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錦鯉になれなかったオズワルド--M-1グランプリ2021決勝全組採点・講評

どうも、みなさんこんにちは。ケツ毛でマフラー編み太郎です。

 今年も、冬の風物詩である漫才頂上決戦・M-1グランプリ2021の決勝が無事終わった。

昨年の決勝で錦鯉が4位に敗れて以来、待ち遠しくて待ち遠しくて、そして錦鯉の予選通過をハラハラしながら見守りつつようやく迎えた決勝戦。12/2に決勝進出者が発表されてから、もう毎日毎日、M-1のことを考えてきた。3回戦は、全組のネタを見た。準々決勝以降は、決勝のネタバレになるのが嫌で、敗退者のネタしか見ていないが。

実は今年、俺自身M-1に出ようとした。ネタも作った。それでもやっぱり人前でネタをするイメージが出なくて出なかった。言うなれば、不戦敗退者だ。まあそんなことはどうでもいい。今回は、M-1グランプリ2021を、独断と偏見、というほどではないが採点しながら振り返ろうと思う。

なお、同様のエントリーとして今年のキングオブコントに関しても記事を書いているので、よろしければご覧ください。

→https://note.com/hisagipangel/n/n83c03ca8596e

ちなみに採点に関しては、当日リアルタイムでつけた点数を記載する。採点に当たっては「松本人志式(とされている)採点方法」に倣い、極力全組の点数が被らないように採点をした。講評やコメントは、生放送後にネタを見直すなどしてまとめた。


 ★1stラウンド
●1組目:モグライダー「美川憲一」

準決勝の評判を伝え聞くに、まごうことなき優勝候補の一角だったろう。がゆえに1番手を引いたときにはため息が漏れた。

実際、その前評判に劣らぬ素晴らしいネタだった。まず、ともしげの完璧な表情、トーンのつかみ。そこからすごい角度の設定提示。

「蠍座の女以外の可能性を全て無くす」という設定のもと、「イントロから歌い出すまで」というフォーマットで、確実に歌い出しで笑いの山場を作れる構成。問題はこの構成を何回繰り返すか、そしてどこで逸脱させるか、最後にどう落とすか、だと思うけど、そのどれもがしつこすぎず無駄がなくズバッと決まっていた。

まず、最初のケース。しっかりここはベーシックなパターンで、ともしげの「蠍座の女かー!!」で落とす。最初ともしげがなに言ってるか聞き取れなかったんだけど、それでもパワーだけで笑える。

その後、さまざまなパターン(冒頭の無駄な時間の指摘、最初から祈るなどなど)で崩しつつ、何よりツッコミ・芝の間のとりかたがすごくうまい。スカしに徹さず、美川憲一のモノマネで若干ウケをとりにきてるのも好印象。

伏線というほどでもなかったけど、ともしげの指折りの数え方がずれてるのを回収したのもスマートだった。ところどころでハッとさせるくだりがあったのもよかった(「美川さんの現場にこんな奴がいるのが異常だよ!」「おだまり案件だよ」など)

完全に出順に泣いたなあという印象だった。もっと後半ならばファイナル残ってたんじゃないか。

92点。

●2組目:ランジャタイ「風猫」

個人的「瞬間最大風速(=その日のイチウケくだり)」を叩き出した組だった。

ランジャタイをなんだかんだで初めて真っ当に見たのは昨年の敗者復活戦だった。確か欽ちゃんの仮装大賞かなんかのネタで、敗者復活の中で最低点をつけた覚えがある。

それから1年。それなりにテレビの露出が増え、「ウッチャンナンチャン」や「巨人パネル」といったあたりから徐々にアレルギーが薄まり、免疫がついてきて「反町隆史」ネタで笑えるようになったタイミングでの決勝進出。

当初、この組を俺はダークホースと見ていた。最近の賞レーストレンドといい、野田クリスタルの知名度上昇に伴ってM-1王座をも奪い取ったマヂカルラブリーの例と言い、PVでの扱いと言い、もしかすればもしかするぞと思っていた。

その期待というか不安感というか、いい意味で全て吹き飛ばしたネタだった。

なんといっても入場シーンのかっこよさ。散々、笑神籤で呼ばれてからボケ倒して、せりあがりから出てくるときに伊藤の腰をポンと叩く国崎。階段を降りるときの、首の捻り、手首のほぐし。ここで完全に国崎かっこいいじゃん!となった矢先、全てをぶち壊す強風のマイムである。

何より国崎、マイムがうますぎる。訳のわからない展開を訳のわからないスピードで進行され、猫が頭に入るわ将棋ロボになるわ、エレベーターで降りるわ腕が引っ込むわ……目まぐるしい中での突如現れる、時が止まったかのようなムーンウォーク。しかも絶叫しながら。Tシャツ膨らませながら。ここでやられた。一体なんなんだ。めちゃくちゃ面白かった。論理じゃない笑いを突き詰めた結果というか、もう単純にパワーでもない、純粋な笑い。それを感じた。

伊藤も軽視されがちだけど、風で飛んできた猫に対する「新種?」といい、トンチンカンなコメントも面白い。

95点。本日最高得点となる点数をランジャタイに捧げます。

●3組目:ゆにばーす「ディベート」
ちょっと変化球の組が続いて、実質ここがトップバッターとなった印象。

ゆにばーすは川瀬名人の気合が入っているのはよくわかるんだけど、その気合に見合ったテクニックがどうも感じられず、いつも残念に感じているコンビで、今回もその印象をぬぐいされなかったかなあ。

笑いが非常に緻密で理詰めな分、手堅いのだが爆発を生み出しにくい。そこをどうこうするには、やはり「掛け合い」じゃないかなあ。

その点、はらちゃんと川瀬名人のパートが明確に分かれすぎている気がするし、どちらかがしゃべっているとき、どちらかが正面を向いていてどうもかけあいがかみ合っていないという印象を受けた。お互いがコミュニケーションをとっているというよりは、双方言いたいことを言っているだけというか・・・。

 あるいは、「動き」も重要な要素。実際、ネタの最初の山場は川瀬名人がはらちゃんを論破したと思ったら、逆に名人が論破されて「俺爆裂不利やんけ!」みたいなことをいって蹴り上げたところだった。そのあとの爆発も、名人がはらちゃんに襲い掛かるところや、また名人が蹴り上げたところ。もう一個突き抜けるには、脚本じゃない部分のブラッシュアップが必要だと強く感じた。

91点。

●4組目:敗者復活枠(ハライチ「怒り慣れていない人」)

悪いけど、一番盛り下がった。

敗者復活戦は国民審査である以上、ある程度認知度に頼った結果になるのはわかるけど、そりゃないよ、と。

今回、圧倒的に下馬評が高かったのは見取り図だった。その見取り図が完全に勝つ気のないネタをした以上、どの組が勝ち上がるのか俄然気になり、ウケ的には金属バット、男性ブランコ、マユリカ、ヨネダ2000、ダイタクだったと思うのだけど、なんでハライチかねえ。

去年の敗者復活で、出来はよかったけどややネタが複雑なカベポスターやキュウが下位に沈んだのを見るに、まあ正統派強しというところで、会場ウケもありつつ最終3組に残った金属、男性ブランコどちらが来てもよかったのに、ハライチですか。

敗者復活戦のハライチは確信犯的にネタ時間を超えたのがまず一番よろしくないし、そこまでウケ量が多かったとも思えない。かつ決勝戦常連でもあり、いくらラストイヤーとはいえ、決勝では見たくなかった。金属かなり仕上がってたのになあ。

肝心の決勝で披露したネタは、どうしても「うるささ」を「面白さ」が超えてこなかった。ネタの構成・展開はモグライダーに似ていると思うんだけど、似ている分、粗が目立ったかな。

岩井のキレ方がまずネタの幅だと思うんだけど、2回目の振りが長すぎる。2回目から違う型の笑いにバリエーションを広げるべきだった。

早々に「キレ方」で笑いを取る形から、「願望が斜め上すぎる」というワードセンス大喜利メインに切り替えて勝負してもよかったように思う。また、2人が同時にしゃべるという形も必然性がなく、うるささを助長していたように感じた。

とはいえ良かった点もあり、「巨大ロボでグーパンチ相方を?!」はちょっと面白かった。うーんでもそれくらいかなあ。

88点。

ちなみに敗者復活戦で俺が投票したのは、ヨネダ2000、金属バット、カベポスターだった。

ヨネダ2000の「YMCA寿司」はさんざん話題になっていてハードルが上がり切った状態で見たけど、それでも面白かった。どすこいどすこいの「謝罪」ネタとフォーマットは似つつ、また違う笑いでよかった。2人のリズム感がいいし、どんどんとグルーブ感というか、トランスを感じてくる非常に音楽的なネタだった。めちゃくちゃ練習したんだろうなあ。

●5組目:真空ジェシカ「1日市長」

よかったね。出順などによってはひたすら滑り倒す気もしたが、普通に面白かったしウケてた。つかみで川北がしっかりがっかりしてるのがまず笑える。ジャイロ回転のくだりとか、ハンドサインのくだりとかめちゃくちゃよかった。

真空ジェシカは川北のボケ強度が非常に高いと思いきや、ツッコミとの1セットで笑いを取っていくスタイルだと思う(ハンドサインばあさんに対する「おばあちゃんは全員文系だと思ってた」みたいなくだりが特に顕著)んだけど、そうなるとテンポを上げづらい。それが審査員の点数にも影響したのかなと感じた。ボケがどうもズドン、ズドン、と来るので笑いのうねりが生まれにくい。川北の滑舌もあんまよくないので、ボケの理解がワンテンポずれちゃうこともちょっとあった。

 と、ストーリーテリングの部分で、本筋と絡みがあまりないボケが多いので、どうも筋がぼやけてとっちらかった印象もあったかな。

自分はどうしてもガクのしゃべり方が合わないんだよなー。とはいいつつもしっかり面白かった。93点です。

●6組目:オズワルド「友達」

今大会大本命中の大本命。せりあがりから第一声まで、登場が王者の風格すぎる。その余裕をもって、まず一つ目のボケを外さずに爆発できたのがよかった。そこからノンストップで駆け抜けたと思う。

「しゃべくり」というか「話術」として非常に優れたネタ。リアルタイムで見ていたときには思い至らなかったけど、何がすごいってネタが立体的なところ。単純にしゃべっているだけ、いわゆるしゃべくり漫才なんだけども、二人の往還の中で、空想というかイメージというか、そこの部分もうまく織り込んでいる。伊藤の友人をグラウンドに放つくだりとか、中指のくだりとか。さらに短いスパン、長いスパンでの伏線の回収。オチのビッグピースはもっとウケてもいいと思ったけどなあ。

もうちょい話術でいうと、冒頭の「近所に何でも話せるお地蔵さん」というところが出色。これ、「近所に何でも話せるおじ」まで聞いた時点では、話の流れもあるし「おじさん」が来ると身構えるのに、そこで「おじぞうさん」に分岐する。これはやられた。一瞬の違和感とともに、「あ、こいつ(畠中)やばいやつだな」と直感できる素晴らしいかまし方だと思った。

とここまでベタ褒めなんだけど、リアタイしてたときにはいまいち爆発がないような気がして「90点」だった。

この辺でそろそろ山場つくりたいなという会場審査員の雰囲気と相まって、異様に高い点がついたなあという印象。だって新M-1で歴代2位らしいよ。去年のおいでやすこがを上回ったとは思えなかったなあ。ちょっとここは疑問だった。

●7組目:ロングコートダディ「肉うどん」

この辺から点数がインフレしだしてきたね。めちゃくちゃどうでもいいんだけど割と最近まで、兎の方がネタを作っている「堂前」だと思っていた。だってめっちゃネタ作ってるツラしてるじゃん。

ネタの話。「肉うどん」というワードで確実に外さず爆発をつくれていた。が、自分はあまりハマらなかった。ネタ全体のつながりというか連続性がちょっと薄いように感じて、どうも入り込めなかった。「なんで天界のうち一人は兎の味方なのか」「うどんの天寿ってなんだ」などなど細かい部分にちょっとつっかかっちゃったんだよなあ。かつ無意味な移動も気になった。

たぶんだけど、最後の「ワゴンR」がもうちょっとバチッと決まってれば点伸びたんじゃないのかな。ちょっと外してた気がする。ここまで「肉うどん」というワードのおかしみで来ている中、角度を変えて「寿命の長さ(=次の生まれ変わりまでめっちゃ待たされる)」で勝負したのだとしたら、ちょっと悪手だったかな。兎の生まれ変わり先を堂前が宣言するとき、一瞬間があくので、この間を生かしてウケきるにはワードセンスで行くべきだったと思う。

89点でした。

●8組目:錦鯉「合コン」

いい出順。去年のM-1以降ひた隠しにして単独でもかけなかった合コンネタをここでぶつけてきたか。

序盤ちょっとかみ合ってなかったかな?「穴でも掘っとけ」「穴は……掘らないよ」のくだり、ちょっとヒヤッとしたんだけど見返すとめちゃくちゃおもしろいなここ。

紙芝居のくだり以降は完全にM-1に合わせにきた畳み掛けで、しかも外すことなくウケてた。「好きなアルファベットある?」はめちゃくちゃ面白かったなー。去年の「レーズンパンは見た目で損してる」1回目、どうしても聞き取れなかったがそれでも笑えたんだけど、「乾燥したかかとみる?」も同様に聞き取れないながら面白かった。

塙か誰かも指摘してたけど、ボケ単体で面白いってやっぱり強いんだなと実感した。テンポ上げやすいし、何よりわかりやすいということ。そこに徐々にギアながら緩めるところは緩める。しかも邪魔にならない隆のツッコミが非常にうまくマッチしていたなあ。めっちゃ心地よいビート刻んでた。

終盤ちょっとグダグダした気がする(「ヒッザ!じゃねえんだよ」の後らへん)けど、なんとか走り抜けられてよかった。最後に隆がぶっ叩いたときに勢いが強すぎてまさのりさんがちょっとよろけてるのもめちゃくちゃ笑える。「スペランカー吉田」がウケなかったのはちょっと意外だった。

悩んだけど、94点。瞬間最大風速とばかばかしさではランジャタイに軍配を上げた。

●9組目:インディアンス「怪談」

田渕のボケのトップラインをどこで切るのかが重要だと思うんだけど、この部分がうまかったと思う。ツッコミつつ、単に静かにするのではなくそこでも笑いを作ったり、スムーズに次のくだりに移行したり。きむが主導権を結構握れているように見えて、年々見やすさというかストレスが軽減されているのはさすが。テクニックは抜群でしょ。

うーんでもボケ方がやっぱり安易な気がするんだよなあ。切り貼りというか。楽天モバイルにしても、そのまま引っ張ってきただけだし、もう一段深めてほしかった。あと真空ジェシカと同様に本筋から離れたボケが多いのでどうしてもぼやける。アンタッチャブルやノンスタイルといった先達がいるのでやっぱり高得点をつけづらい。2003と2004のアンタッチャブルを見返したんだけど、本筋のテーマに関するボケをハイテンポでぶつけつつ、柴田のツッコミがやっぱりすごい。きむのヘラヘラ具合は年々薄まってるけど、もっと迫力があるといいよね。

オチの部分のあほらしさは好きだった。お化けに対して能天気にコンビ名乗りをあげるばかばかしさ。こういう、「ばからしいボケ」的な、なんでもいいんだけど「インディアンスらしさ」が見えるボケ方があるとまた一段上がるかな。現状はガワがインディアンスの特徴なので、もうちょっとボケ・ツッコミという根本的な部分のユニークさがあれば。

89点で、ロングコートダディと同点。ここで松本人志式採点が限界を迎えてしまった。

●10組目:もも「物欲」

今年突如として破竹の勢いで決勝進出した新星。

ミルクボーイ現象の再来なるかと思ったけど、テンポ悪かったなあ。「○○顔」のフレーズがちょっといちいち長かった。

フレーズの強度で勝負したのかなとも思ったけど、ファイナルに進出したときにテンポの緩急で違いを見せる算段だったのかなとも思う。

 ちょっと固有名詞というか知ったワードでの勝負が多かった気もしていて、もっと偏見すぎるフレーズを盛り込んでもよかった。何よりやっぱり2人のやり取りの中でこじつけすぎる偏見がテンポよく出てくるのがこのフォーマットの強みなのでワードの長さもさることながらキャッチボールのテンポは下げない方がよかったかなー。「ずれてるわー」「ずれてますかね?」のくだりも、こんなにもともと入ってたっけ。オチの部分もいつも無駄に感じるんだよなあ。

あと見返してて気づいたんだけど「○○顔やろ!」って言われてる側はちゃんとそのタイミングで正面向いてこっちに顔を見せてくれてたんだな。

★最終決戦
●1組目:インディアンス「有名人」
1本目にもまして笑いの山場を小刻みに作ってきた印象。ちゃんと見返すとそれなりにいいネタだなあと思った。

でもやっぱり筋が弱いかなあ。思い返してもなかなかテーマが出て来ず。

もう中学生のくだりとかサザエさんの顔のくだりとかは好きなんだけど、どうも詰め切れなかった印象。もうちょっとエッジを立てて爆発が一つ、二つあれば。例えば真美の再登場時に違うボケかましてバラシできれば爆発あったかも。

●2組目:錦鯉「猿」
このネタを単独で見たとき、はっきり言って「微妙だなあ」と思っていた。締めのバナナのくだりがちょっとしつこいかなと。でもそれが逆に決め手になったね。

ちょっと序盤しんどかったと思う。猿に何回も飛びついては逆にやられるみたいな辺りは結構やばい雰囲気が出ていた。

が、猿が森に帰ったくだりで、完璧な間を置いての隆が発した「じゃあもういいじゃねえか」で完全に掴んだね。そこからどんどんエンジンかかってった。おじいちゃん投げ捨てるとこあたりもよくウケてた。そのときのまさのりさんの動きも良かった。

で、バナナのくだり。1回目はよくウケてて2回目、3回目はちょっと尻すぼみに感じたんだけど、振り返ると何回も何回もやることで会場の雰囲気を破壊し尽くしたのが優勝の決め手かな。「怒りすぎて賢くなってる!」ってなんなんだよ。結局バカだし。

最後の「ライフイズビューティフル!」は小峠のアドバイスで足したらしいけど、やっぱ小峠すごいな。確か単独のときは隆がおじいさんを寝かせる部分があったはずだけど、そこがちょっと浮いてた。

その部分を生かしつつ、もうこれ以上ないぐらい馬鹿らしく、これ以上ないオチになったと思う。まさのりさんが狂ったところをピークに、上手く場を落ち着かせた後、さあ最後何がくるのかという期待を持たせた上での「ライフイズビューティフル!」。思い返せば思い返すほどいいオチだなー。去年のマヂラブオマージュもあるのだろうか。

一個気になったのは、打ち上げで隆が「2本目はまさのりさんがかかってた」と言っていた点。隆がじいさんを寝かせる部分は結構まさのりさんが先走ってたけどあの部分なんだろうか。

●3組目:オズワルド「割り込み」
散々不安視されていたABCで披露したネタをここでぶつけてきたか。見ていて哀れなくらい噛み合ってなかった。

その原因の一つはやっぱり直前の錦鯉のネタだろう。1stラウンドは出順で得をしたが、
最終決戦は順番で泣いたなあ。とはいえ、どこで出ててもこのネタは苦しかったかもしれない。

オズワルドは、ちょっとズレた畠中に対して、一般的な視点からのツッコミを若干エッジを立てて伊藤が叩きつける、ある種予定調和的な部分というのか、そういうクスッとする笑いも特徴だと思うんだけど、畠中のキャラを立てることに注力しすぎたのか、ちょっと見る側が畠中の情動についていけなかった。

畠中のボケにあった「おかしみ」みたいなのがどんどん拗れていって「異常なモンスター」として突き抜けちゃって、ちょっと笑えないレベルになっていたかなあと。客席もちょっと悲鳴笑いみたいなのが多かった気がする。ボケの理解が遅れる分、ツッコミが死んでしまっていた。あまりにも話が通じないとツッコミが意味なくなっちゃうし。

あるいはツッコミも畠中の異常性に応じてパワーを上げなければならず、とはいえ2人のテンポではギアをマックスまで持っていけず、空転してしまっていたように感じた。

2019のネタを見返したんだけど、このときのバランスが一番いい気がしたなあ。伊藤があんまりギアを上げすぎると、声質もあってついていけなくなる。話術としての巧みさよりもパワーで押そうとしたネタなのか、でもオズワルドに求められるものってそれじゃないと思うんだよな。ボケ・ツッコミのパワーで行くならば、センス勝負じゃなくて完全にわかりやすさやバカさに振り切らないと勝ち切れないという好例だと思う。1組前が錦鯉だったが故につとにそう思う。

そしてこういう空気はやっぱりやっている本人が一番わかるはずで、どんどんテンポが崩れてぐちゃぐちゃになっていって、畠中が分裂するあたりは伊藤が噛むし、畠中の伊藤真似も激スベりするし、もう見てられないレベルだったと思う。

古くは旧M-1の笑い飯、キングオブコントのロッチやチョコプラといったように、1本目で爆発してもう2本目は消化試合だと思ったのに、2本目で大コケするパターンってまああるにはあるけど、今回のオズワルドはこの歴史に名を連ねるレベルでコケにコケたとおもう。めちゃくちゃ本人たち悔しいだろうなあ。今年でネタ出し切ったという話もしていたし、来年以降は和牛・見取り図ルートを辿ってしまうのかもしれない。

最終決戦だけ見れば、錦鯉≧インディアンス>>>オズワルドだったかな。テクニック寄りのインディアンス・オズワルドが並んだ分、錦鯉が輝いて、最終決戦も結構差がついたのかなという印象。

「人生、変えてくれ」がテーマの今年。去年から続いたくすぶり中年の物語が素晴らしい結末を迎えたと思う。また、PVで最後に発言した人のコンビが優勝(2020:野田クリスタル→2021:渡辺隆)、オリンピックイヤーにSMA芸人が賞レース制覇(2012:バイきんぐ→2016:ハリウッドザコシショウ →2021:錦鯉)というジンクスは今後どこまで続いていくのか気になる。

何はともあれ、錦鯉、本当におめでとう!!!最高のM-1でした。

(文責:ぺてん師)

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