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がんと『自己受容』

アドラー心理学では、幸福になるための条件として
『自己受容』『他者信頼』『他者貢献』
の3つの条件が必要であるとしています。
この3つはそれぞれ独立しているわけではなく、相互に関連しあっており、どれか一つが上がると、それに連動して他の項目も上昇しやすくなります。
とはいえ、『がん』になるといずれの条件も得られにくくなってしまいやすいと考えられます。
今回は、3条件のうちの『自己受容』を得るためにはどのようにしていったらいいかを考えていきたいと思います。

そもそも『自己受容』とは、自分の良い面も悪い面もひっくるめて、ありのままの自分を受け入れるということです。
自己否定でもなく、自己肯定でもなく、中立的な感覚です。

『がん』になってしまうと
「あれもできなくなってしまった。これもできなくなった・・・」
「たぶん、仕事もつづけられない・・・」
「そんな自分に何の価値があるのだろうか?」
「生きていても楽しい事なんかないだろう」
と自己否定が強く起こってしまう方が多いのではないかと思います。

このような強い自己否定の状態の中で
無理に
「毎日楽しい事ばかりだ!」
「自分はなんでもできる!」
「この先の人生、楽しいことがたくさん待っている!」
と自己肯定感を持とうと頑張ったり、周囲が励ましたりしても、なかなか感じるのは難しいのではないでしょうか?

自己否定と自己肯定でバランスをとろうとして、自己否定の分だけ自己肯定をしようと思っても難しいということです。

ですので、『自己受容』を得るためには、自己否定を受け入れる必要がありそうです。

自己否定を受け入れるためにはどうしたらいいでしょうか?
精神科医であり作家でもある、樺沢紫苑先生は、自分のネガティブ感情をアウトプットすることを勧めています。

ネガティブな感情は、うまく吐き出してあげないと脳の中でループしてしまうとのことです。
本当は3つくらいのネガティブな感情が、
①→②→③→①→②・・・と
無限にループしてしまい、すごくたくさんのネガティブがあるような気になってしまい、どんどん抑うつ的な気分になってしまいます。
それを浄化する方法が、アウトプットすることとのことです。
自分が抱えている悩みを人に聞いてもらうだけでもスッキリしたりします。

とはいえ、がん患者さんには、『がん』であることすら人には話していないという方も多く、ましてや抱えている悩みなんてなかなか人に言えません!という方も多いです。

家族に聞いてもらえばいいのでは?とお考えになるかもしれませんが
例えば
患者さん:「がんになってしまって、仕事もできないと思う。この先楽しみもどんどんなくなっていくだろう。そんなんで生きていても仕方がないよ・・・」
ご家族:「何バカなこと言ってるの!変なこと言うと怒るわよ!これから治療だっていうのに今から諦めてしまったらだめじゃない。頑張りましょう!」
僕が外来で患者さんのお話しを聞いていると、急にこんなことを言い出しました。びっくりしたご家族は上のように応対しました。
これは特に特別な場面ではなく、患者さんがこんな話をしたら、ほとんどのご家族はこのように応対するのではないでしょうか?
自己受容ができていないタイミングで、『激励』してもなかなか受け入れてもらえないのは、最初の方に記載したとおりです。
また、ご家族にこのように言われたら、患者さんはそれ以上ネガティブな発言はしにくいかと思いますので、聞き役としてご家族は適切ではない状況が多いと思っています。

他人にもいいにくい、家族にも言えないとなると、さて、どうしたら良いのでしょうか?
樺沢紫苑先生は、4行日記というものをお勧めされています。
①1行ネガティブ:起こったネガティブなこと
②1行フィードバック:①に対して今の自分でOKという内容
③3行ポジティブ:3つのポジティブな出来事、発見、気づき
④1行フィードバック:今日の自分に『はなまる』をつけてあげて
という構成での日記です(4行日記といいながら、6行になってしまっていると思うのは僕だけではないと思いますが・・・)

例えばこんな感じになるかと思います
①1行ネガティブ:腫瘍マーカーが上がっていてショック!
②1行フィードバック:上がったからといってがんが悪くなったとは限らない
③3行ポジティブ:
 ・よく眠れて、朝スッキリした感じで起きられた
 ・病院近くの食堂のラーメンおいしかったなぁ。いいお店見つけてラッキー!
 ・散歩の途中、夕焼けがメチャクチャきれいだった
④1行フィードバック:全体的にみれば、今日も良い一日だった。幸せ!

これを寝る前にすることで、一日をポジティブな感情で締めくくり、その感情のまま眠りにつけると、ポジティブが定着しやすくなるとのことです。

その他には
・セルフハグ
 自分自身を、自分の腕でギューッと抱きしめてあげることです。
 これだけで、気分が落ち着いたり、安心感に満たされたり、癒やされた気持ちになれます。
 簡単で、いつでもできて、お金もかかりません!
 8秒間くらいがお勧めです。
 もちろんどなたかお相手がいらっしゃるのであれば、その方にハグしてもらってもいいと思います。

・瞑想、マインドフルネス
 僕も最近はまっています。
 がんと診断されると過去の後悔や未来への不安が押し寄せてきてしまい、『今』を生きるのが難しくなってしまいがちです。
1分程度でも自分の呼吸に意識を向けて、「今ここ」にいるという実感を得ることで、過去や未来に行っていた意識が今に戻ってきて、自己と向き合いやすくなります。

幸せな日常を取り戻すために
『自己受容』してみませんか?

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