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抗がん剤の副作用はどうしてでるの?  その7

体重が減ってしまうと、がん治療に悪い影響がでかねません。
とはいえ、「体重減らないように頑張っているけど、どうしても減ってきてしまう」という方も多いです。
がんにかかるとどうして体重が減少するのか?
前回は原因の一つである「がん関連体重減少(cancer-associate weight loss : CAWL)」についてお話ししましたので、今回はもう一つの原因である「がん誘発性体重減少(cancer-induced weight loss : CIWL)」についてお話ししていきたいと思っています。
最後までお読みいただけたら嬉しいです。

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▼おさらい:CAWLとCIWLとは?―――――――――――――――――――――――――

「がん」に関連して体重が減少してしまう原因としては、大きくわけて2つあるとされています。
それは、「がん関連体重減少(cancer-associate weight loss : CAWL)」と「がん誘発性体重減少(cancer-induced weight loss : CIWL)」です。
がん関連体重減少(CAWL)には、がん告知のショックによる食欲低下やがん自体による腸閉塞、抗がん剤治療の副作用としての食欲不振などが含まれます。
がん誘発性体重減少(CIWL)には、がん性疼痛の結果、食事が摂取できなくなってしまったり、がんからのサイトカインによる代謝異常によるものが含まれます。
今回は、「がん誘発性体重減少(cancer-induced weight loss : CIWL)」について、もう少し詳しくみていきたいと思います。

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▼がんに対する免疫反応の結果
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身体のどこかに「がん細胞」ができると、それを排除しようとして免疫反応が起こります。
およそ1日に5000個ほどの「がん細胞」ができると言われていますが、そのほとんどはこの免疫反応により速やかに除去されます。
しかし、稀にその免疫反応を免れて大きくなってしまうものがあり、これがいわゆる「がん」になってしまうわけですが、免疫反応を逃れたとはいえ、なんとか「がん」をやっつけようと免疫反応は継続的に起こります。
免疫細胞は、「がん」の周囲に炎症を起こすことで、たくさんの免疫細胞を呼び寄せたり、活性化して大きくなった「がん」を倒そうと奮闘するわけですが、その炎症を引き起こすのに重要なのが炎症性サイトカインと呼ばれる物質です。
TNF-αやIL(インターロイキン)-1、IL-6などが代表です。
「がん」が大きくなればなるほど、炎症の範囲も拡大し、その炎症を維持するために炎症性サイトカインも大量に放出されるようになります。

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▼炎症は諸刃の剣
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炎症には、「がん」をやっつけるという良い面もあるのですが、残念ながら悪い面もあります。
炎症といっても、すぐにピンとくる方は少ないかと思いますが、実はほとんどの人に経験があります。
それは、風邪です。
風邪は、何らかのウイルスによって起こるものですが、身体に侵入してきたウイルスを排除しようとして炎症反応が起こります。その炎症によって、熱がでたり、関節が痛くなったり、食欲が落ちたりします。
ウイルスそのものが症状を創り出しているわけではなく、ウイルスをやっつけようとする身体の反応の結果として、色々な風邪症状が出現するわけです。
風邪であれば、1日か、長くても数日の経過でおさまりますが、「がん」の場合は基本的にはずっと続きます。
また、「がん」が大きくなればなるほど、炎症が強くなり、それに伴って炎症による症状も強くなってきます。
食欲不振が一時的ではなく持続的に起こり、かつ徐々にひどくなるのであれば、最初のうちはそれでも何とか頑張って食事を摂っていた方でも、徐々に食事摂取量が減ってしまい、ひいては体重が減ってきてしまうことにつながっていきます。
さらに、炎症を維持するためにはエネルギーが必要です。
特にエネルギーを使うような活動をしていなかったとしても、日々というか時々刻々、炎症反応に貴重なエネルギーが消費されてしまうということです。
たき火を維持するのに「薪」をくべ続け、蓄えられていた「薪」がどんどん減っていってしまうイメージです。たき火が大きくなれば、「薪」の減り具合も早くなります。
一方では、食欲不振により身体に取り入れるエネルギーが減り、もう一方では炎症のため消費するエネルギーが増えるわけです。
そして、取り入れるエネルギーよりも、消費するエネルギーが上回ってしまうと、エネルギー的には赤字の状態になり、その赤字を補填するために筋肉や脂肪に蓄えられていたエネルギーが使用され、結果として体重が減ってしまうことになります。

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▼がん細胞からもサイトカイン
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がん細胞からもサイトカインが放出されることがわかっています。
自分の免疫細胞が出す物質と同じものを「がん」が放出し、がん細胞自体が炎症を起こすこともあります。
それとは別に、「がん」がエネルギーを得るために、脂肪や筋肉を分解するような働きをもったサイトカインをあわせて放出していることがわかっています。
「がん」が小さいうちは、がんからのサイトカインも少なく、影響はわずかですが、「がん」が大きくなってくると、サイトカインの量も増え、身体の脂肪や筋肉の分解がより活発になってしまい、その結果、体重が減ってきてしまいます。

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▼まとめ
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今回は「がん誘発性体重減少(cancer-induced weight loss : CIWL)」についてお話しさせていただきました。
とてもわかりにくかったかと思いますが、色々なところから色々な物質が放出され、体重が減るんだなぁ~って理解で十分かもしれません。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
また次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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