【医師直伝】…今さら聞けない『風疹』の全て!/2019年版【3分で超解説】
こんにちは森田です。
今回は風疹なんですが、2018年、全国的にかなり話題になりましたね。そう、僕の地元・鹿児島県でも3例の感染が確認されております。
■風疹の流行状況
出展:鹿児島県ホームページ http://www.pref.kagoshima.jp/ae06/kenko-fukushi/kenko-iryo/kansen/fuushin/fuushin-info.html
いやしかし、年によってこれだけ違うもんなんですね。
2017年は全国でたったの91件だったのが、翌年の去年(2018)は2586例で、なんと一気に約30倍!そりゃテレビでも騒がれますよね(-_-;)
でもよく見てみてると、その5年前の2013年は、さらに5倍以上!の1万4千例!
グラフだとこんな感じ。
出展:国立感染症研究所ホームページ
その年によってかなりの波があることがわかりますね。
なんでこんなに波があるのかな?
いや、そもそも風疹ってなんだっけ?どれくらい怖い病気なんだっけ?
■そもそも風疹とは?
風疹という疾患は、風疹ウイルスによる感染症です。その特徴はこんな感じ。
■ 咳などで飛沫感染する。
■ 潜伏期間は2〜3週間。
■感染力はインフルエンザ以上に強い!
で、 症状は以下の3つが主体
1.発熱(→実は約半数にしか見られない)
2.リンパ節腫脹
首・耳・あごの下など、いろいろ部位のリンパ節が腫れます。
出展:国立感染症研究所ホームページ https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html
3.発疹
出展:国立感染症研究所ホームページ https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/430-rubella-intro.html
■検査
検査は主に血液検査です。風疹ウイルスが体内に入ると、そのウイルスを攻撃する部隊=『抗体』が体内で作られ、その結果ウイルスが消えていきます(これを免疫反応と言います)。
つまり、感染したかどうかは、血液中の抗体がどれだけ増えているかを測ればわかるのです。
■治療
風疹ウイルスに対する薬はありません。解熱剤で熱を下げる、節々の痛みに痛み止めを使うなどの対症療法があるだけです。
風疹や風邪でのつらい症状の代表格は、頭痛・発熱(またそれらによる倦怠感・食欲不振)などですが、これらの症状は解熱剤で抑えることが出来ます。解熱剤で楽になると食欲も出て回復も早いかもしれません(ただし、熱がある方が回復も早いとも言われています)。風疹や風邪のときに病院でもらう解熱剤の代表格はアセトアミノフェンですが、これは市販薬でも買えます。(詳細は末尾)
例えばこちら↓
ただし、先述の通り免疫によって抗体が作られますので、彼らがウイルスをやっつけてくれます。そのため症状は比較的軽めで一過性で終わる場合がほとんど。しかも不顕性感染(うつっても症状が出ない)も15~30%ほどあるくらい。基本的には薬がなくても体内の免疫により排除されるものなのです。
そう考えると、昔は「三日ばしか」と呼ばれたありふれた感染症だったのも頷けます。
ん?じゃ、風邪のようなもので大した病気じゃない?
いえいえそんなことはありません。実は風疹の怖さは、
■CRS:先天性風疹症候群
にこそあります。
特に妊娠初期は要注意で、妊娠11週までに感染すると、
赤ちゃんの先天奇形のリスクはなんと90%!
と非常に高くなります。
風疹の先天奇形には、難聴を筆頭に、心臓の病気、白内障や緑内障といった目の病気、脳髄膜炎など!
これは怖いですね。。。((((;゚Д゚))))
え?…そんなに怖い病気なのに、あまり周りで耳にしない?
確かにそうですよね。インフルエンザ以上に感染力が強い「風疹」なのに、そんなに街では耳にしない。…その理由は、まさに予防接種【ワクチン】の普及にあります。
■超重要!風疹ワクチン!!
白状しますと、実はこんな記事を書いている僕自身、
風疹の患者さんを診察したことがありませんΣ(゚Д゚)!
…なんというヤブ医者(ノД`)!
というのは冗談で(-_-;)、
先日フェイスブックとツイッターでお医者さんたちに訊いてみたんですが、半数以上(約6~7割)のドクターが
「一度も風疹の患者さんを診察したことがない」
と回答してくれました。
つまり風疹という病気は、
「昔はそれなりにあったけど、今はかなり珍しい疾患になった」
と言うことなんですね。これは1980~90年代の本格的なワクチンの普及時期と重なります。
出展:国立感染症研究所ホームページ
かつては巷にあふれていた風疹も、風疹ワクチンの普及により激減した、ということですね。
しかし、その後、海外からの輸入例などからの流行が散発的に発生するようになります。それが前掲のグラフ。
出展:国立感染症研究所ホームページ
その主な原因は、一度もワクチンを受けていない世代。特に
昭和54年(1979年)以前に生まれた男性(=オジさん)!
免疫を獲得してない世代の彼らが出張先などで海外からウイルスを輸入し国内で流行らせてしまうこと、これらが主な背景ではないかと言われています。
出展:国立感染症研究所ホームページ
昔の集団接種は学校でのほぼ全員参加なので接種率は高いのですが、近年の個別接種は各家庭での判断なので接種率は低くなっています。
先述のとおり、風疹自体は一時的な軽い風邪症状。なので、オジサンたちはすぐに治ります。
でもその結果困るのは妊婦さんと子供たちなんですよね。
2013年に起きた風疹の大流行では、45人の赤ちゃんが先天性風疹症候群になってしまいました。
また、風疹は症状が軽くすんでしまう、もしくは全く症状が出ない(不顕性感染)こともあり得るだけに、逆に
妊婦さんが風疹にかかったのに症状が出ないので気づかない!
でも、赤ちゃんは先天奇形になってしまった・・。
ということだってありうるのです。事実そうした例も報告されています。
そう考えると、もう社会全体、みんなでワクチンを摂取して予め風疹を予防していくしか手はないわけですね。
・ワクチンが足りない!?
となると、いち早くワクチンを!
と言うことになりますが、果たしてワクチンは足りているのでしょうか?
2018年の風疹流行時は、大々的に風疹被害が報道されたこともあり一時的に風疹ワクチンが在庫切れになるケースがありましたが、2019年の1月現在で言えば、ワクチンの在庫切れはそんなにないようです。
ただし、風疹単独のワクチンより、麻しん(はしか)と風疹の両方が入ったMRワクチンのほうが流通量が多く、入手しやすいようで多くのケースで使われています。(各医療機関に問い合わせが必要です。)
・ワクチンの接種費用は補助も!
なんと!2018年の年末にすごいニュースが!
国が動いてくれました!
ワクチン未接種世代のオジさんたちを対象に、2019年から3年間
無料接種をしてくれる!
とのこと。
厚生労働省その他の皆様ありがとうございます!
(๑•̀ㅂ•́)و✧
日本の夜明けも近いですね。
オリンピックもありますので、世界に向けて恥ずかしくない公衆衛生大国日本!をみんなでつくりましょう\(^o^)/。
あ、オジさん世代以外の人にはワクチン費用の助成はないのか!?といいますと、そこは各自治体で独自の助成もあったりしますので、HPを調べるなり、問い合わせるなりしてみてください。
ちなみに僕はこのオジさん世代無料!のニュースが出る前に風疹ワクチンを自費で!打ってしまったので、いま悔し涙を流しています(ノД`)
あと、ワクチン接種世代でも、特に妊娠をお考えの若い女性、またのその同居ご家族などは、風疹の抗体価(ワクチンがちゃんと効いているか)の検査を受けられることをおすすめします。
自治体によって様々ですが、僕がいる鹿児島県は
妊娠希望の若い女性とその同居家族に無料抗体検査
をしてくれています。
ワクチン接種世代でも、個別接種(各家庭で接種を管理)なので実は接種を忘れてた!とか、昔打ったけどもう効果が切れちゃってるなんてことありますので(実はそういうこともあります)。
この辺りのこともお住まいの各自治体に問い合わせてみるといいでしょうね!
以上、風疹についてでした。
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ぼくの本
財政破綻・病院閉鎖・高齢化率日本一...様々な苦難に遭遇した夕張市民の軌跡の物語、夕張市立診療所の院長時代のエピソード、様々な奇跡的データ、などを一冊の本にしております。
日本の明るい未来を考える上で多くの皆さんに知っておいてほしいことを凝縮しておりますので、是非お読みいただけますと幸いです。
著者:森田洋之のプロフィール↓↓
https://note.mu/hiroyukimorita/n/n2a799122a9d3
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夕張に育ててもらった医師・医療経済ジャーナリスト。元夕張市立診療所院長として財政破綻・病院閉鎖の前後の夕張を研究。医局所属経験無し。医療は貧富の差なく誰にでも公平に提供されるべき「社会的共通資本」である!が信念なので基本的に情報は無償提供します。(サポートは大歓迎!^^)