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【台湾の面白い建物】衛武營國家藝術文化中心(その一)

日本で教会堂とか音楽ホールの設計に関わった経験があるので、台湾のホール建築にもとても興味を持っていて、機会があれば出来るだけ色々なホールを見に行くようにしています。その中でとても気に入っている建物があります。衛武營國家藝術文化中心です。
國家と名前がついているので、この建物は国の施設です。台北に中正紀念堂の前に國家音樂廳と國家戲劇院があるので、それに見合った形の音楽ホール演劇ホールを持ちたいというのが、高雄市民の悲願だったそうで、それが2020年になってようやく実現しました。

設計者は、オランダの建築家Francine Houben。国際コンペでこのプロジェクトを勝ち取ったそうです。

この施設のポイントは、オペラハウス・コンサートホール・小ホール、そして屋外劇場を一つの屋根の下に統合していることです。日本人的な感覚では建物の大きさがある一定の規模を超え、構造上の挙動が部位ごとに異なる様な場合、エキスパンション・ジョイントを設け、構造的に別の建物はすることが常道です。それに比してこの建物の平面規模は200m×150m、台湾最大の屋根の大きさを誇っています。

デザインコンセプトとしてガジュマルの木陰の様な空間をつくることをテーマにしており、それは見事に達成されていました。そういう風に説明されると、高雄のこの地でこの様な設計がなされた事に十分な説得力があります。

今回は外観の写真だけを紹介します。


北からの遠景

道路の向かいからこの建物を見るととても未来的な様相を示しています。膨らみのある屋根の形状は、オペラハウスのフライタワーを隠すための処理ですが、造形的にもなかなかダイナミックです。

立面のアクセント

衛武營の施設解説のツアーに参加したことがあります。その時に、解説員がこの屋根の造形の理由はと質問がありました。屋根全体で、この部分の曲面が極端に変化が激しく施行が難しかったのだそうです。
その理由は、建築家がこの形を作りたかったからだそうです。設計をすると、そういうことがありますね。造形的なこだわりです。

南側の曲線

公園側に面した南側では、屋根の線は地表面まで降りてきています。これは屋外ステージの計画のためです。これも立面計画上の大きなポイントになっています。

屋外ステージを見下ろす

屋根面は大きな円形劇場の様に計画されています。このステージではオーケストラの演奏や、ポピュラー系の音楽、或いは海外のステージを映像で流すなどして利用されています。

屋外ステージを見上げる

屋外ステージをしたから見上げるとこのような感じです。最上部では3階の共用エリアとつながっています。

衛武營_B01
屋根面のライトアップの様子

巨大な軒の部分にアッパーライトを当てる形でライトアップを計画しています。

ガジュマル広場のストリートピアノ

高雄のこの地で、屋外にグランドピアノを置くのはかなりリスキーな判断だと思うのですが、ここには常に置かれています。

ガジュマル広場の屋根

この建物の特徴はこの半外部空間の軒天井です。これは造船の鉄板加工の技術を使って実現しています。そのため結構大きな溶接の継ぎ目が明らかです。しかしこのスケールの建物で考えると、それは良しとしなければならないのではと考えます。

コーナー部の持ち出し

このコーナーの見え方は、この建物の特徴の一つです。上部構造が巨大なトラスになっているため、このような持ち出しが可能になったのでしょう。

イベントの中心として

この施設では頻繁な屋外でのイベントが行われています。市民に親しまれる場所となるよう運営されているようですね。


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