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『無借金クリニック開業の教科書』① 【50~60代の例】 〜非常勤勤務も併用しよう!編〜
すみません、このシリーズは医師向けの記事です(^_^;)。あ、別に医師以外の人が読んでも全然問題ありません。
こんにちは、森田です。
医師のみなさん「開業」ってどんなイメージですか?
◯土地(医院はもちろん駐車場も)が必要
◯建物・医療機器などのハードも必要
◯看護師/事務職などの求人が大変・人件費も大変
◯会計・経理・税務なども大変
↓↓
分からないことばかり!!
(╯°□°)╯︵ ┻┻ ムキー!!
と、なりがちです。
お金も莫大にかかるし、経験もない。
そりゃムキー!!ともなりますよね。
でも、その状態のまんまで、
いざ「開業」を考える時期、
例えば「定年」とか「退局」とか…
を迎えてしまうと大変なことになります。
?何が大変か?
あなたが「開業=大変」と思っていること。
そこがそもそも問題なのです。
実は、「開業」はあなたが思っているほど大変ではありません。
やり方次第ではお金も全然かかりません。
会計・経理だってへっちゃらです。
そこが理解できていないと。。。
「大変」と思ったままで「開業」を迎えてしまうと。。。
その「大変」な部分を全部他人に丸投げしたくなってきます。
『オレは医療だけやっていたいんだ!』
と言う、いかにもかっこいいセリフを身にまといながら、
開業コンサルタント会社に頼ることを正当化したくなっちゃうんですね。
で、いい食い物にされる、と(^_^;)。
ちなみに、開業コンサルタントの相場は総開業費用の◯◯%とか、
そういう計算になっているところが多く(多くはHPでは公表していません)
なるべく多く費用を使わせるところが多い(それが商売)です。
ま、別にそういう『最初から大きく投資して勝負したい』
という方向性が好きな方はそれでもいいんですけど。。
でも、そもそも論で言えば、
最初から経営拡大方向の野心をもって医師を志した先生ってそんなに多くないはずですよね。
それこそ「患者さんに最適な医療をしたい」という思いで医師を志された先生が圧倒的に多いんじゃないかな、と思います。
ということで、
『コンサルに頼まなくても全然大丈夫!』
そんな選択肢もあるんだよ。
ということを知っておくこともまた重要なのではないかな、と思います。
こんな感じの自由で『気軽な開業(廃業まで含めて)』、
『お金に振り回されない開業』が浸透してくると、
日本の医療はもっと風通しが良くなるのではないかな〜、
より良い意味でのプライマリ・ケアや家庭医療が広まってくれるのではないかな〜、
と思っています。
で、『無借金開業の教科書』なんていう変な連載を始めることになっちゃったわけですね。
ということで、「無借金開業の教科書」シリーズ、スタートします。
まずは論より証拠、ということで実践例を一つご紹介いたします。
こちら「くにたち富士見台在宅支援クリニック」の野村祐二先生です。
野村先生は平成29年の12月、59歳のときに、国立市内のご自宅(今は近隣のマンションにお住まいで、こちらには息子さんご一家が住まれていたのですが、息子さんの転勤で空いたお宅、とのことです)を改装されてクリニックを開業されました。
改装費用は200万円台。中はこんな感じです。
ご自宅感もあり、アットホームな雰囲気ですね。
こちらで、事務系担当の奥様とお2人で、午前は外来診療、午後は訪問診療と週3.5日の診療を行っておられます。
今のところ、外来はボチボチで、主に1日数件の訪問診療の患者さんで収入が保たれているとのことでした。
ん?…週3.5日の診療?
そう、実は野村先生、それまで長年ご勤務されてきた医療機関で、今でも週1.5日働かれています。しかも、それまでそのクリニックで管理者(=院長)だったので、週1.5日のみの勤務ですがそれだけでも夫婦2人で暮らしていける(お子さんも独立されているので)くらいの給料は出してもらっているとのことでした。つまりここで最低限の生活保障を確保しているというわけです。
実はここが『無借金開業』を実践するにあたっての大きなポイントです。
通常、「クリニック開業」と言えば、(まあたまに当直バイト程度はするとしても)基本的にそれまで働いていた医療機関を完全に退職して、フルタイムで自分の「クリニック」の診療にあたる、そうしないと出資しただけのモトが取れない!
と言うのが普通です。
だって、多額の借金をして、土地を買って建物を建てて医療機器を揃えたんです。ですから、自分も含めて土地も建物も医療機器もフルで働いてもらわないともったいないですよね。
…と考えるのは、通常の開業の場合。
『無借金開業』なら、初期投資をほとんどしないので、そもそもそんなことを考える必要がない。
それよりも、他院への非常勤勤務を併用することで最低限の収入を確保し、その上で開業するという方が圧倒的にリスクを低減出来ます。
ちなみに、開業しても保険収入が入るのは2ヶ月先です。つまり開業当初の2ヶ月はほぼ収入ゼロ、というのが通常の開業では定番となっています。
そういう意味でも、ある程度の生活費を確保出来る『非常勤勤務』の継続は理にかなっています。
…とはいえ、皆さんいまこんなふうに思っていませんか?
院長なのに非常勤勤務なんて出来るの?
→出来ます。
詳しく解説しますと、クリニックを開業するときは「管理者(いわゆる院長)」が必要です。通常は開業するドクター、つまりあなたが「管理者」になるわけですよね。で、管理者は「クリニックの診療時間中は常駐」が原則です(もちろん、原則なので例外はありますが、申請時は原則に忠実に従ったほうが良いでしょう)。つまり、自院の診療時間中は、他院で非常勤勤務は出来ない。他院での非常勤勤務の曜日と自院の診療時間がかぶってはいけないのです。じゃ、どうする?
→「クリニックの診療時間を週3日で申請」すればいいのです。
え?クリニックの診療時間は週3日とかでいいの?
→問題ありません。
詳しくいいますと、「保険診療」を行う場合(ま、普通しますよね)、開業前に地域の厚生局から「保険医療機関の指定」を受ける必要があるのですが、あまり診療時間が短いとこれが受けられない可能性はあります。
とはいえ、これも週3〜4日は大抵大丈夫のようです。事実、上記の野村先生も週3.5日の診療時間で全く問題なく厚生局の指定を受けておられます。実はこれは、地域の厚生局によって、基準がマチマチのようで…週2日の診療時間でも大丈夫だったり、週4日は診療してください、と言われたりもあるようで…この辺は統一してほしいところですが(^_^;)。
ま、まず開業プランを立てたら厚生局に相談してみたらいいと思います。
というわけで、診療報酬のあまり見込めない開業当初の時期(前述の通り最初の2ヶ月は保険収入がありませんし、そもそも最初から患者さんが十分に集まることは想定しにくいでしょう)、この時期に他院で非常勤勤務をするというのは、収入を確保する上でも、ご自身の精神衛生上も、とても利のあるプランだと思います。
そう、「借金」というのは、何より精神衛生上とても良くありません。そのためにも、開業にかかる初期投資はできるだけ抑え、「損益分岐点」を極限まで低くする、もっと言えば、「損益分岐点」なんて言う概念すら考えなくてもいいくらいまでに初期投資を抑える!
ここがポイントになってくると思います。
そうすることで、『お金に振り回されない、自分の信念を貫ける経営』が確保されるんですね。
逆に言えば、借金して開業すると…
「職員の給与を維持するため」
「検査機器への投資を回収するため」
「赤字になるのを回避するため」
など、様々な『お金』にまつわる問題によって、そもそもの根本である『診療』が振り回され、不必要な診療をしたり、不必要な検査をしたり、不必要に患者を囲い込んだり…
あ、だんだん話題が危険な方向に逸れてきたので、話を戻しましょう(^_^;)
「無借金開業」か〜。う〜ん、そうは言ってもね〜……
『そんな目立たない開業で患者は集まるの?』
『検査機器とかはどうするの?』
『電子カルテとかはどうするの?』
『会計・経理はどうするのさ!?』
そう、まだまだ疑問は解決されていませんよね。
これらの疑問は、次回から順次解決していきます!
若手の『無借金開業』事例もいろいろご提示します!
乞うご期待!(次回からは有料設定の予定です。)
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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)