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橋本美穂さんセミナー

昨日は、ふなっしーやピコ太郎の通訳などもつとめられた超売れっ子通訳者の橋本美穂さんのオンラインセミナー(北海道帯広にあるジョイ・イングリッシュ・アカデミーさんという英語学校主催)に参加することができました。機会を設けていただいたジョイさんに感謝です。1時間半のセミナーでしたが、楽しく学びの多い内容で、あっという間に時間が過ぎていきました。そして、橋本さんに元気をいただけた時間でした。

通訳は言語→イメージ→言語
セミナーのどのパートも「なるほど」「なるほど」と頷きながら聴いていたのですが、中でも印象に残ったのが、通訳者の脳の働き方について語られた部分でした。それを図示すると下の図のようになるそうです。

橋本さんFacebookより

とかく通訳することを思い浮かべると、英語のある単語→日本語のある単語という流れがあって、ある言語を別の言語に置き換えるというイメージがありますが、橋本さんの頭の中では、英語が入ってくると(①)まず脳の中の「非言語地帯」にイメージとして記憶され、それを日本語でアウトプットするということが行われているのだそうです。

この図のケースでは、「会社の売上が上がって喜んでいる顔」のイメージが脳の中にできるのだそうです。ここで"big picture"を得ると方向性が決まるのかなと思って聴いていました。しかし、内容の中で間違ってはいけない部分(数字等)は補足的にメモしながら作業するとのことでした。このケースでは、前年対比(YOY=Year on Year)で20%売上が上昇し5,200億円(ドルかもしれない)になったということになります。この「イメージ」を介する部分は、以前同時通訳界の大御所である小松達也先生に直接うかがった話と共通点がありました。英語を逐語的に「え〜、この単語は日本語では何だっけ」というのが常の私の教えている学生たちにぜひ聞かせたいと思いました。

次に驚いたのは、"split attention"という部分。⑤で日本語を発すると同時に次に聴こえてくる英語を聴くという2つの作業(multitasking)をなさっているとのこと。(この部分に非常にエネルギーが要るので、元気でないとやってられないという趣旨のことも仰せで、なるほど、あの元気の理由はこれなんだと思いました)また、①と⑤が同時に終わるスピードも求められるのが同時通訳だと。私も、会社勤めの時通訳の真似事のようなことはやりましたが、さすがにこうは行きませんでした。プロは違うなと!

英語と日本語を同じ引き出しに入れる
橋本さんは、「私の中では英語も日本語も同じ引き出しの中に入っている」と言われ、そのイメージ図も見せてくださいました。このことは新鮮でした。私も含め多くの人は、頭の中で確かに日本語と英語(もっとできる人なら中国語やフランス語)をそれぞれ別の箱の中に入れているように思います。そして、自分の母語でない言葉でコミュニケーションを取るときは、たとえば英語の箱から同じような意味の言葉を引っ張り出してくるという。しかし、最初から「言葉は(日本語でも英語でもなく)言葉なんだ。一つの箱に入れておけばいいのだ」という発想。アメリカにいた時、日本人家庭に育って地元の学校に行っている子供たちの会話を聞いていた時のことを思い出しました。確かに彼らの頭の中では、英語も日本語も区別なく、それで通じ合っていたなと(私には、解読不能な部分が多々ありましたが)橋本さんが小学校時代をアメリカで過ごされた経験が、この発想には反映されているように思いました。今日から「僕もルー大柴」になるべきかなと感じました。

通訳としての信条や隠れた努力
橋本さんのお話は、そのまま今英語学習に取り組んでいる多くの学生たちや大人に聞いてもらいたいなと思いましたが、「さすがにプロ通訳だな」と思わせるプロフェッショナリズムを多く含んでいました。例えば、セミナーの冒頭部分での自己紹介の際、橋本さんは「人は心が動かなければアクションを起こさない」を信条としているとおっしゃいました。「ただ訳しているだけじゃないんですよ」とも。

ふなっしーやピコ太郎で有名な橋本さんですが、仕事の大半はビジネスだそうで、ビジネスは特に結果が求められている世界。それを出すために真剣に戦っている人が望む結果を出すための手伝いをするのが通訳の役目という言葉には、非常に納得がいきました。私も時折ビジネス系の翻訳などしますが、いつもそれほど気持ちを入れてやれているかなと、反省材料になりました。また、学者さんの通訳をする時はその人の論文を読んで自分にとっての未知語を整理し、一回ごとに単語帳と作るのだとか。勉強の連続が今の橋本さんをつくったんだなと思わせるくだりです。いい話がいっぱいでした。

橋本さんの連載「英語にないなら作っちゃえ」
朝日出版から出ているCNN English Expressという雑誌に橋本さんの人気連載があるそうです。何と読者参加型、皆さんも応募されては。次のお題は、「八方美人」とのこと(下にリンクを作りました)。正解不正解にとらわれず、日本語を自分の自由な発想で英語にして、そのアイデアを競おうとう企画だそうです。橋本さんがセミナーでも話されていた地道な言葉の蓄積の賜物かなと感じました。このほかにも、たくさんの語学を磨く(英語だけでなく日本語も磨く)ヒント満載でした。明日から早速「パクら」せていただこうと…でもとても追いつかないくらいアイデア満載でお腹一杯です。

さらに通訳としての裏話、失敗談も交えて、橋本さんのお人柄も滲み出る楽しい回でした。「この人と仕事したい!」「この人に頼みたい!」と思わせる人です。見習いたい。

連載については、ここクリック

ご縁を感謝
橋本さんと初めてお会いしたのは、サイマルインターナショナルが母体となっている通訳技能向上センター(CAIS)が主催した通訳者・翻訳者向けの金融英語セミナーの講師をつとめた際に受講いただいた際でした。その後も何回か会っていただけたような記憶が…彼女が今金融通訳を本業の一部として取組まれていると聞いて、ほんの一瞬でもそのスタート台に立ち会うことができたのかなと思って、やや誇らしく思います。今大学で教えている学生諸君の将来の成功へのスタート台に多く立ち会いたいなと感じました。

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