【CC Tokyo記録2】 無報告パラダイムによる顔認識細胞の意識的知覚刺激と抑制刺激の多重化する by Janis Hesse博士
動画
経緯
背景知識
意識の神経相関 [Koch et al., 2016]
無報告パラダイム [Tsuchiya et al., 2015; Hesse and Tsao, 2020]
Foundational Questions Institute (FQXI): 2005年にMax Tegmarkらを中心に設立
内容
意識知覚はどのような神経メカニズムによって生成されるか?
がJanisの興味であり, 今回の「顔認識細胞が意識的知覚を表現するか?」を通じて, 今後意識知覚生成のメカニズムに迫りたいということでした.
意識の神経相関の研究では, 感覚刺激から意識的知覚を除去する方法として, 両眼視野闘争と呼ばれる, 右目と左目にそれぞれ別の刺激を与えると意識経験としては, どちらか一方のみが知覚されそれを報告するという課題が用いられます. (両眼視野闘争は, 100年以上の歴史がある実験ですが, いまだに用いられています.)
しかし, この方法では, 報告をするためのレベーを押すなどの報告に関連する動作も入ってしまい, 報告に関する情報なのか意識的知覚に関連する情報なのかを区別できません.
それを区別する方法として, 無報告パラダイム (no-report paradigm)があります. つまり, 感覚刺激, 報告に関する信号, 意識的知覚を分け, 意識的知覚のみのデコーディングをするのです.
Janisは, 人間の意識知覚の無報告パラダイムを利用し, 一方の画像が見えたらマークのついた位置に目線を動かすことで, どちらの画像が知覚されているのかを区別しました. さらに眼球を固定することで, できるだけ眼球運動に依存しないような情報を抽出しようとしています.
このパラダイムを更にサルに応用して, 神経活動も同時計測しました.
先行研究にあるように, 顔を認識すると反応する神経活動があることを再確認し, 特に意識的にその画像が見えている時, その神経細胞群がどのような情報含んでいるのかを注意深く解析しました.
そこで, 神経活動の解析から, 意識的知覚されている情報だけでなく, 両眼視野闘争で見えている別の画像の情報も多重に保持していることを発見しました.
現在, 人間からもさまざまな領域から神経活動を計測して, 意識知覚経験が生成されるメカニズムに迫って行く予定です.
特に意識研究では複数の理論があり, それぞれ前頭葉に意識の座があるという主張するもの(higher-order theory, global workspace theory)と, 後頭葉に存在するという理論 (integration information theory, recurrent processing theory)の実験的検証を行うのが目的としています.
詳しいトークの内容はぜひ動画を見てみてください.
議論のポイント
ここでいくつかの質問と回答を追記しています.
- 意識の座を研究するのなら, 前頭前野や頭頂皮質のような場所の方が良いのではないか?
回答: 現在の領域でも, どのようなステップで意識が生成されるのかという議論に使える. また, 今も実際にそのような実験も行っている.
- 両眼視野闘争では, 二つの画像が融合してしまうことがあり, 二つの情報のコーディングは, 刺激の不確定さみたいなものをコーディングしている可能性はないか?
回答: 事前にその調整を行うために, 刺激を小さめにした & 予備実験段階で融合が起こらないのように状況を設定した. そのような可能性は少ないとみている.
参考文献
[1] Koch, C., Massimini, M., Boly, M. et al. Neural correlates of consciousness: progress and problems. Nat Rev Neurosci 17, 307–321 (2016). https://doi.org/10.1038/nrn.2016.22
[2] Tsuchiya, N., Wilke, M., Frassle, S., and Lamme, V.A.F. No-Report Paradigms: Extracting the True Neural Correlates of Consciousness. Trends Cogn 19 (12), 757-70 (2015). https://doi.org/10.1016/j.tics.2015.10.002
[3] Hesse, J.K., and Tsao, D. A new no-report paradigm reveals that face cells encode both consciously perceived and suppressed stimuli. elife 9:e58360, (2020). https://doi.org/10.7554/eLife.58360
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