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寓話/長生きできる薬

長生きが出来る薬が出来ました。

国民は大喜び。街中がパレードです。

みんながその薬を欲しがったので、薬屋さんには長い行列が出来ました。

でも、少し困ったことも出てきました。

お金がなくて薬を買えない人、順番が回ってこずに薬を買えなかった人、そんな人たちが出てきてしまったのです。


そこで王様は、国のお金でその薬をたくさん買い込み、国民にただで配ることにしました。

国民はまたまた大喜び。

再び街中がパレードになりました。

「長生きの薬バンザイ!」

「王様バンザイ!」

国中が喜びに包まれました。

ただ、おかしなことに、半年たっても一年たっても死んでしまう人は減りません…。

いつも通り、お年寄りから順番に亡くなっていきます。


その時、薬屋さんは言いました。

「新しい研究では、半年おきに飲み続けないと効果は出ない、と言う結果が出ました」

と。

王様はさらに薬をたくさん買って、半年ごとに国民に配りました。

国民はみんな特に疑問を抱かずに飲み続けました。

薬屋さんや王様の言うことに間違いがあるはずないのですから。


すると、またおかしなことがおき始めました。

なんと薬を配る時期に限って亡くなる人が増えてしまうのです。

国民がどんどん亡くなっているのですが、その原因はよくわかりません。
それが薬のせいなのか、その他の原因なのか…。

おかしいと気づいた人たちが声をあげ始めました。

「この薬はちょっとおかしいぞ!」

「俺たちは騙されたのかもしれないぞ!」

と。

でも多くの国民は

「薬屋さんが科学的に検査した薬なのだから」

「王様も認めてる薬なのだから」

「みんなが飲んでる薬なのだから」

…だから大丈夫だろう。

そう言って聞く耳を持ちません。

王様も

「国民がみんな信じてるんだから、余計なことをせずこのままで行こう」

と考えを変えません。


誰も、自分の頭で考えたり判断して行動することができません。
周りをキョロキョロ見て誰かの言うことに従っているだけです。

その後も、王様は薬を買い続け、国民はそれを飲み続けました。

もちろん、その国はどんどん人口が減り、産業は衰退し、最後は滅んでしまいました。



長生きできる薬とは一体何だったのでしょうか?




(参考)


夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)