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ホテルの世代交代

台湾では、たくさんのホテルが営業を終了、或いは建替え工事に臨んでおり、一方欧米や日本のホテルチェーンが進出を始めています。これを網羅的に紹介することはできませんが、台北に住んでいて気がついた、主なホテルのプロジェクトを紹介します。

営業を終了した中堅ホテル

まず、台北で営業を終了したホテルを紹介します。これらの多くは、日本の観光客も沢山宿泊していたホテルなので、SNSでこれらのニュースを聞いて残念がる投稿をたくさん見ました。

國賓飯店

中山北路二段にある老舗のホテルです。閉店に至った経緯は詳しく分かりませんが、この住所はホテルに相応しい一等地なのですが、ここで競争力を持つホテルを準備するには、改築では中途半端なので、この際建て替えをする様にと考えたのでしょう。

また、Wikipedia の説明には、政府の"危老改建"の手法を用いていると書いてあります。これは台北市の、古い建物を改築するための助成金制度で、その様な資金協力が得られるならと、改築に踏みきったのかもしれません。

六福客棧

六福客棧は中華風の中庭が趣を持っていたホテルでした。既に2020年に営業を終えています。この場所では解体工事が終わっており、新築建物の工事が始まっています。
新築工事は、日本の熊谷組の現地法人、華熊營造が施工を担当しています。表紙の写真が2024年8月現在の工事現場です。

西華飯店

西華飯店は、僕ら夫婦が台北で結婚した30年前は、台湾の最高級のホテルとして名を馳せていました。現在は、営業を中止して大規模な改修工事を実施していると見えます。外観はそのままでの改修となっている様です。

ネット上での説明には、"酒店式服務豪宅"と書いてあり、これは高級住宅として作り直すということのようです。

華國飯店

華國飯店は林森北路にあった中型ホテルです。現在営業は終わりましたが、建物はそのまま残っています。

康華飯店

康華飯店は松江路にあった中堅ホテルです。現在営業は終わりましたが、建物はそのまま残っています。

最近オープンした日系ホテル

僕は、日系ディベロッパーの下で、建築コンサルタントとして仕事をしています。そのうちの一つのプロジェクトがホテルです。このホテルは4年前にオープンし、コロナの間は苦戦していましたが、現在旅行の環境は常態に戻り、ホテルの運営も軌道に乗り始めているようです。

台北における日系ホテルは中山北路二段にある日航ホテル、民権東路にあるサンルートホテルが草分けとしてありますが、現在僕の関わったホテル以外にも4軒がオープンし、日本人向けに特化したサービスを提供するホテルとして営業を始めています。

ホテルメトロポリタンプレミア台北

メトロポリタンプレミア台北は、JR東日本系列のホテルです。この建物は、國泰建設が所有しており、当初六福皇宮として、ラグジュアリーな大規模ホテルとして営業していました。
しかし、六福皇宮のホテル営業は終了し、新しくJR東日本がテナントとして入り、メトロポリタンプレミア台北として営業を始めています。

このホテルは、既存の建物を借り受け、全面的に内装工事をやり直していること、元々が沢山の高級レストランを有している大規模なホテルであることから、工事はなかなか大変であったと聞き及んでいます。

三井ガーデンホテル忠孝新生

MRT忠孝新生駅の直近に新築案件として建てられたホテルです。最上階に大浴場を設けて、日本人顧客のニーズに応えるような施設となっています。
1階には、日系のイタリアンレストラン"Japoli"が入っており、リーズナブルなイタリアンレストランとして好評です。

ホテルグレイスリー台北

台北の秋葉原のような場所である、光華商場の近くにオープンしたホテルです。最寄駅は三井ガーデンホテルと同じMRT忠孝新生駅です。
光華商場の他にも華山文藝園區もすぐそばで、台北の街の真ん中、利便性の高い立地です。

相鉄グランドフレッサ台北

相鉄グランドフレッサ台北は、西門町のMRT駅のすぐ上に開業したホテルです。この場所は西門町エリアの
でも最も賑やかな場所にあるので、西門町とか龍山寺を観光するにはこれ以上の立地はありません。
一階には"武蔵野の森カフェ"をテナントに入れており、このカフェもとても人気を博しています。

ソラリア西鉄ホテル西門町

ソラリア西鉄ホテルも西門町に新しくオープンしたホテルです。このホテルの立地も、とても良いですね。

新しく計画中のホテル

上記に紹介した日系の中規模ホテルの他に、欧米ブランドのホテルが現在続々と工事中です。
これは、これらのホテルブランドが、台北を大きなビジネスチャンスのある都市と認めて投資を行っているということなのでしょう。

パークハイアット&アンダーズ

現在台北駅前に建設中の雙子星大樓には、2軒のホテルブランドが開業予定です。

フォーシーズンズ・ホテル
台湾における初めてのフォーシーズンズホテルは、信義地区に2025年開業予定です。

ハイアットセントリック
ハイアットセントリックはサービスアパートメントのブランドのようですね。これは、南京東路にオープンの予定です。

インターコンチネンタル
インターコンチネンタル台北は、台北ドームのエリアに開業予定です。

ホテルの世代交代

台北では、この様に多くのホテルが既に営業を中止しています。これは、想像するに台湾の不動産価格の高騰が影響しています。ホテルとして営業を続けるのと、土地や不動産をそのまま新しい持主に売却するのを利益的に比較検討すると、売却した方が利益率が高い。それだけ、台湾での不動産価格は値上がりを続けています。ホテルの運営により利益を得るのと比べると、短期的に回収できるし利益率も高いでしょう。

それに加えて、新しいホテルの台頭による競争力の低下があります。台湾におけるこれまでのホテルが、国際的基準からすると比較的低いレベルのハードウェアしか備えていなかった。それを新しい基準にグレードアップするのはなかなか大変なことです。古い建物をだましだまし使って改修するなら、いっそのこと新しい建物にした方が良い。そう考えた場合に、オペレーターとして海外のホテルブランドを呼んできた方が、自ら汗を流してホテルをオペレーションするよりも効率が良い。自分は建物のオーナーとして家賃を稼ぐと方針を切り替えているようにも思います。

また、台北自体が観光ビジネス都市として成熟しつつあるという面もあるのでしょう。僕は台湾のジャズシーンをこの6年間観察し続けていますが、次第にたくさんの外国のミュージシャンが台湾に活躍の場を求めてやってきているように感じています。
それと同じ様に、半導体産業の隆盛に伴って台湾に来る外国のビジネスマンが増えているのでしょう。そして、様々な国際的水準のサービスを求めるようになってきている。そこに海外のホテルブランドも商機を見出しているということなのでしょう。

諸々の理由で、現在台北では新しいホテルが陸続と建設されています。ホテル運営の一角に身を置いている身分としては、激しい競争にさらされることになりますが、この様に台北が国際的なビジネス/観光都市に生まれ変わっていくのを見るのは、とても喜ばしいことです。

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