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【台湾建築雑観】設備工事(その五)

今回は、電気工事について説明します。
台湾の電気設備工事はおおよそ日本と同じなので、最初はことさら説明しなくても良いと思ったのですが、やはりいくつかは違う面があります。その部分だけピックアップして説明しておきます。

日本の電気設備工事

受電/発電設備

日本の受電/発電設備は、設計者の要望に沿って建物のどの様な位置にでも配置できます。昔は地下室に配置するのが一般的でしたが、北関東大震災の経験を経て、病院や防災上重要な公共施設、或いは河川に近いマンション等では、地上階に受電/発電設備を設ける場合も出てきています。仮に建物の地下が水没する様なことになっても、電気の重要設備に影響が出ない様な工夫がされています。

天井内配線

これは、ショッピングセンターなどの大規模な建築で電気配線を行う場合を考えます。
日本では強電に関わる電気配線はラックの中に収めますが、分電盤以降の弱電配線は殊更ラックに収める必要はなく、天井材の上に這わせたりしながら収めています。

室内電気配管

住宅ユニット内で、日本の電気配線は基本的にコンクリート躯体の中に入れることはせず、ボード仕上げ面の裏であったり、天井仕上げ材の上で処理することが多いです。コンクリート打放しであるとか、外部で外壁に取り付けるなど特殊な場合を除いて、基本的には内装工事の中で電気配線を処理することが一般的です。
これは、躯体の中に入れてしまったら、その後の付け替えや変更が困難になることなどを考慮して、できるだけ躯体の中には配線しないというのが基本方針になっています。

電気メーター

日本の住宅の電気メーターは、ガスや水道と一緒に玄関のメーターボックスに、一まとめに設置されていることがほとんどですね。

分電盤

日本の分電盤はとても小さいので、内装工事で作る下駄箱とか、物入れなどに組み込むことが多いです。これは、これらの家具工事が住宅の本体工事として行われることとも関係しています。

台湾の電気設備工事

上記に説明した内容は、台湾では工事の様子が異なるものです。

受電/発電設備

台湾の受電/配電設備は、これはほぼ地下一階に設置が決まっています。川の近くなので、地上に配置した方が安全だと提案したことがありましたが、聞き入れてはもらえませんでした。

その理由は、台湾では電気設備計画は台湾電力有限公司による審査が必要になっており、この会社の方針によって計画する必要があるからです。なので、台湾の建築師が計画する際に、施主側の要望ですとこれらの設備を地上に配置する提案を持っていっても聞き入れてもらえない場合がほとんどです。
台湾電力が何故この事にこだわっているか、その理由は定かではありません。過去その様に計画しているから、その方針を変えるつもりがないのか、彼らの工事範疇で外部の電気を施設内に持ってくるので、その場合のコストを最低限に抑えるためにその様にしているのか。それとも、また別の理由があるのかもしれません。

天井内配線

上に説明した、大規模な建物での弱電配線設備ですが、台湾ではこれを無造作に天井面に置くことは禁止されています。弱電配管であっても、きちんとしたラックに収める様に電気工事の基準で定められているとのこと。これは、日本よりも厳しい基準です。

室内電気配管

台湾の室内電気配線は、非常に多くの部分がコンクリートの中に納められています。軽量鉄骨間仕切りの場合は、もちろんその中に配線されますが、それ以外は、壁の場合も天井の場合もコンクリート躯体の中に配線されます。
これは、内装の仕上げ方が違うことが大きな理由になっていると思われます。台湾のコンクリート壁面の内装工事は、ボードを使わずモルタル下地に塗装が標準の仕上げです。ですので、電気配線をボードの裏に施工するということが出来ないのです。外壁に面した多くの壁面でそのように施工することができないので、他の選択肢がなく、コンクリート躯体の中に電気配線を施工するしかありません。

電気メーター

電気メーターの配置位置は、地下の受電設備装置に隣接した、全住戸のメーター置場になります。地下室に壁面を設けて4段程度で各住戸のメーターを設置します。
この様に設計している理由は、電気会社の検診の利便性を図るということだと思うのですが、そのために、住戸分の電気配線を個別に地階から各住戸に持っていかなくてはなりません。給水と比べると難易度は低いですが、それにしても面倒であることには変わりありません。この配線を間違って別の住戸につなげたというトラブルもあるそうです。

分電盤

台湾の住宅内装工事では、諸々の家具が設けられないことが普通です。あるのは厨房とその周りの収納くらいですね。日本でよく見られる下駄箱とか物入れはありません。ですので、分電盤を家具内に隠すということができません。
また、分電盤自体もとても大きなものです。おおよそ、幅40cm高さ60cmくらいでしょうか。これをスチールの箱状のものに作ります。

一般的な台湾の設計では、この大きな分電盤を住戸と廊下の間のコンクリート壁に埋め込む様に設置しています。壁の厚さの中に分電盤を入れるよう考えて、間仕切りの方に影響がない様にしているのでしょう。
僕の担当している案件では、コンクリート壁にこんな大きな開口を開けたのでは、遮音性能上大きな問題になると考えており、コンクリート壁面に分電盤を設けるのは禁止しています。その代わりそうなると室内の何処かに、分電盤のスペースを設けなくてはなりません。ですので、軽量鉄骨間仕切りの計画を工夫して処理をしています。

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