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【イトログ_002】 きっかけ(2)

※この記事は2015.08.22に書かれたものです



「お店をやろう。」

コーヒーという飲み物に『作り手』の存在を感じてから自分のお店を持つまで、そう時間はかからなかった。

どこかのコーヒーショップに就職する道ではなく、最初から自分のお店として立ち上げた理由はたくさんあるけれど、一番の理由は雇われるのが性に合わなかったというのが大きいと思う。

そんな無茶苦茶な、、、と思われるかもしれないが、自分の好きなことを仕事にするということに於いて自分の好きなようにできることは僕にとってはとても重要だった。

(余談ではあるが、修行をしない独立は自力で乗り越えないといけない壁の多さに心が折れそうになるのでおすすめはしない)

もちろん実際には1から10まで好きにできるというわけではない。

それでも嗜好品という否定されない世界で自分自身の表現の場を持てたことは本当に幸運だったと思う。

お店をやると決めた当初から、僕の頭の中にはコーヒーの産地に行く目標があった。

海外経験もない、なんの繋がりもない23歳の若者が、地球の裏側まで行くにはどうすればいいのか。

僕が初めてスペシャルティコーヒーに出会った時に経験したあの衝撃を、どうすれば多くの人に与えられるのだろう。

そんなことを、初めて持った自分のお店『移動カフェ カリオモンズ珈琲』の小さな車内でずっと考えていた。

ちなみにこの頃、僕はすでに結婚していて一人の息子もいたため、一年で結果が出なければスッパリと辞めろと周りから釘をさされていた。

今、周りに同じような人間が現れたら僕も同じように言うと思う。笑

昔から追い詰められないと動けない性格だったので、僕にはこれくらいの境遇がちょうどよかったのかもしれない。

転機というのは唐突に訪れるもので、ある時お店にやってきた業者さんに自分の想いを漏らしたところ、その人が担当している他のコーヒー屋さんを紹介してくれた。

「毎年現地までコーヒーの買い付けに行っているそうですよ」

そう話しながらお店の屋号だけを教えてくれ、ご縁があるといいですねと言ってお店を出て行った。

その日の夜、さっそくお店の屋号をインターネットで調べ、がむしゃらに自分の気持ちを綴ったメールを誰が読むともわからない問い合わせフォームから送った。

数日後、丁寧な返信が届き、 今の買い付け仲間と出会うことになるのである。

− つづく

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