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がんと『幸せ』

がんと診断されると、どうしても『死』を意識してしまい、幸せから遠ざかってしまっている方も多いように感じます。
『幸せ』を感じることがあっても、程なく『がん』が思い起こされ、幸せだった気分もすぐにどこかに去っていってしまったりしてしまいます。
定期的に抗がん剤治療をしていれば、抗がん剤投与のたびに『がん』であることを強く認識させられ、副作用が出ればまた幸せを感じにくくなり、がん患者さんが幸せを感じるには確かに難しい環境にあると思います。

とはいえ、「がんなんてどこ吹く風、私は幸せよ!」って過ごされている方もいらっしゃいますし、そのような方は治療の経過もよい人が多い印象があります。
幸福感を感じると、免疫力が上がるから?などの説もあるくらい、がんに負けずに幸せに生きることは非常に大切なことだと考えています。

では、どうすれば幸せになれるのでしょうか?
アドラー心理学では、幸せになるためには3つの条件が必要であるとされています。
①自己受容
②他者信頼
③他者貢献
 
この3つです。

①自己受容とは、ありのままの自分を受け入れるということです。
似たような言葉に自己肯定というものがありますが、自己肯定は自分のいい点にのみ焦点を当てることです。逆に悪い面ばかり見ることは自己否定ですね。
自己受容は、自分の良いところ悪いところ、全部ひっくるめて、それが私なんだと受け入れることです。
「ちょっとダメなところもあるけど、それらもひっくるめて、そんな自分が好き」
あるがままの自分が好きだということです。
『がん』になると、ちょっとだめな自分とは捉えられず、
「私はもうだめだ・・・」
「タバコなんか吸っていたからなったんだ!」
「こんな私には価値がない・・・」
などと考えてしまい、自己受容がとても難しくなってしまう方が多いのではないかと思います。


②他者信頼とは、他人を信頼することです。
信頼と信用は似ていても、全く違うものです。
『信用』とは、これまでの行動や成果を評価して受け入れることで、過去の実績などを元に判断評価し受け入れることです。
『信頼』とは、判断評価なく、その人を受け入れることです。未来への期待を込めて受け入れることになるかと思います。
つまり、『信用』は客観的で過去。
『信頼』は主観的で未来です。
がん患者さんの場合の他者は、ご家族であったり、担当医であったり、医療スタッフであったり。もちろん、職場の同僚なども他者になります。
『信頼』していた人が、期待通りに行動してくれなかったりすると『裏切られた』という気持ちになってしまうと思いますが、
アドラーの言う『信頼』は、条件をつけずに他者を信じることとされています。
つまり、期待通りに行動してくれなくても、それでもその人を信じ続けるというスタンスです。
がんであろうとなかろうと、非常に難しい条件かもしれませんね。

③他者貢献
誰かの役に立つこと
みんなに必要とされていると感じること
人を幸せにすること です
『がん』になると、「自分がいなくても会社は関係なく順調に回っていくのでは?」「自分は誰にも必要とされていないのでは?」と、貢献感が下がってしまいがちです。
実際、治療を終えて職場に復帰したのはいいが、元の仕事は既に別の人が引き継いでいて、自分は閑職に回され、仕事に生き甲斐を感じられなくなってしまったという方もいらっしゃいました。
本来は、誰かに何かをしたという行為レベルではなく、全く身動きがとれない寝たきりの状態でも、そこに存在するだけで誰かの役に立てていると思うような、つまり存在レベルで貢献感を感じられれば非常に素晴らしいのですが、かなりハイレベルですよね。


自己受容、他者信頼、他者貢献は、それぞれ単独で存在するわけではありません。

どのようなときに自分を受け入れられるか?(自己受容できるか?)
おそらく、自分は役立たずではなく、誰かの役に立っていると感じた時かと思います。
つまり、他者貢献できたときに自己受容ができるようになるわけです。
そして、その誰かの役に立ちたいと思った相手は少なくとも『敵』ではない。
どちらかというと役に立ちたいと思うくらいだから『仲間』だと思います。
自己受容ができていないと、他人を競争相手=『敵』と見なしやすくなってしまいますので、『仲間』と見なすためには自己受容が必要です。
自己受容ができ、『仲間』として信頼しているから、その人の役に立ちたいと考えたのだと思います。
つまり他者信頼があって、他者貢献があるわけです。
自己受容、他者信頼、他者貢献は円環関係・相互関係になっているのです。

はじめはアドラーが言うような完璧な自己受容、他者信頼、他者貢献ではなくても、小さな自己受容、他者信頼、他者貢献からはじめて、徐々にらせん階段のように上に向かっていければ良いのかな?
それが大きな幸福につながっていくのかな?と思っています。

アドラーの提唱する幸福の3条件は、
『がん』になると難しいかもしれませんが、
絶対にできないというものはありません。
まずは小さいことから始めてみませんか?

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