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【台湾の面白い建物】衛武營國家藝術文化中心(その四)

最後に、衛武營國家藝術文化中心のホワイエ空間と表演廳(小ホール)を紹介します。

ホワイエ

この施設は大屋根の下をガジュマル広場として開放しているために、共有のホワイエ空間を3階に設けています。この広大な室内空間をしろと黒のモノトーンで、シンプルにデザインしています。色彩と素材感はそのように単純ながら空間としてチープに見えないのは、曲面を多用した変化した壁面、多様なトップライト、そこここに設けられた明り取りの屋外スペースなどで、変化に富んでいるからでしょう。
素材にお金をかけなくても、十分にデザインされた空間となるという、とても良い事例だと思います。

曲面の壁面がとてもダイナミックです。
中央に明り取りの外部スペースがあります。
鋼板の穴の奥には様々な機械が置かれています。なのでこれは見た目だけではなく、ルーバーの代わりに空気の流れを処理する機能的な意味もあります。
ホールの部分では狭い空間に高い天井が計画されています。
このスペースでは天井面が三次曲面となっていました。

表演廳

表演廳の特徴は、アシンメトリーの平面形にあります。ステージを上から見るバルコニー席がステージに向かって右側にしかないのです。この巻貝の様な形の理由は、視聴者の要望に応えたからなのだそうです。この様な434人という規模のホールで音楽会のチケットを販売する際に、バルコニー席は右側からよく売れるのだそうです。それはピアノ演奏を見る際にピアニストの手元を見たいという観客が多いからと説明していました。僕もライブを見る際に常にピアニストの手元を見える席を選ぶので、その意図には納得します。しかし、それをこの様に平面計画として表現するのは、初めて見ました。計画上単純な階段式にするよりは、高付加価値を得られると判断したのでしょうね。

この片側にのみバルコニー席のある平面形が特徴的です。
吸音壁面の衣装にも変化があります。一筋縄ではいかないデザイナーですね。
右側にのみにあるバルコニー席
横方向に拡がりのある座席の計画です。
天井の衣装はどうも可動式の様に見えます。
二階席の手摺がそのまま一階まで降りていきます。

最後に

これまで、4回にわたって衛武營國家藝術文化中心の施設を紹介してきました。高雄市民の要望に沿って、世界水準を目指して計画されたホール施設です。そして、それはオランダの建築家とヨーロッパの音響/舞台設計専門家の協力を得て実現しました。それはハードの計画の面で非常にソフィストケートされた、確かに高いレベルの建築となっていると思います。

そして、ソフトの面でも衛武營は様々な試みをして、市民に親しまれる文化施設となるよう努力しているようです。MRTの衛武營で降りるとすぐの場所ですし、近くには衛武營彩繪社區という観光スポットもあります。週末には屋外のイベントもよく開かれています。
皆さんも高雄に行く機会があれば、一度この施設と公園を見に行ってみてください。きっと面白い発見があると思います。

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