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猫の粗相の事件簿

保護猫の玉美ちゃん(通称たまちゃん)が我が家にやってきて、そろそろ2カ月。正直、まだ2カ月しか経っていないのかと驚いてしまう。もっと長いような気がしているのは、色んなことが次々と起きて、私の生活が一変してしまったから。

最近一番悩まされた出来事と聞かれれば……それは、粗相です。何と言っても粗相です(←ローマの休日のラストシーンで、「ローマです」と答える、アン王女の口調でどうぞ)。

最初こそ失敗したものの、たまちゃんはトイレの場所を早々と覚えた。私もいくつかの失敗を糧に、粗相を誘発するふかふかのコタツ布団を片付け、羽根布団のある寝室も立ち入り禁止区域にした。やれやれこれで一安心……かと思いきや、それはある日突然始まった。粗相。ソファに粗相。今まで全然そんなことしなかったのに。

ギャーやられた~…と思いながら、ソファにかけていた汚れた毛布を洗濯。1日かけて乾燥させて「よし乾いたぞ」と取り込んで、きれいにしたばかりの毛布をソファにかぶせたら、かぶせたそばから、同じ場所にまた粗相。猫は一度自分のオシッコのにおいをつけると、以来そこをトイレと認識してしまうらしい。匂いが強烈な猫のオシッコはどんなにきれいに洗っても臭いが残る。猫の嗅覚はするどいから、かすかに残った臭いを頼りに同じ場所に粗相を繰り返してしまうのだという。

私は粗相の原因を推理してみた。思い当たるのは、その朝起きてすぐにトイレのうんちを取り除かなかったこと。そこで私は常にトイレをチェックし、再び同じ場所で粗相されないように、たまちゃんの動向に逐一目を光らせるようになった。たまちゃんがソファのにおいをクンクンかいでオシッコしたそうにしていれば、電光石火のごとく抱きかかえてトイレに乗せてみたりもした(でも、しない)。それでも私がじーっと見張っていると、しぶしぶトイレで用を足す。けれど、私もそんなに四六時中張り付いているわけにもいかず、ちょっと目を離したすきに、彼女はソファに上っていて「うん? なんだか哲学的な表情をしているぞ…」と思った時には、もう手遅れなのだった。

数日間そんな攻防を繰り返した。洗濯だけで半日がつぶれてしまい、私はもうヘトヘト。せめてソファを汚さないように、トイレ用の尿取りシートを敷き詰め、さらに介護用の防水カバーやシャワーカーテンを動員してがっちりガード。たまちゃんがソファに近寄ろうものならシッシッと追い払い、これで防衛できたぞと勝ち誇ったものの、シャワーカーテンかぶせてゴワゴワのソファに自分としても座る気になれず、もはやソファとしての用を果たしていない、なんだか訳のわからない状態になってしまった。

もういっそ、「マナーウェア」(ペット用紙おむつ)をはかせてしまおうか、とも思った。はじめてマナーウェアのCMを見た時に、動物にパンツをはかせるなんて…と眉をひそめてしまったけど、今は使う人の気持ち、よく分かる。

突然の粗相の原因と対策を探ろうと、私は検索エンジンに「猫 粗相 ソファ」などと入力して、長い時間かけて検索しまくった。ネット上では役に立つ記事やブログにも出会えたけれども、一番力になってくれたのは、SNSで私が直接つながっている人たちからの励ましや共感、アドバイスだった。Facebookに猫の粗相でどうしたらいいかわからないと投稿したら、猫飼いの先輩たちからたくさんのアドバイスをいただいたのだった。いま振り返ると、そのことが私にはとても大きな経験になったように思う。

というのも、これまでの私は、困ったことに直面したとき、助けを求めるという発想に乏しい人だったから(道に迷っても人に聞けず、延々と一人でさ迷い歩いたりするタイプ)。でも今回のことでは「私は人に助けを求められる人になろう」と思った。どういう心境の変化か自分でもよくわからないけど、はっきりとそう意識した。誰かに助けを求めることは、人によっては苦も無くできることだろうと思う。けれども私にとって、それは階段を1段上って見晴らしの良いステージに立ったような、大きな一歩だった。

あるいはこれが自分一人の問題だったら、人には聞けなったかもしれない。そう思うと、たまちゃんという相棒が私に与えてくれた影響かもしれないな。

***

さて。突然の粗相の原因は、結論から言うと、それまで使っていたトイレにあった。ネットの記事や友達の意見を参考に、オシッコを消臭シートに吸収させるシステムトイレから、従来型の固まる砂のトイレに変えてみたところ、この問題はぴたりと解決した。

ある夜、私は猫の問題行動について、ソファの前に座ってネット検索に集中していた。そのまま夜が明けて、はからずもソファの前で寝ずの番をしてしまう形となった。その夜、たまちゃんは一度もトイレに行かなかった。私が見張っているせいでがまんしているに違いなかった。すぐそこにトイレがあるのに、なぜ使わない? 何が彼女をそうさせる? トイレの場所? 猫砂の大きさ? 素材? 臭い? それとも私が甘やかしすぎたせい…?

いやいや、もう原因を求めてネット検索している場合ではない。だって一晩トイレをがまんさせているのだ。このままでは病気になってしまう。

「システムトイレが好きではないのでは」という説をもとに、その日の早朝、大急ぎで近所のスーパーまで走って行って、固まる猫砂を買いに行った。応急措置としてシステムトイレのすのこ部分をシートでふさぎ、猫砂をザザーッと投入。すると、ものの10分とたたないうちに、たまちゃんはトイレに入って行って用を足した。そして「そうそう、これこれ! これがしたかったの!」という感じで、ザックザックと砂をかいていた。

そうか、システムトイレは砂粒が大きくて量も少ないから、ザックザックしたくでもできないものね! ああ、よかった、よかった。えらいね、たまちゃん! よくやった! そう、これがしたかったのね! 私はトイレから出てきたたまちゃんを思いっきり褒めちぎったのだった。

その後、私はシステムトイレから、固まる猫砂用のシンプルなものに買い替えた。トイレのサイズは猫の体長の1.5倍が理想とのことで、幅60㎝の大きめなものにしてみた。するとトイレの縁に脚をかけて用を足すという行動がなくなった。あれは砂の感触が苦手だからしていたのかと思っていたけど、十分な広さがなかったからかもしれない。

オシッコの臭いが染みついてしまったソファは、ソファ専門のクリーニング業者さんに来て洗浄してもらうことにした。クリーニング代はかかるけど、捨てることにならなくて、よかった。

この粗相の事件簿、エピソード2がないことを祈りつつ…。

写真はホットカーペットの上で、のっぺりとくつろぐたまちゃんを、写真が上手な友達が撮影してくれたもの。私も猫写真が上手になりたい。

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