指標って何だ?
少し間が空いてしまいました。大学の先生は年明け忙しいのよ、ってことで、誰に向けたのか分からない言い訳をしておきます。
あ、あと、何だか今回からですます調でお届けします、という、これもまたどうでも良いことも一応。
今日は、「指標」について。デジタルマーケティングに関わってると、指標だらけなんですよ、ホント。そんで、あるあるですけど、もうほとんど、何を「指」し示す「標」なのか分からずに使われてたりするんですね。
他にも、最近では「データドリブンマーケティング」とか、「データドリブンマネジメント」とか、「データドリブン○○」って言葉が各所で見られる気がしていて(単に自分のアンテナがそういう電波を拾いやすいだけ、ということでしょうが)、そりゃもちろん、様々な指標が参照されているんでしょう。
それでなのか何なのか、ともかく「○○を改善するには、××という指標をみて、それを高めるように(下げるように)努力すると良い」的なコンテンツが巷に溢れているようで。
一方、そういうコンテンツでは、指標となる数値がどのように計算されるか、とか、その指標が何に使えるか、とかは丁寧に説明されるのに、「その指標が何者であるか」について議論されることは少ないみたいなんですよね。そんなことないですかね。
何者なのか分からない指標の上がった下がったを基準に行動を決めるって、そうとう怖いと思うんですけど、私だけですかね。少なくとも、そんな風に行動を決めるのを「データドリブン○○」とか言っちゃだめでしょ、ってのは断言したいなあ。
やっぱり、そもそも論
ともかく、「データドリブン○○」として指標を使うなら、その指標が何者かを知る必要はあるとして、まずは、「指標」ってことばを辞書で引くと、「物事を判断したり評価したりするための目じるしとなるもの」(デジタル大辞泉, 小学館)みたいに書いてありまして。
まあ、流石の分かりやすさなんですが、やっぱり、使われ方からの定義になってて、「指標が何者であるか」ということの手掛かりにはならないんですよね。
でも、これは当然で、指標は実際には多様なので、辞書としてそれを一般化しようと共通点を探してみると、使われ方しかないということなんだろうと思うんですよね。
一方で、我々の眼前にあるのは、例えばwebマーケティングの分野であれば、訪問UU数、セッション数、PV数、CV数とか言った具体的な数値であって、それが、「物事を判断したり評価したりするための目じるし」であるらしいと分かったところで、じゃあその数値をどう使って、何を判断/評価するのかっていうところでは、全く役に立たないわけですね。
じゃあ「指標」って実践的に定義され得ないか、っていうと、少なくともビジネスにおいて数値で表されるような指標については、そんなことは無いと思っていて、それは、「物事を判断したり評価したりするときに参考にしたい実体を抽象化したもの」じゃないかと思う訳です。
あれ、あんまり実践的に思えませんかね。
でも、「指標」をこう定義すると、それを使う時にはまず、「その指標の実体は何なのか」を考えなきゃいけないな、というのは分かるはずです。だって、その指標の実体が、自分が参考にしたいものの実体と違ってたら、その指標に意味がないことになりますから。
そう考えると、少なくとも、この定義によって、数値を前に立ちすくむ段階からは一歩進めるわけで、そういう意味では実践的な定義だと思うのです。
一方で、さっきから抽象だの、具体だの、実体だのって、何カッコつけて哲学的なこと言ってんの?ナルシスなの?みたいに思われる方もおられるかと思うので、もう少し話を進めて、より実践的な感じにしていきましょう。
指標の実体
ということで、実際にひとつ指標を取り上げて、その実体を考えてみましょう。
例えば「PV数」の実体って何でしょうね。数え方は分かります。ある期間において、webページが閲覧された回数ですよね。
じゃあ、実体は何でしょう。それを考えることはすなわち、webページはなぜ閲覧されるのか、を考えることです。
極端な話、webサイト訪問者のすべてが、すべてのページ閲覧を楽しんでいるなら、「PV数」の実体は、ユーザーの活き活きとした行動の累積としてみえてきます。
逆にまた極端な話、webサイト訪問者のすべてが、必要な情報に中々たどり着けずにページ閲覧を繰り返さなければいけないようなら、「PV数」の実体は、ユーザーの陰気な行動の累積としてみえてきます。
つまり、なぜwebページが閲覧されるか、という理由次第で、「PV数」の実体は全く違ったものとしてみえてくるわけです。
未だに、「PV数」について、「ページごとのPV数は、ページへの注目度を測る指標になる」とか、「サイトのユーザビリティ改善で、セッション当たりのPV数を高めるのが大切」とかいう言説が広くweb上にありますが、とんでもないですよね。
そんなの、前者ならページの性質とかそこへの導線の太さによるだろうし、後者ならユーザビリティ改善の方向性によるでしょう。というか、スマートフォン全盛のこの時代、ユーザビリティ改善って、いかにページ遷移を抑えながら必要な情報を提供するか、って方針でやるべきじゃないのか。だったら、セッション当たりPV数は、ユーザビリティ改善の結果として減らすべきものでしょう。
そもそも、ユーザビリティ改善をより良い情報提供のために行うとした場合、それが上手くいったかどうかの評価をするための指標って、必要な情報に素早くきちんとたどり着いてもらえたかどうかを抽象化したものであるべきなわけです。
でも、それってもちろん直接的に測定することはできない。それで仕方がないので、そのひとつの抽象化の方法として、不完全ではあるものの「セッション当たりPV数」を使うしかない、という理解をしないと、それを指標として正しく使うことはできないわけです。
それでも悩ましいのは、必要な情報にすぐにたどり着いてもらえた結果としてセッション当たりPV数が減ったのか、必要な情報が本当はサイト内にあるのに、導線設計が悪くて諦められた結果としてPV数が減ったのか、というは結局本当には分からない、ってところなんですよね。
結局、今回も
だから、そこはあれこれ考察するしかない。考察したって本当のとこは分からない。だったら、その考えに基づいた施策を試すしかない。それも……って、前回と全く同じこと言ってますね。
これは、もちろん「PV数」に限った話じゃないわけです。「セッション数」だって、webサイトの情報を必要としてくれているユーザーの行動の累積だったらハッピーですけど、実際には、リスティング広告で無理やりユーザーを連れてきといて実は必要なものが無い、っていうようなユーザーの不満げな行動の累積かもしれないし、単にいくつかのサイトを比較しているユーザーの比較行動の累積かもしれない。
そして、どれが本当かは分からないし、実際にはそれらが入り混じっているんですよね。だから、それひとつ取って、上がったらハッピー、下がったらアンハッピー、なんてことは言えない。
リスティング広告経由で何度も訪問してるのにCVしないユーザーがいるぞ、なぜだ?
このカテゴリの商品だけ、新規購入者の購入までのセッション数が多いぞ、なぜだ?
何度も同じ商品を、同じような間隔で購入してるのに、未購入セッション数が多いぞ、なぜだ?
疑問は尽きなくて、答えは風の中(古いか)。だから一生懸命考えて、答えをつかむためにあれこれ試してみるしかない。
結局、今回もこれですな。はい。ご一緒に。
自分の頭で考えて試すって、大事よねー。
とにかくね、「○○を改善するには、××という指標をみて、それを高めるように(下げるように)努力すると良い」みたいなことを鵜呑みにした努力は、無駄な努力になるかもしれませんよ、と。
その「××という指標」はどんな実体を抽象化したものなのか、きちんと考えてはじめて、それが「物事を判断したり評価したりするための目じるし」として使えるようになるんだ、っていうのは、忘れないようにしたいですね。
今日は程よい長さでしたかね。来週もまた、マーケティングについてのあれやこれやを書いてみようと思います。
気になる方には、乞うご期待。明日も元気に頑張ります。
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