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『ハニーランド 永遠の谷』
今日はアップリンク吉祥寺にてドキュメンタリー映画『ハニーランド 永遠の谷』を見た。
主人公は北マケドニアに暮らす、ヨーロッパ最後の自然養蜂家の女性。小さな村で寝たきりの母親と二人きりで暮らす彼女は、自然の恵みを蜂と分け合い、わずかな糧としていた。静かでつつましいその暮らしが、ある日隣に越してきたトルコ人一家によって一変してしまう。
蜂蜜を採取するとき、この女性は「半分はわたしに、半分はあたなに」と感謝の言葉を捧げながら、必ず半分は蜂のために残しておく。虫にやさしく話しかける姿に『風の谷のナウシカ』を連想した。寝たきりの母親にかける気兼ねのない言葉や、蜂蜜を売りに行った市場の人々と交わすやりとりもあたたかい。
一方、隣に住み着いたトルコ人の一家は対照的。トレーラーハウスでやってきた彼らは7人の子だくさん。夫婦はいつも不機嫌で、子供たちも喧嘩が絶えない。金銭を得るためにたくさんの牛を飼い、牧草のために野を焼き払う。養蜂は現代的なスタイルで、蜂たちも彼らを容赦なく刺しまくる。電気も水道もない村に持ち込まれた大量の工業製品は、かえって貧困を浮き立たせるようにも見えた。
映画では悪者に思えたトルコ人一家だったけど、家に帰って北マケドニアについて調べて見ると、複雑な事情が見えてきた。北マケドニアは5つほどの民族が暮らす多民族国家で、そのうちトルコ人の人口比率はわずか3.8%。多数派のマケドニア人とは宗教も言語も違う。彼らがトレーラーハウスでやってきて空き家に住み着いたのは、定住できる土地がないということだろう。一家の父親は少しでも多くのカネを手にしようと自然を破壊し、動物を乱暴に扱うが、それは子供たちを食べさせて教育を受けさせるためなのだった。
この小さな村で起きたことは、世界の縮図。一体何が悪いの? どうすればいいの? ああ、やるせない。
難しいテーマを投げかける映画だったけど、養蜂家の女性の思慮深いまなざしや、自然の中で暮らすたくましさが希望であり、印象に残った。
先進国に住む私たちの飽食も、こうした不条理な構図の一端を担っているのだろう。一匹の蜂が一生に生み出す蜂蜜の量は、わずかティースプーン1杯分という。蜂蜜、感謝をしていただこう。
と、立派なことを書いた文章の締めが、映画の後に食べたキノコのピザ。激ウマ! ハモニカ横丁、フォーエバー。
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