つまらない人生

「僕が死んだらあの森に帰るんだ。今はただの通過点。だから関係がないんだよ、興味もないし」
「なんにもないのね」
「帰る場所がある」
「それだけでいいの?」
「十分だ」
「無欲な人」
「他に必要なものがある?」
「あるわよ、たくさん」
「欲張りな人」
「そうね。欲しいものが多い分、あなたより長生きする」
「長生きして何になる?」
「さぁ。やってみなきゃ分からないわ」
「帰る場所はあるの?」
「どうかしら」
「じゃあどこに向かっているの? どこに行き着くの?」
「どこかに行き着くわよ。すべては収まるべきところに収まるものだわ」
「運命論者か」
「そんな大層なものではないけれど」
「無責任と言うんだよ、そういうのは」
「そうかしら?」
「君の頭で考えてないでしょう」
「あなただって考えてないでしょ? 帰る場所のことばかりで、今に目を向けていないもの」
「帰る場所さえ分かっていれば迷わないさ」
「それは面白くなさそうね」
「君の方がよっぽど」
「そう?」
「強がっているけど不安でしょう? 寄る辺のない身のままじゃ」
「だとしても今のために生きられないなんてもったいないわ」
「何とでも言えばいいよ。僕は僕のやりたいようにやる」
「そう。なら私も、私のやりたいようにやるわ。ただあなたはとても…」
「君はとても…」
「「つまらない人生なんでしょう」」