「夜はともだち」とバイシクル・レース
昭和50年代、小学生だった俺はいつからか枕元にラジオを鳴らして寝るようになった。だいたい寝付くと母親が消してくれていたようだ。
10歳とかその頃だったと思うが、TBSラジオの「生島ヒロシの夜はともだちII(セカンド)」という番組を聴いていた。子供だったから、なんとなく面白そうだからってことで聴いていたと思うが、すぐに寝ちゃうのでそんなに記憶はない。
そんな中、同番組に「チンチロリクエスト」というコーナーがあって、生島ヒロシとアシスタントの女性が、リスナーからのリクエストをもとにサイコロを振り、大きな目を出したほうの曲を流すというものだった。
ここは記憶が曖昧だが、生島ヒロシは主に洋楽のリクエスト、アシスタントの女性は歌謡曲のリクエストという勝負だったような気がする。当時すでに歌謡曲をカセットに録音したりしていたので、俺はこのコーナーが好きだった。
ある日、すでにまどろみの中で聴いていた「チンチロリクエスト」から、それまで聴いたことがない歌が聴こえてきた。
ばーいしくっ!ばーいしくっ!ばーいしくっ!♪
一気に目が覚めたのを覚えている。なんだいまのは、こんなの聴いたことがない。当時の印象でいうなら、昔のクラシック音楽の合唱(たぶんオペラを指していたのだと思う)みたいだと。すぐにこの曲の虜になった。そしてクイーンの「バイシクル・レース」という曲名もすぐに覚えた。
しかもこの曲は連日のように「チンチロリクエスト」に登場し、何度も流れた。まだ洋楽のことなんて「ダンシング・クイーン」しか知らなかったけど、ヒット曲なんだろうというのは分かった。
当時、同じクラスだったY君も「夜はともだち」を聴いていて(俺が寝るときにラジオを聴いていると言ったら、同じく聴くようになったと記憶している)、学校で「クイーンいいよね」なんて話をしたのを覚えている。
しかしそれは長くは続かなかった。「チンチロリクエスト」ではクイーンの曲が新曲に変わり(恐らく「ドント・ストップ・ミー・ナウ」)、その曲は当時の俺の興味を惹かなかった。
中学生になり、クラスメートからクイーンの『グレイテスト・ヒッツ』のLPを借りるが、当時のそれは各国で選曲が異なり、日本盤には「バイシクル・レース」は入っていなかった。だから同曲を再び聴いたのはハタチぐらいになってアルバム『ジャズ』を聴いた時だったのではないだろうか。その頃にはクイーンの素晴らしさを他の曲で散々知ってしまったから、子供の頃に受けた衝撃みたいのはもちろん無かった。
だけど当時、まどろみのなかで飛び込んできた「ばーいしくっ!」ってコーラスにびっくりしたことはいまも覚えている。そしてこの曲と生島ヒロシがどうしてもペアで思い浮かんでしまうんだよね、いまでも。
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