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ブランドと文化、そして常時接続

メディア『UNLEASH』さんの特集で、「文化」を生みだす起業術というカテゴリーがあり、その中で2019年2月に「美意識のある経営を」という記事が牧野 圭太さんによって書かれました。

以来、内容とは無関係に自分の中で

“美意識のある経営と、文化を生み出す起業術” というフレーズが自分の中で何か特別なものとして頭の中に残っていました。

それが今日「ブランド」というキーワードを軸に一気に固まってきた感じがあったので、忘れないうちに、もしくは自分の中に定着させるために、こうしてnote にまとめようと思い立ちました。

美意識とは何か?

辞書で調べながら、自分なりにこう定義できるんじゃなかろうかと落ち着いたのは「美に対する意識であり、これをもって美学を構築するもの」という表現です。

じゃあ「美学」って何なのというと、これはWantedly の仲社長の定義が好きで、「自分にとっての快パターン」を体系的にまとめたものを美学と定義したいと思います。

文化とは何か?

これも非常に多様な意味合いを持つ単語なので、文化とは?を一言で表現するのは難しいと感じていますが、私なりの答えは「選択様式」です。

助け合いの文化がある組織だね、というのであれば、みんなで助け合うということを共通認識として“選択”したからだよね、ということです。

ブランディングを再定義し続ける

ブランディングとは何か?

インターブランドジャパンの中村正道氏いわく、ブランディングの進化の変遷は4段階あり、

1.アイデンティティの時代
2.価値の時代
3.体験の時代
4.共創の時代

として進化してきたと言います。

かつて放牧している家畜に所有物であることの目印に焼印をしたことだという有名な話がありますが、まずはそのような流れからアイデンティティの確立を目指したのが最初の時代。

ブランドのスタイルやトンマナ、表現クオリティによって購買の意思決定をさせる第2フェーズ。おそらく一般の人々が認識している「ブランディング」というのはここだと思います。

そこからエコシステムとして高度に顧客とつながる第3フェーズが訪れ、そして今、顧客を含めたすべてのステークホルダーと共創するという「ブランディング 4.0」の時代にいます。

スターバックスの創り上げたブランド

ブランドを語らせれば、ありとあらゆる本の中で事例にあがる企業がスターバックスだと思います。

あえて私がここで語るようなことは何もないのですが、ひとつだけ理解の促進として、スターバックスは広告コミュニケーションとしてのブランディングをほとんどしてこなかったことに注目したいと思います。

そうではなく、店舗やコーヒーなどのリアルな体験を通して顧客と共にブランドを作り上げ、その広がりは口コミや紹介などから始まり、メディア取材や消費者によるインスタグラムを使ったUGCなどを中心にしてきました。

顧客を置き去りにした、企業からの一方通行的なメッセージ発信で顧客をコントロールして購買させる動きとはまったく別のものです。

ブランドが生まれるまでに

ここまでのスターバックスの例を見てひとつ思うのは、顧客と共に作り上げる事業のプロセスそのものがブランディングであり、そこで生まれた実体こそが「ブランド」なのでは、という仮説です。

そのためには「価値の伝播」をどのように設計するのかも大切です。

こちらのnote で書かれている4つの価値の定義づけがとても参考になると思うのですが、

これまでのマーケティングでは「機能的な価値」や感情が動く「情緒的な価値」を中心に設計してきていました。

心理的なテクニックなども織り交ぜながら、いかに「買わせるか」という方向付けがされていたように思います。

それがここへ来て、長期的にこの製品を購入することは地球にとって良いことなんじゃないかというサステナブルなものを予感されるものや、この世界の誰かのためになっているような貢献性を感じる「意味的な価値」が優位になってきています。

さらにそのストーリーの中で自分も一緒に世界を作り上げているような「物語的な価値」の提供ができている企業は、顧客に対して「買わせる」のではなく、顧客サイドが「自分で選んで買った」という誇りを持たせたものになっているのではと思います。

常時接続とコミュニティとサブスク

このあたりで、どのようにすれば「美意識のある経営と、文化を生み出す起業」が実現できるのかという考察をまとめていきたいと思います。

ここまでのお話は、顧客中心主義(カスタマーセントリシティ)に則ったお話です。

私はしばらくの間、なぜ「個の時代」から「コミュニティの時代」に急激に、しかも短期間のうちに変わってしまったのかを興味深く研究してきました。

そのひとつの要因に、情報が溢れ、機能的価値のコモディティ化が進んだ日本の中では、顧客中心主義でいることがもっともビジネス的な問題を解決する最良の手段であるという認識が広まったことにあると思っています。

方法論的にサブスクリプションのモデルが普及しましたが、その本質にあるのは顧客との「常時接続」であり、「1:1のカスタマイゼーションの自動化」だと思います。

その中でも「常時接続」の文脈においては「コミュニティ」という考え方と相性がとても良く、その形成過程において顧客は入口として機能的な価値から始まり、少しずつ体験(エクスペリエンス)を通して、やがて物語的な価値を感じる共創顧客になるわけです。

ただ、始まりは「顧客」であってはいけないと思っています。

美学から始まるブランドストーリー

私が考える、今風のブランドの作り方を簡略的にまとめるとこうなります。

1.こだわりを持つ
2.顧客と常時接続する
3.ブランドの共創が行われる

こだわりを持つためには「美意識と美学」が必要になりますし、コミュニティを持って顧客と常時接続するためには「4つの価値」を提案し続ける必要があります。

そのための顧客中心主義(カスタマー・セントリシティ)です。

もしこの活動を企業組織の単位で行うのであれば、初期の「こだわり」を全社的に共有・理解・肚落ちさせる必要があり、そこにおいてのインターナルブランディングを設計する必要があります。

ブランドがビジネス課題を解決する

「ブランド」になってしまえば、そこにおけるあらゆる付加価値によって多くのビジネス的な課題が解決すると思います。

企業単位で言えば、やはりスターバックスコーヒーが良い事例でしょうし、個人単位で考えても「ファン」と呼ばれる人をたくさんつけているカリスマたちは大きな付加価値を得ています。

しかしこれが「ブランディング」の過程において、どれだけビジネス的な課題を解決するかというと、難しい話だと思います。

ゆえに旧来のやり方が指すブランディングというのは「広告コミュニケーション」が中心であり、個別最適されすぎたメッセージの発信によってブランドそのものを壊してしまうような本末転倒なものも見られます。

ビジネス課題と直結しない、安易なイメージアップだけを目指すCMやポスターなどもいまだに多く見かけます。

美意識のある経営と、文化を生み出す働き方

スノーピークさんに代表されるように、自分たちのこだわりから、それが顧客中心主義の文脈にもマッチングするプロセスでブランドを育んできたような企業は、まさに「美意識のある経営と、文化を生み出す働き方」を体現しているのだと思います。

そのためにも、自分たちの美学にもとづいた、具体的な事実が積み上がる活動を繰り返し、それを集約させ、顧客の目に見え体感できるレベルにまで落とし込んだ表現をする、

という当たり前のことが大切になってくるのかなと思うのです。

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