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痕跡

 私は小学生の頃からミステリ小説にハマった。はやみねかおる、東野圭吾、伊坂幸太郎など狭く深く読みまくった。

 ミステリ小説に登場する主人公の探偵役は「痕跡」を見逃さない。指紋や血痕だけではなく、日常にある些細なことでも謎の解明へと繋げる。例えば、窓の空き具合、本の並び方、ペットボトルに残る飲み物の量。こんなことにも気づく。

 そのせいかどうかは分からないが、私は痕跡に敏感になっている。少し罪悪感のあるようなことについては出来るだけ痕跡を残さないようにしている。検索履歴は毎度消しているし、ゲームのコントローラーはいつもあるところに戻す。

 逆にやらなければならなかったことについては痕跡を残す。やったテキストには折り目をつけ、見えるように机の上に置く。オンデマンド視聴は再生だけはする。

 誰が見るわけでもないのに気にし過ぎだろうか。

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