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風景をつくる建築 -タイ現代建築 004-

バンコクの都心、BTS Phrom phong 駅直結のEmQuartierは床面積23万㎡の商業複合施設だ。有機的な形状をしたユニークな白亜の建築である。

この駅の周辺一帯はThe Mall Groupという財閥の"EM District"計画が進められており、The Emporium, The EmQuartier,に加え、現在施工中のThe EmSphere,が完成すると総床面積65万㎡の巨大な再開発区域となる。日本の近い面積の再開発でいえば、東京ミッドタウン約57万㎡である。とにかくデカい。画像1

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The Emporiumと The EmQuartierはBTSというバンコクの高架鉄道の駅を挟んでおり、日本のバスの自動アナウンスがあれば"お買い物に便利な駅直結のThe Emporiumと The EmQuartierはこちらでお降りください"となるであるくらい特徴的にモールが配置されている駅である。

購買意欲を喚起するショッピングモール

ショッピングモールの目的といえば、当然お客さんに来てもらってショッピングをしてもらうという事なわけで、それにはどれだけお客さんにお金を落として貰うかということに尽きる。お客さんにお金を落とさせるには購買意欲を喚起させ、日常的感覚から剥離させることが大事である。

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その点、バンコクにある高級ショッピングモールはその示唆にあふれている。巨大な吹き抜けを使ったダイナミックな空間づくりや、高級な素材をふんだんに使った店舗の内装頻繁に模様替えされるアーティストを起用したアートワークなどである。

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もちろん日本とは法令の違いがあるので(竪穴区画、層間区画の考えがない、内装制限の規定の違いなど)一概には言えないが、ダイナミックかつ躍動的な空間づくりは日本のショッピングモールに慣れた目には非常に刺激的である。その中でも、The EmQuartierはタイの中でも空間的にも挑戦的なデザインをしているショッピングモールの一つといえる。

自然と都市の融合を目指すデザイン

The EmQuartierでは、曲線を平面、立面のデザインの中に取り入れることで特徴的な外観と多様な空間を生み出している。人工物の象徴である直線、直角を避けるデザインは、有機的な形状を生み出し、人工物を自然物へと近づける試みとして受け取ることが出来る。

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有機的な形状をしているエッジ部分のボリュームが、ずれながら積層する事によって植物の居場所をつくっている。植物の居場所になっている部分は人間にとっても自然を感じられる環境になっているため、カフェやレストランの屋外テラスとして設定、利用されている。

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坂道を上り下りして辿り着くレストラン

The EmQuartier の5階から上は大きな吹き抜けをスロープがぐるぐると回るらせん状の空間になっている。空中庭園から始まり、6階から室内になり、飲食店街に入っていく。自分の目指すレストランにたどり着くには、みんな坂道を上るのだ。これがなかなか面白い。一層上のレストランくらいだと吹き抜け越しに雰囲気が見える。また、通り過ぎたレストランはすべて眼下に見える。レストラン選びが街歩きのように楽しいのである。

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自然と巧みに融和する

The EmQuartier の外部に面した空間はとにかく自然豊かだ。水、光、風、土、植物、風等自然の要素を人工物である建築との対比で見るのではなく、コントロールしつつ取り入れるという現代建築の手法に視点を置きながら建築を見ていくと行くたびに新たな発見がある。(当然膨大なメンテナンスの労力があるとは思う)

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都市と自然を同時に感じられる屋外広場

建物間には屋内外の渡り廊下が配置され、屋上から地上へとつながる屋外空間を見ながら移動空間を楽しむことができる。最上階から流れ落ちる滝と、そこからつながる川、そして河原の自然を表現したオープンスペースは歩くことが楽しい庭として、集まることで広場となるようにデザインされている。

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風景をつくる建築

The EmQuartier に来るといつの間にか結構な距離を歩いていることに気づく方も多いのではないか。いつのまにか、どこか街歩きをしているような感覚になってしまう。やはりそこには商業の刺激と、自然の癒しが適度に織り交ぜられた空間による寄与が大きいと筆者は思っている。

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The EmQuartier を歩いていると、人々が談笑したり、買い物をしたり、坂道を上ったり、そういった行為が自分から見て心地の良い風景となっていることに気づく。

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心地の良い風景を見ながら自分もその風景に取り込まれ、消費行動を喚起されているのである。結局人間は動物であり、人工物の中のみでは息苦しく感じるようにできている。タイ国内ではCOVID19でSTAYHOMEが叫ばれた中、観葉植物は今や空前のブームになっている。そういった点からも、有機物である人間は小さな有機物である自然から、商業そして都市がつながっていっている面もあると筆者は感じている。

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こういった考えが浮かんできたのには、自然を取り込むことが、商業においてもプラスになると判断しないからには、ここまで大胆に自然を取り入れたデザインはきっとしないであろうという想像からである。その判断によって面白い商業空間が見られるわけだから、感謝をしつつ新しくできるであろうThe EmSphereにも驚きの空間が現れることを祈っている。

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実際に訪れた方や、ここはこうなのでは?ここは違うのでは?等コメントいただけると喜びます。

【建築】Em Quarier : https://www.emquartier.co.th/ja/
【設計】LEESER Architecture : http://www.leeser.com/ 

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