エッセイ 「これで今日も仕事が終わったな」 2024年1月13日

先日、新しく職場に入ってきた人が、午後2時ごろに「これで今日も仕事が終わりましたね」と笑顔で私に言った。これ以降は急かされる仕事がないので、終わったも同然だ、という意味である。

それで、私がこの仕事を始めた頃を思い出した。午前10時半に最後のトイレの便器を掃除し終えると、一人でする仕事は終わり、あとは共同でする仕事になる。その時点で「これで今日も仕事が終わったな」と思ったものである。それ以降は複数人で仕事をするので、間違える心配がない。あとは他の人のまねをしておけば良かったのである。記憶力がよろしくない私は、始めの一ヶ月は仕事を覚えるのが大変だったのだ。

2か月目に入ったころには、仕事を始めて最も忙しい1時間が終わった後の8時半の小休止の時に、「これで今日も仕事が終わったな」と思うようになった。

それから暫くしたときに、当たり前のことに気付いた。仕事が始まったら、必ず終わるのである。そのことに気付いてからは、朝の始業前に椅子に座って休んでいるときに、「これで今日も仕事が終わったな」と思うようになったのである。

それからさらに1ヶ月ほど経った時に、家を出たら必ず仕事が終わることに気付いた。家を出て仕事が終わらなかったことが今まで無かった。そのことに気付いてからは、朝、外出用の服に着替えているときに、「これで今日も仕事が終わったな」と思うようになったのである。

ではその次にどんな進展があったか。実は、気付いた時には、もう何も思わなくなっていたのである。
それを言葉化すると、こんな感じだと思う。一ヶ月先の仕事のローテーションが組まれたときに、それぞれの仕事が終わらなかったことは今まで一度もない。だから今の時点で、組まれたすべての仕事は終わっているのである。だからその都度終わったことを意識する必要が無くなったのだと思う。

毎日の仕事の始まりや終わりの意識はもちろんある。が、これから始まるのか、とか、やっと終わったな、という気持ちは全くない。ただ目の前のことを一生懸命にして、それでお終いである。気が付くと終わってしまっているのである。

そのやり方を皆に伝えたいのだが、どうもうまく伝わらないのだ。おめでたい人だな、と思われているようである。


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