ドッペルゲンガーに悩む患者
「先生、こんにちは」
「はい、こんにちは、今日は?」
「僕はビルのメンテナンス業者で働いてまして、その部署のひとつでドローンによる建造物の破損箇所の確認とかをしているんですね」
「はい」
「で、そのドローンは蜘蛛のような形をしているんですが、瓦礫とかをある程度除去して細い隙間なんかを通るためにロブスターみたいな金属製の爪がついているんですね」
「はい」
「操縦は手にセンサー付きのグローブをはめて、ドローンに搭載されたビデオカメラから通信で飛ばした映像が見れるゴーグルをして作業ができるんですね」
「テレビアニメみたいな感じですね」
「そうなんです・・・ただ、テレビアニメでは超合金ロボットの中に入って操縦するんですけど、僕の場合は離れた場所から操作するのが問題なんですよ」
「問題とは・・・」
「・・・・はい、そのロボットの目線で四六時中瓦礫の撤去作業とかしていると、仕事終わって帰ったら、自分が家にいるんです」
「・・・・・」
「自分とそっくり、というか自分自身の分身が台所で夕飯作ってるんですよ」
「しばらくすると消えるでしょう」
「はい、しばらくすると消えます。一度はなかなか消えずしばらく生活しました。これってなんですか?」
「自己意識が自分の身体から離れてしまったのかもしれないですね」
「なんで?」
「ドローンをずっと操縦することで、身体の自己認識がおかしくなってるんでしょう」
「先生、こういう患者さん他にもいらっしゃるんですか?・・・妙に冷静なんで」
「いや、昨日その台所にいたほうのあなたがここに来ましたから・・・」