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「英語の話し方」(國弘正雄著)

中学校時代、英語に興味を持ちつつ、しかしこれをしっかり勉強しようとすると、何が最良の方法なんだろうと思いあぐねていた時に出会ったのが、今日紹介する國弘正雄先生の「英語の話し方」という本です。出版は、サイマル出版会というところで、通訳養成機関の先駆けであるサイマル・インターナショナルの関連会社であったと思います。

國弘先生はいわゆる同時通訳の草分け的な存在の人で、同時通訳者を養成し派遣などを行う会社の草分け的存在であるサイマル・インターナショナルという会社の創業者の一人でもあります。人類初の月面着陸を行ったアポロ11号の着陸時のテレビ中継で通訳を行った一人です。(この中継がきっかけで、同時通訳という職業が世に認知されるようになったと聞いた記憶があります)

「英語の話し方」に戻ります。どういう経緯でこの本を手に取ったかは覚えていませんが、これを読んで「これだ!」(英語では"This is it."っていう感じでしょうか)と思ったことは鮮明に覚えています。それは、「只管朗読」という言葉でした。先生によると、これは禅の「ただ座って悟りを開く」といった意味の「只管打座」をもじったもので、具体的には、英語の上達を目指したいなら、中学校の教科書を丸暗記するまで「ひたすら読め」というものでした。細かい内容は定かでないのですが、その読み回数は、何千回といったものだったと思います。

当時から、英語の学び方へのアプローチはいろいろ紹介されており、今も変わりませんが、書店の英語本コーナーには、有象無象膨大な数の教本が並んでいました。現在はもっと情報が多く、そこから自分にあった勉強法を選ぶことに迷いを感じる人は多いと思いますが、当時でもそうでした。私も迷っていました。そうした時に出会ったこの本には、「とにかく中学校の教科書を覚えるまで何度でも読め」と書いてあるのです。

「それでええんじゃ」

これが私の感想。ほっとした気持ちを表す一言だったと思います。「ただ読みさえば上手くなる」という國弘先生のメッセージは、いわば「福音」でした。國弘さんが広めた「音読」は、今や多くの英語教師が英語学習法の王道として伝える学習法ですが、その音読に出会ったのが、この本でした。この時から、私の英語学習人生が本格的に始まったように思います。人生を変えた本です。

後に、ひょんなきっかけから國弘先生に2度ほどお会いする機会に恵まれました。英語本を出そうと思っていたので、出版に関わる相談をした記憶があります。その時、聞いた話ですが、先生が最初に外国人と話した時に発した言葉は、"What is your country?"だったとか。

今これを教室でしゃべると、「お国はどちらからですか?は"What is your country?"とは言わないんだよ、正しくは"Where are you from?"だよ」と先生に訂正されそうですね。しかし、國弘少年にとっては、第二次世界大戦後、頭の捕虜収容所のイギリス人捕虜に鉄条網(かなんか)越しに投げかけたこのセンテンスが、「自分の英語が通じるんだ」と自信を与えてくれた忘れられないものだったそうです。相手からは一言、"England"(もしかしたら"Scotland"だったかもしれません(笑))とはっきりとした応えがあったとのこと(このエピソードは、國弘先生によれば、著書に何回か書いたとのことです。「英語の話し方」にもあったかもしれません。ご興味あれば調べてみてください)。

次の回は、國弘先生に影響を受けて行った勉強法について書いてみます。今大学などで教えている内容の基礎となっているものです。(続く)

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