憧れのカスタードプリン
私とそのプリンとの初めての出逢いは、今から45年前の事になる。
改めて考えてみると、余りにも前の事過ぎて自分でも驚いてしまった。
それに、歳がバレて恥ずかしいのだが…。
ある日、
隣の同級生の友達の家に遊びに行った時の事だが、友達の部屋で遊んでいたら友達のお母さんが来て、
「プリン作るけど食べる?」と、友達に言った。
「○○ちゃんも食べる?」と聞かれたので、少し戸惑ったが「うん」と答えた。
そりゃあ食べたいですよ、何せ小学生ですから(^_^;) 現代の小学生ならプリンなんて珍しくも無いだろうが、当時の小学生にとってプリンは大好物ですから。
プリンと言っても、私の想像していたのはお馴染みのプッチンプリンとかだったのだが、友達のお母さんが「作る」と言った時は余りピンと来て無かった。直ぐにプリンが運ばれてくるだろうと思っていたのだが、なかなか出て来ない。
暫くして、友達のお母さんが
「プリン出来たよ〜」と持って来てくれたのだが、それには驚いた。
運ばれて来たのは、ナント
こんなのだった。
な、なんだこれは!
こんなプリン見た事無い?!
これは自分が知ってるプリンじゃ無い……。匂いも違うし、まったく違う!それに甘〜い、いい匂いがする。何かブツブツ穴が空いている…でも、めちゃくちゃ美味そうだ
何て言うプリンなんだこれは?
って言うか、
これはそもそもプリンなのか?!
一口食べてみた。
うわー、めちゃくちゃ美味しい。それに、このプリン温かい…??自分の知ってるプリンは、冷蔵庫で冷た〜く冷やして食べる。プリンは、冷えてるから美味しいんだ。
そう、こうゆうやつ!!
なのに、何故かこのプリンは温かい?
しかもめちゃくちゃ旨い······がっつく気持を必死に押さえ全部たべた。
すると友達のお母さんが
「○○ちゃん、こんなプリン食べた事ある?」「これはカスタードプリンって言うのよ」と言った。
なんでだろう…
何故だか、急に悲しい気持ちになった…
こんな美味いプリンを食べたのに…
何でだ…?
友達はいつもこんなプリンを作ってもらってたんだ。羨ましい…
何だか凄く惨めな気持になった
何か、悔しかった。
「そうだ!自分も家に帰って、母ちゃんに作って貰おう!!」
そして、家に帰って母親に
「カスタードプリン作って!」
と、頼んだ。
「カスタードプリン?」
「プリンなんて無いよ」
「また今度買って来てやるから」
……。
「違う!家で作るやつ!」
「買って来るやつじゃ無い!!」
母親は知らなかった…カスタードプリンなんて…
ショックだった。
自分の家は、普通のサラリーマン家庭。電子レンジなんてあるはずも無い。
おやつは、近所の駄菓子屋で買うのが当たり前で、一個1円2円の飴玉やラムネ菓子。5円あれば色んなお菓子が選べたし、10円あればチロルチョコやホームランバーだって買えた。学校が終ると真っ先に駄菓子屋さんに行き、友達と何を買ったか見せあっこするのが、何よりの楽しみだった。子供の頃の思い出と言えば、まず先に思い出すのは駄菓子屋さんだ。
カスタードプリンなんて、名前すら知らなかった……友達の家に行く迄は。
今思うに、母親には無理を言って困らせて申し訳なかったと思っている。
後から判った事だが、カスタードプリンを作るのは結構難しい。
友達の母親は普段からお菓子作りや、料理の知識と経験が豊富だったのだ。
それに、カスタードプリンを作るには電子レンジが必要だった。
友達の家には当時、既に電子レンジがあったのだ。45年前だと言うのに。
当時の電子レンジの価格は幾らだったのかは判らないが、相当高価な値段だったに違い無い。
おそらく当時の一般的な家庭には無かった筈である。
私はどうしても諦めきれなかった。
何とかして自分の家でもカスタードプリンを作れないものか?
全く同じで無くても、せめて何とかアレに似たプリンを作りたい!
そして、小学6年生の知識をフル活動させて、やっと見つけ出した答が…
コレ!
これなら、何とかあのカスタードプリンに近いモノが出来るんじゃないか…?!
まぁ所詮、小学6年生の思い付く事なんて、こんな程度だ。
でもしかし、当時の自分は確信していた。
これならきっと、アレに近いプリンが出来る筈だ!と。
それに、当時の小遣いは一日20円。これは一箱150円だったので、これが精一杯だった。
贅沢を言えば、これよりも
こっちの方が、よりカスタードプリンに近いモノが作れたとは思ったのだが、プリンミクスはお湯さえ有れば作れるけど、こっちは“牛乳で作る”と書いてある通り、牛乳が必要だ。
自分の小遣いでは、牛乳代までは無理だった。無念ではあるが、諦めるしかない…。
小遣いを貯めて近所のスーパーに行き、プリンミクスを買って作って食べてみた。
違う、まったく違う…
これはカスタードプリンじゃない??
そりゃそうだ。
少なくとも、カスタードプリンは粉をお湯で溶いて作るもんじゃ無い…
そもそも、友達の家で食べたのは
『プリン』では無く『プディング』だった。
自分が知っている、冷蔵庫で冷やして食べる、ツルっとした食感の、何ともCheapなあれがプリン。
自分が食べたかったのは、
ちょっと温かくて、表面にブツブツ穴が開いていて、カラメルソースがほんのり苦くて、甘〜い香りがする……スプーンですくった時の、“ズニュッ”とくる重厚感と口に入れた時の濃厚さ、そしてあの高級感。
それが、カスタードプディング✨
が、しかし…どうしようもない…我が家では、それを作るのは不可能だった。受け入れ難い現実に打ちのめされた…
そこで、思い付いた!
味が駄目なら、デカさで勝負だ!!
カスタードプディングは美味しいけど、高くて少ししか食べられない。美味いなぁ〜と、喜んでいる内に「もう終わりかぁ〜」と刹那なくも虚しい…。
そこで考えた。
よ〜し、それなら1箱分全部いっぺんに、ドンブリ茶碗で豪快に作ってやろう。
そして完成したのが、こんな感じ(^^)
ドーーーンッ!!
味こそはカスタードプリンの比では無いが、食べごたえの満足感なら優っている。なんとも貧乏臭いと言われるかもしれないが、自分さえ満足できればいいのだ(^_^;)
これが至福の “ ドンブリプリン ”
子供の頃、悔しさの余り考えついた苦肉の策ではあるが現在でもたまに何かあると、あの頃を思い出しながらコッソリ作って食べる時がある。
自分だけの秘密のプリン🍮🤫
自分へのご褒美に…
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