春は遠い
4月。
冬物のコートをまとって外へ出る。
冷たい空気が頬をさした。
静まりかえった住宅街。
コンクリートの塀が続いている。
川沿いの道へ出ると、咲き始めた桜が青空に映える。
芝生で輪になる花見客を橋の上から見下ろす。
何か大きなニュースがあったようだ。
ごった返す駅前と、散乱する号外。
目の前に差し出されるそれを、見なかったふりをして通り過ぎる。
あなたは過去をとどめ置かない人。
今と未来を生きる人だから。
こんなものを持ち帰っても、きっと振り返って思いを馳せることなんてないでしょう。
4月。
もう少しだけ早く、色々なことに気づけばよかった。
春は遠い。
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