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シン市役所:解体新書|#1「みんなの新庁舎」への想い

 こんにちは。美濃加茂市長の藤井浩人です。
#1は『「みんなの新庁舎」への想い』と題してお送りします。

 現在、美濃加茂市では、市役所新庁舎整備事業が進んでいます。
「あんたがさっさと決めなさい」
「それが、覚悟、市長の責任ってもんでしょ」
 時に、批判と期待を含んだ、こんな言葉をかけられることがあります。

 期待していただくことは大変ありがたいことですが、一つ考えていただきたいことがあります。期待をすることと任せきりにしてしまうことは同じでしょうか
 現在、新庁舎整備事業は第2回ワークショップまで進み、アンケートを実施しています。
 ここから新庁舎整備が具体的な計画へと、どんどん進んでいきます。この何十年に一度の大きな計画に、あなたにも関与してほしい。そして、誤解を恐れずに言えば「なぜ私に任せきりにしてはいけないのか」その想いについて、これまでのワークショップ会場でもお話ししてきましたが、改めてnoteを通じてお伝えしたいと思います。


1.お金のこと

 皆さんは、新庁舎整備事業に、どれだけのお金がかかるかご存じでしょうか?
 旧計画案では、初期費用が約64億円と示されました。昨今の物価上昇により、建設費用をはじめとして多くの費用が高騰しており、さらに大きな金額になる可能性が高いです。加えて、60年間の維持管理費用が約81億円(1.35億円/年)とも試算されています。国や県からの補助がないわけではありませんが、市の負担を考えれば大きな金額であることには変わりありません。以下に旧計画案の概要図を示します。


 これだけ大きな金額が必要で、次の世代に引き継ぐ60年以上使っていくもの。これらを一部の人の想いや都合だけで決めてしまっていいのでしょうか。もちろん“No”です。

2.あなたが主権者であること

 さて、「お金のかかることだから皆さんで決めましょう」と言いました。
しかし、皆さんと決めたいことは何もお金がかかることだけではありません。
 私の考える“良いまち"とは、一人ひとりが「良い未来とはどんな未来か」を真剣に考えて、一人ひとりが具体的に行動しているまちです。
 これは、【新庁舎整備事業】に限りません。
 子育て、教育、健康、福祉、地域・まちづくり、農林業・産業・経済、環境、スポーツ・芸術、防災、多文化、人づくり、都市計画などなど。市民の皆さんにとって関心の高いそれぞれのテーマでも同じことが言えます。
 もしかして、「自分が何もしなくても、何不自由なく行政サービスを受けられるまち」が“住みたいまち”になってはいないでしょうか。個人の想いを決して否定はしませんが、今一度、考えていただきたいです。
 高度経済成長期のように、給料が上がり、物が豊かになっていくことをみんなが目指した時代は終わり、社会は複雑化・多様化してきました。個人が抱える課題、思い描くビジョンはそれぞれ異なっています。そんな時代だからこそ、何でもお任せにすることなく、一人ひとりの社会参画が求められています。
 「民主主義=多数決」ではありません。大切なことは、何かを決めるときに、反対意見や少数の意見にも配慮して、みんなにとって“良い未来”になるゴールを考えて、みんなが納得できる出口を見つけることです。
 今、こうしてこのnoteを読んでいただいていることは、既に貴重な行動です。まずは興味関心を持っていただき、意思決定に参画する。“一人ひとりが主権者であること”が、一人でも多くの方に伝わることを心から望みます。

 現在、市役所では、ワークショップを有効な手法として実施しています。ワークショプに対して、「ペタペタ紙を貼って」「幼稚くさい」そんな意見も実際にはあります。
 しかし、ワークショップは多様な考えや価値観の人が意見を出し合い、課題の解決や合意形成をする上では非常に重要な手法の一つとされています。私自身も参加した際、課題によって、自分が多数派の考えである時もあれば、少数派の考えであることもありました。また、それぞれの参加者の意見を聞いているうちに、自分自身の考えが深まったり、気が付いて異なる意見へと変化したり、予想以上に学びの多い経験となりました。

「他者攻撃ではなく、他社理解を」の図

 特定の意見を他者や行政にぶつけるだけでは、平和な解決はありません。異なる意見が出されるテーマの時こそ、「市民と市民の対話」の場が必要です。どんなテーマでも、様々な意見をテーブルに出して、正確な情報を共有しながら、全体として合意ができる意見に集約していくことが大切です。時に、自分の価値観や利益に反すること、納得のいかないことがあったとしても、それぞれの立場の主張とその背景を理解し、譲り合えるかという点も大切です。
 行政としても、ただ意見を聞くだけではなくて、合意形成ができるような場をもっと創っていかなければならない時代だと思います。

3.事実・データを大切にすること

 さて、ここまで読んでいただき、意思決定に参加することの大切さをご理解いただけていたら幸いです。
 そこで質問です。あなたは意思決定をするとき何を大切にしていますか?
 「なんとなく、そんな気がする」「テレビで見た」「Aさんが××と言っている」このように、確固たる根拠もなく行動してしまうことはないでしょうか。
 例えば選挙。あなたは何を基準に選んでいますか?
 もちろん私たちには感情や直感があり、それは非常に大切な事です。しかし、ここでお伝えしたいのは、感情や直感に加えて、大きな意思決定をする時には、正確な事実やデータを知った上で判断をしてほしいということです。
 美濃加茂市が事業を行う際には、なぜその手法なのか?どのような根拠があるのか?成功例や失敗例は?など多角的に詳細な情報収集や分析を行っています。これらの情報をもとに、それぞれが意見を持ち、合意形成へと進むことで、納得や相互理解も深まります。行政は情報やデータに基づき、一方的に意思決定を行うのではなく、意志決定に必要な資料を提供し解説することが、これからの市役所の大きな役割だと思っています。

終わりに

 以上、新庁舎整備事業に対し、「もっと多くの方に関与してほしい」「なぜ私に任せきりにしてはいけないのか」を3つの視点から説明しました。

 最後になりますが、新庁舎整備事業は【建設地】【予算】に加え、私が白紙にしたことを含めた【プロセス】に対して、比較的多くの市民の皆さんの関心事になっています。現在の政策を見渡しても、これだけ多くの関心が持たれ、今後の美濃加茂市に大きく影響する事業は滅多にありません。
 この新庁舎整備事業の計画が今後どうなっていくのかと共に、どのようなプロセスで決まっていくのかも今後の美濃加茂市の未来を大きく左右する要素になると考えています。

 だからこそ、もう一度お聞きします。
「市長に任せきりにしてしまう」それで良いのでしょうか。
 もちろん、最終的には議会での議決があり、その提案責任は市長である私にあります。しかし、新庁舎整備をきっかけに、美濃加茂市が更に大きく新たな時代に歩みを進めていくためにも、市民の皆さんに、今一度、考え、議論していただき、決定の過程に関わっていただきたいと願っています。

 これまでの振り返りと、今後の進捗について、こちらのnoteを活用して、私個人として発信していきたいと思っています。

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