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【台湾の地質環境】泥の山、泥の河
3本続けて台湾北部の地質環境について述べたので、ここで南に目を移します。台北盆地編で述べた、台湾の南は新しく隆起している土地であるということを詳しく説明してみます。
恆春半島の尻尾
台湾島の形を見ると、南に恆春半島が伸びていることが一つの特徴です。この半島の先の海底の地形を見てみると、フィリピンに向けて山の尾根のような形がずっと続いていることが分かります。これは将来この部分が順に隆起していき台湾島が南に延びていくことを示しています。
このことは、恆春半島の土地がかなりの勢いで海面から高さを増しているという、地質学的調査から分かってきたことです。海面の高さにあった珊瑚礁の面が、数万年というオーダーではありますが、だんだんと隆起していることが分かるそうです。
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月世界と悪地の地形
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高雄と台南の県境の付近に、月世界と呼ばれている特殊な地形があります。表面が泥土になっており、大雨が降るたびに表面が侵食されるために、植物の育たない山です。地質学の用語で"悪地"とも呼ばれています。
このような地形はプレートの衝突によってできた地殻の細かい堆積物が積み重なってできています。それが海面に長い間堆積していれば、圧縮され熱を発して一体化され固くなり堆積岩になるわけですが、そういう経過を経ずに地表に出てきているために、非常に脆い雨に流されやすい土壌になっています。
この"悪地"という用語は日本語にもあるようですが、日本にはない土地の様子なので、実感が湧きません。台湾にはこの"悪地"がたくさんあります。
この泥の山は、ユーラシアプレートにフィリピン海プレートが乗り上げて出来る、地殻表面の破砕物が堆積し地面に隆起している状態です。この部分の地層は利吉斷層と呼ばれており、年間2mmほどのオーダーで地上への隆起を続けているそうです。
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阿公店水庫
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屏東の家族に"崗山之眼"という観光スポットを見に連れて行ってもらった際に、この場所の足元に阿公店水庫というダムが広がっていることを知りました。説明の中に、台湾では最長の長さを誇る堤防があると説明していました。
このダムは、山の中腹からの土砂の流入が激しく、それがためにこの土砂の浚渫をするために、大規模な改修工事が行われているそうです。
濁水溪と高屏溪
上記の様な南台湾の土地に泥の影響が少なくないと知ったので、濁水溪という河の名前にも、もしかしたら関係があるのかもしれないと調べてみました。
そうしたところ、やはりこの河には水の中に泥砂が混じっており、そのためにこの名前がついたと説明がありました。
高屏溪にもこの泥の影響はあるそうです。齊柏林の写真展の中に、下記の様な景観が紹介されていました。この河も泥の堆積が常に起こっているので、この様に何台ものショベルカーを動員して、河から泥を浚渫しているのだそうです。家内の実家がこの高屏溪の近くにあるので様子を聞いてみたところ、確かにその様な作業は常に行われており、地元ではそれなりの規模の事業になっているとのことでした。
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恆春の泥火山
恆春には泥火山という場所もあります。ここでは、泥の池に一年中ガスが噴き出ています。"出火"と呼ばれる場所もあります。これは同じように一年中火が燃えている場所です。
このような、地下深くから漏れ出てくるガスによる、特殊な景観が恆春では散見されます。
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新しく生まれ出ている土地
このようにマクロ的な環境から、具体的な景観、河川への影響まで、南台湾の地形が台湾の中では,比較的若いことが分かります。そして、それは日本には見られない、特殊な景観を形作っており、その景観があることが、この土地が若く成立したことを示しているわけです。
そして、この土地は現在も隆起と南への延伸を続けており、将来の台湾島の形を予見させることができます。ダイナミックな台湾島の中でも、特に変化に富んでいる若い地域と考えることができます。
このことの具体的なイメージは、下記の動画にも紹介されていますので、興味のある方はご覧ください。
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