センター英語本試験長文問題第5問の英文テクストの第1パラグラフと第2パラグラフについて、つながりとまとまりを踏まえて、パラグラフの概要と一文単位の詳細内容理解に分けて解説してきました。
今回は第3パラグラフの概要について、つながりとまとまりを踏まえて解説していきます。これが最終パラグラフになります。それでは、第3パラグラフの英文テクストです。

第3パラグラフ本文全体

A Norwegian scientist, however, pointed out that there might be a problem with this method.  He claimed that air caught in ice does not stay the same.  In particular, he said, the quantity of CO2 does not remain stable, since some of it is absorbed by ice crystals, some enters water, and some locks itself up in other chemicals.  If this were true, then there could have been more CO2 in the past than we thought.  Even so, measurements taken over the past thirty years show that CO2has increased by over ten percent during this short period.

第3パラグラフと第1、第2パラグラフとのつながりを示した図

始めに第3パラグラフと第1、第2パラグラフとのつながりを示した図です。(第1~第3パラグラフ全体の概要図は1枚に入りきれないので、第3パラグラフ全体の概要図に関しては、後ほど提示します。)

センター1996第5問解説3-1-1

第1文

では、まず、前の第2パラグラフとのつながりについて見ていきます。
第3パラグラフ第1文で、この調査方法に対して異論を持つ(別の)ノルウェーの科学者が、この調査方法の問題点を指摘しており、この文が第3パラグラフのトピックセンテンスになります。第2文以降でこの問題点について具体的に述べられていきます。
この第1文に、
    対照を表すつなぎ語 however「しかしながら」
    ・a problem with this method「この(調査)方法に関する問題
とあります。a problem「問題」はマイナス面を表す重要な抽象語です。
また、this method は第2パラグラフ第4文の this method を受けています。従って、第3パラグラフでは第2パラグラフまでの内容に対して否定的な観点からの内容が述べられていることがわかります。

なお、problem は、テクストの構成上、これから具体的に述べられる内容を最初に整理し、読者にとって道標となる重要な抽象語です。
   ・〔抽象〕a problem「問題」⇒〔具体〕問題点の具体的な詳細
という展開になっており、具体的な内容が後に続きます。
英文テクスト中に problem が出てきたら、「具体的にどんな問題?」と問いを立てて[突っ込みを入れて] 読んでいくことが大切です。

第2文

次の第2文で、第1文で指摘された問題点について、具体的に
    ・air caught in ice does not stay the same. 
      「氷の内部に閉じ込められた空気は同じ状態のままではない」
と述べられています。
この第2文は第1パラグラフ第5文と非常に対照的に述べられています。
これらの文における対照的なつながりについては、次のようになっています。上の図の中では、赤い矢印で示しました。
        第1パラ第5文                   第3パラ第2文
    ・the trapped air ⇒ air caught in ice「氷の内部に閉じ込められた空気」
    ・remains exactly as it wasdoes not stay the same
      「まさに当時の状態のまま」 「同じ状態のままではない」
従って、この第2文では、ノルウェーの科学者が、第1文で述べられたこの調査方法の基となっている理論そのものに対して異議を唱えています。

第3パラグラフ全体の概要図

では、ここからは、第3パラグラフ全体の概要図とともに見ていきます。

センター1996第5問解説3-1-2

第3文

第3文では、「CO2の量は一定のままではない」と、第2文の内容がさらに具体的に述べられています。
第3文冒頭の In particular「特に」を受けて、第2文の air caught in ice「氷の内部に閉じ込められた空気」を 構成する気体の1つ、CO2に特定して、そのCO2の量に関する問題が述べられています。第2文とのつながりは次のようになります。
    ・第2文 air caught in ice〔全体〕⇒ 第3文 CO2〔部分、構成要素〕
    ・第2文 does not stay the same ⇒ 第3文 does not remain stable
                  「同じ状態のままではない」          「一定のままではない」 
そして、この文の since 以下にその理由が述べられています。概要を把握する上では、この文の since 以下にその理由が述べられていて、CO2の一部が、氷や水などに吸収されて減少することが掴めればOKです。

第4文

第4文の If~, then・・・. では、第3文で述べられているノルウェーの科学者のCO2量に関する主張を this で受けて、それが本当に事実だと仮定した場合に想定される結果について述べられています。
具体的には、
    ・〔仮定〕the quantity of CO2 does not remain stable (and decreases)
                       (氷の内部に閉じ込められた空気中の)CO2の量は
                       一定のままではなく(減少する)
                                         
    ・〔想定される結果〕more CO2 in the past than we thought の可能性
                                         過去には、私達の従来の想定より多くの
                                         CO2(が存在していた)
than we thought の部分は、より具体的には、第2パラグラフにおける調査方法での測定に基づいて想定された過去の大気のCO2量のことを表しています。

従って、裏を返せば、
「CO2量の減少分を想定すると、CO2の量は、第2パラグラフにおける調査方法での測定結果が示すほどには過去200年で大きくは増加していない可能性がある。」
と解釈できるかと思います。

第5文

第5文では、文頭に譲歩を表すつなぎ語 Even so「たとえ、そうだとしても」があり、「過去には、私達の従来の想定より多くのCO2が存在していた可能性があること」を仮に事実と認めるとしても、第2パラグラフで説明されたこの調査方法には(少なくとも短期的な調査結果に関しては)なお妥当性があることを示しています。
文末の during this short period「この短い期間の間に」は
この文前半の over the past thirty years「過去30年にわたって」
を言い換えたものです。
従って、30年以上にわたって毎年、新しく形成された氷の層内部の空気を測定した結果、
    ・CO2 has increased by over ten percent for only the past 30 years.
      「CO2の量はたった過去30年の間に10%以上増加した。」
ということになり、
この文は、たとえ仮に、この方法による調査結果において、
長期的にCO2の量が従来の想定ほどには大きくは増加していないとしても、
短期的にはCO2の量が大きく増加しているのは事実である
ということを示しています。

長期的には、200年前の氷の層内部の空気の状態を厳密に調べるのは難しく長年にわたってCO2の一部が他に吸収されて減少している可能性も否定できないかもしれません。
しかし一方、短期的な調査結果を求める場合、前年に形成された氷の層の内部の空気を調査し続ければよい訳で、おそらく前年に形成された氷の層の内部の空気の状態は、短期間ではそれほど変化していないものと思われます。したがって、この調査方法に関しては、短期的な調査においてはより妥当性があると考えられるのではないかと思います。

それでは、1文単位の詳細な解説は次回の記事で行います。

今回も、最後まで解説をご覧頂き、本当にありがとうございました。
心より感謝申し上げます。
もし、何かお気付きの点などございましたら、コメント、メッセージなど頂けると大変ありがたく存じます。
現在、英語教育関連職を希望して求職中の身ですので、気に留めて頂き♡やフォロー、twitterかnoteでのコメントなど頂けると大変励みになります。
今後とも、何卒よろしくお願い申し上げます。

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