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どうして自分の評価を下げることばかり言ってしまうのか。

自分で自分の評価を下げてしまう人がいる。

「私なんて大したことないです…!」といった謙虚でいじらしいものとは違い、いらぬ発言で自分の評価を下げてしまう人のことだ。評価の下げ方は十人十色で、セクハラ・モラハラタイプから、人の心がないサイコパスタイプ、マナーや敬語がなっていない無礼者タイプまで、周りをドン引きさせることにおいて右に出る者はいない。

私のことである。

先日会社で行った新入社員Mさんの歓迎会で、私はまんまと自分の評価を下げてしまった。

Mさんは、新卒で入社した22歳の美人な女性。背が高くスラっとした見た目に端正な顔立ちで、25〜26歳に見られてもおかしくない大人っぽい女性である。普段はジーンズなどのボーイッシュな格好が多いのだが、歓迎会の日のMさんは黒のセーターにロングスカートという珍しい服装だった。

居酒屋でたまたま隣だった私は、「お洋服すてきだね」と声をかけた。するとMさんは、黒のセーターがお母様のお下がりであることを教えてくれた。母親と洋服を共有するという仲の良さにも驚いたが、とても状態の良いセーターがお下がりだったことにもびっくりした。思わず、物持ち良いねと言うと、「ボロボロになるまで使っちゃうんです」と笑っていた。

電源が入らなくなるまで使ったiPhone 7から、最古(?)の物では3歳の時のぬいぐるみまで、恐るべし物持ちの良さを誇るMさん。その丁寧な物の扱いにあてられた私は、聞かれてもいないのに「私そんなに長く使ってる物ないや…」と自供してしまった。

Mさんは「あ、そうなんですね」と軽く受け流してくれたが、普通に考えて「あ、そうなんですね(…この人に何かあげても大切にしてくれなさそう)」と思われているだろう。完全に余計な一言だし、自分の評価を下げる発言以外の何物でもなかった。

誰も私の物持ちなんて気にしていないのだから、「私もずっと持ってるぬいぐるみあるよ〜☆」くらい堂々と嘘をついた方が、Mさんにとっても都合がよかったかもしれない。

だけど、こうした場面でいつも私は、馬鹿正直に自分の評価を下げる発言をしてしまう。発言時点では何も考えていないのだが、後々ふと思い出して「あれって言わない方が良かったのでは…」と正気に戻るのだ。

あの時の私は、今にある物や実家にある物を一通り思い浮かべ、ここ5年以内に買った物ばかりであることを再確認していた。それもそのはずで、実家の部屋をまるごと断捨離している私が、幼少期のお気に入りのぬいぐるみなんて持っているはずがなかったのだ。

これは別に、毒親に追い出されて実家の部屋がない…!なんてことでは全くない。一人暮らしを始める際に実家の荷物を全て処分した結果、両親が元々私の部屋だった場所を寝室として使っているだけのことだ。

よく、実家を出ても、自分の部屋に荷物を置きっぱなしにしている人がいる。非常にもったいない。実家に置いてある荷物は99%の確率で記憶から消し飛んでいるし、物置と化しているので誰もその部屋を使えない。私も実家を出る際、一部の本を置いていこうかと思ったが、「実家に置いてても使わないでしょ?」という合理的な両親の一言で全て処分した。その通りすぎる。今必要な物は持っていけばいいし、今悩むのなら絶対に数年後もいらない。

そんな経緯で実家の部屋ごと断捨離した私は、大学生くらいまでに持っていた持ち物のほとんどを処分した。今持っている物は、ここ5年以内に買った物ばかりだ。いつかMさんのように物持ちの良い人になって、「このバッグはもう10年くらい使ってるお気に入りなのフフ」って笑いたい。その前に、自分で自分の評価を下げる発言を控えたいと思う29歳だった。


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