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宮迫さんの焼肉屋「牛宮城」から学ぶ、ビジネス・起業で非常に「あるある」な重要なこと

はじめに

元雨上がり決死隊の宮迫博之さんがオープンしようとしている焼肉屋、「牛宮城」を巡って、一部界隈でかなり賑わっている。
どれぐらいかというと、この牛宮城に対し、オリエンタルラジオ中田敦彦さんが多くの疑問点を切り込んだ以下の動画は、YouTubeで急上昇ランキングで1位になり、公開1日で100万再生を突破したぐらいだ。
https://www.youtube.com/watch?v=6tCqpNtpO-w
(※今見たら、公開8日で324万再生を突破している。すごい)

「牛宮城」の影響力は凄まじく、このに関する動画へのコメントを出した人の例を挙げるとすると、
・ヒカル
・堀江貴文
・ひろゆき
・青汁王子
・西野亮廣
・他多数の著名な方々(敬称略)
となる。

この牛宮城のオープンまでの流れは、宮迫博之さんのYouTubeチャンネルにて、ドキュメンタリー形式で公開されている。
他のジャンルの再生数が落ちてきてしまっている中で、この牛宮城に関する動画は再生数が高水準をキープしている。

私は、この「牛宮城」に関して、単なる「元芸能人が焼肉屋を出す」ということだけでは見ていない。
牛宮城オープンまでのドキュメンタリーが、ビジネスあるある、起業あるある、ベンチャーあるあるを見事に体現していると考えるからだ。

牛宮城は決して、順風満帆ではない。でもそれは、必ずしも宮迫さんやその周りの方々の経営手腕に問題があるとか、そうは思わない。
むしろ、経営者やオーナー、ベンチャー社長、フリーランスといった方々のほぼ全員が、同じような課題を抱え、同じような失敗をしてしまうのではないかと思っている。もちろん私もその例外ではない。
牛宮城は、奇しくも宮迫さんが焼肉より前に提供してくださっている、活きたビジネス教材と思っている。

なので、私はこの牛宮城について、これから起業したい人・している人の多くに知ってほしいし、考えてほしいと考えている。
そういった思いから、周りの友達をはじめ、色んな人に話してはきたものの、悲しいかな私の説明力の無さや、興味のない人に伝えることはそもそも無理があるということもあり、なかなか伝わっていない状況にある。
なので一度、この牛宮城について、どういったことにビジネスの価値があるか、一度noteにまとめてみることにした。
少しでも興味のある方とのみディスカッションできればいいし、考えてもらえればいいな、と思い、ここにまとめることにする。


損切りの重要性

この牛宮城は、そもそもの始まりとして、宮迫博之さんと、Youtuberのヒカルさんが共同で焼肉屋を開く、ということだった。
きっかけはドッキリで、そこからヒカルさんが1億円出資し、焼肉屋を開くという流れになった。
なので、本来であれば、今でも宮迫さん・ヒカルさんとで焼肉屋オープンまで切磋琢磨しているはずが、現状ではそうなっていない。何故かというと、ヒカルさんは既に撤退したからだ。
試食会で出された肉の品質、あとは宮迫さんの協力者(後述)への不信感などから、1億円を出資したものの、撤退を決めたことになる。

1億円という数字は、私は正直ピンときていない。ヒカルさんにとっても、さすがに「取るに足りない金額」ではないと思う。
それだけのお金を出していたら、普通は損切りなんて出来ない。これまでの出資額を考えれば、少しでも「取り戻したい」という思いが働いてしまうのが人間だ。
それでも、ヒカルさんは撤退した。これまでの金額は「勉強料」と割り切り、これ以上の金額・信頼を失わないようにした。これは本当に、並大抵の人が出来る決断ではないと思う。

一方宮迫さんは、焼肉屋を継続する事に決めた。多くの飲食店経営者やビジネスの先輩方から「撤退した方が良い」と言われていても、継続している。宮迫さん本人は、「今辞めたら地獄」ということも話している。
それが普通の感覚だろう。これまで投じた金額を考えると、意地でも取り戻したい、と思うのが普通だ。
でも私も、「撤退した方が良い」とやはり思う。いくらこれまで投じていても、これ以上損しないためにも、時には損切りが必要だ。そしてその決断は、早ければ早い方がいい。

実際のビジネスの現場でも、現状上手くいっていないことに対して、これまで投じた時間と金額を理由に「継続」してしまうことは往々にしてある。でもそれは、余計に時間をお金を浪費してしまうことにも繋がる。
日本人特有なのかは知らないが、「継続は美徳」という傾向にある。でもビジネスの世界では、それはほぼ当てはまらない。辞めることは続けることの1000倍は大変だし労力がかかる。時には損切りが必要だ。


スモールビジネスからの拡大戦略

牛宮城は、渋谷の一等地でオープン予定だ。席は約100席。家賃はなんと280万円らしい。しかも、元々2021/10月頃オープン予定が、延期され2022/03/01にオープン予定になった事から、その期間の家賃はただただ無駄となる。ざっくり計算で1500万ぐらいは損していることになる。
ちなみに「100席」の規模感だが、2022/01/24現在の食べログの「渋谷 焼肉 予約人気ランキングTOP20」の20店舗の席数を調べてみると、焼肉屋の平均席数は63.9席、もっとも多いのは「韓の台所 別邸」の140席、2番目が「牛恋 渋谷店」の100席だった。
なお「韓の台所」は6店舗のチェーン店、「牛恋」は10店舗のチェーン店だった。
そんなレベルの席数のお店を、ノウハウもない状況の個人店舗がオープンして、いきなり上手くいくだろうか?かなり無謀なんじゃないかと感じる。

多くの経営者が常々言っている「スモールビジネス」であれば、このような事は決して起きない。
街の外れ、席数も数席から10数席。そんな所から開始して、少しずつノウハウとファンを作っていく。家賃も最小限に抑える。
どれだけ準備してもトラブルは必ず起きる。そのようなトラブルを捌くために必要なことを学んでいく。
ノウハウや資金も貯めた所で、満を持して一等地に出店する。そのような戦略の方が良いのではないか。と飲食素人ながら思う。

男は時に、急に大きなことをやってしまいがちらしい。急にデカイことを言って、大きな夢を語って、誰もが目を引くようなことをやりたくなりがちらしい。でもそのような戦略は、大体の場合は破滅を生む。
自分の周りにも、かつてそのような人はいた。ノウハウのない領域で大きなことを立ち上げ、失敗し、現在数億円の借金を抱えている。
奇跡に奇跡が重なれば、たまに成功することもあるかもしれない。でも基本的には、スモールビジネスから地道に領域を広げていったほうが良い。そして上手くいかなそうな時は、さっさと損切りするのが良い。

コンセプトとターゲットの明確化

牛宮城のターゲットとコンセプトについても、よくツッコミを受けている。
牛宮城はかつて高級店をコンセプトにしていた。しかし、富豪層が「若者の街」渋谷に焼肉に行きたいかというと、多分そんな事はないだろう。そんな騒がしい街からは外れた、静かな場所で信頼できる人達と美味しい焼肉を食べたいはずだ。

そんな背景があるからか、あるタイミングから、ターゲットがリーズナブルな領域へと変更している。
しかし、それでも牛宮城には奇妙なシステムがある。それは、焼肉屋である牛宮城で、「アートを売る」ということになっている点だ。
牛宮城ではアートを飾っている。焼肉を食べながら、「あ、この絵良いな」と思ったら焼肉を買えるらしい。
でも、一般層で「アートを買いたい」と思う人なんていないし、そもそも肉の油と煙が染みているであろう絵を買いたい人なんてきっといないに違いない。(仮に、どれだけ絵が保護されていたとしても、油と煙のイメージがあるだけできっとマイナスだろう)
そしてこの方針は、お店の構造上、簡単には変更できないらしい。

こうなってしまった一番の問題は、「コンセプトとターゲットが最初に明確に決まっていなかった」という点に尽きる。誰に何を届けたいか?というのが最初に決まってから、その後に枝葉の戦略が決まっていく。こうしないと、目先の戦略や意見にどうしてもブレてしまう。
具体的に言うと、先に「渋谷の一等地」を抑え、その後に「コンセプトを高級店にしよう」と決まっていったのではないだろうか。普通は、「コンセプトを高級店」が決まり、そのコンセプトとターゲットに最適な立地や肉などが決まってくるはずだ。

ターゲットが明確である例と、そうでない例

でも、この「コンセプトとターゲット」のブレについては、往々にしてどんな現場でも発生しうる。
少し話は逸れるが、「コンセプトとターゲットが明確」な例、逆に明確でない例を出してみたい。

胸の大きい女性向けのファッションブランド「overE」というものがある。
胸の大きい方は、普通の服だと太って見えるし、かといって小さめの服にすると、今度は露出しているように見えてしまう。
そんな悩みを持っていて、困ってる女性の方のためのファッションブランドだそうだ。
このブランドのターゲットは明確だ。「胸の大きい女性」。これ一択になる。
例えばこのブランドの創始者に、自分のような男性が「そんなブランドに需要はない」「困ってる人なんていない」という事を言った所で、そんな話はスルーされだろう。
これは別に、仮にどれだけ成功している経営者の言葉であっても、その人が男性なら、ほとんど相手にされないだろう。
何故なら、その人は男性だから。ターゲットではないから。困ってないから。
創始者が意見を聞きに行くとしたら、その相手はターゲットである「胸の大きい女性」に決まってる。その方々に話を聞きに行って、その方々の意見のみが採用されるはず。ブレることは決して無い。
それだけ、「ターゲット」は重要だ。

この例は、きっと誰もが「そりゃそうだ」になるはず。ターゲットが誰もが明確だから。
でも、扱うブランドや製品が変わった途端に、この「ターゲット」は迷走する事になる。
特に私が活動しているIT業界では、このターゲット明確にせずに、悲劇を生むことも多い。なんとなくの製品を、営業が「何となくこの顧客が合ってそうだから」などと言って売り込んでいるうちに、全く合っていない顧客に売ってしまいお互いが損する。または、ターゲットでない顧客からの意見を取り入れてしまい、製品の質が下がっていく。
それだけ、ターゲットを明確にするのは重要という事だ。ターゲットが明確になれば、誰に売り込むべきか分かるし、それ以外の意見はほとんど切り捨てても良くなる。

・・・だいぶ話はそれてしまったが、どんなことをやるにしても、それだけコンセプトとターゲットはとても重要と考える。
今携わっている仕事、プロダクトなどに対し、改めて「コンセプトとターゲット」を明確にしていくことを提案したい。それは経営者・社員・アルバイト、どんな人でも必要な話だ。

共同経営の難しさ、責任の所在

これまで公開されていた牛宮城動画の内容から、牛宮城は宮迫さんがすべての責任を負い、すべての金銭を負担するように思われていた。
しかし、実際は違っていた。実際にはノーブルプロモーション株式会社の若林代表が店の持ち株の50%を占めており、宮迫さんが45%であることから、構造上は店の最終決定権は宮迫さんには無く、若林代表にあることが分かった。
更に複雑なのが、この「ノーブルプロモーション株式会社」は、宮迫さんのやりたいことを実現する会社、ということのようだ。推測だが、宮迫さんが「これをやりたい」と言ったことを、実現していくための会社ということになのだろう。

この構造が何を生むか。最終決定者の不在、そして責任の所在が不明という点になる。
「宮迫さんがやりたいようにやる会社」という構造だと、どうしても会社としての最終決定権が不透明になる。「宮迫さんが言ったから」「若林さんが決断したから」ということになってしまう。会社の成り立ちと構造上、このようになってしまうのは火を見るより明らか。

しかしこれも、一般論として「共同経営あるある」と考える。特に2~3人で共同経営を行った場合でも、最終決定が誰か?ということを明確にしないで突き進むと、こういった事例は必ず起きる。「あいつが言ったから」「俺知らないし」ということになってしまう。そして最終決定的には、離別という悲劇を生む。
そしてさらに、責任の所在を明確にしておかないと、決断の理由が他人事になる。そうなると仕事の質が大幅に低下してしまうことに繋がる。

最終決定者は誰か。そして各々の責任はなにか。それは仕事の規模が大きくなればなるほど、そして人数が増えれば増えるほど、明確にすることは大切なことだ。


売上見込の現実性と、意見を真に受けるリスク

前述の牛宮城の動画内で、中田さんが「家賃(月280万)を本当にペイできるのか」という質問に対し、若林代表は「タブレットなどに表示する広告収入で賄える。すでにそのような見込みは立っている」ということを話していた。
中田さんも、それ以上触れることはしなかった。見ていた私も、「そうなんだ」と納得していた。

しかし、それに対してひろゆきさんが、以下のような疑問を呈していた。
・仮に1日100人の客が来るとして、1ヶ月3000人が来たとして、広告主は果たしていくら出すか?
・1再生100円も行くわけもない。1000ビューで1円とかそういうレベル。YouTubeの広告でも、1再生0.2~3円や、行ってもせいぜい2円ぐらい
・3000人に300万円の広告費として、1人1000円の広告費計算。明らかに釣り合っていない
・焼肉屋側のコンサルタントは、ネット広告単価が分かっていないため、「入るって言っているから入る」と思っているのではないか
・確かに1~3ヶ月はオープンご祝儀で、高額な広告費は有り得ると思う。でもそれ以降に焼肉屋に来るのは、リピーターが主になるため、広告が意味なくなるのではないか

私は、このひろゆきさんの意見が非常に的確だと思う。焼肉屋の注文タブレットに広告なんて出ていても、間違いなく速攻でスキップする。行きたい!買いたい!なんて思うことは決して無い。下手したら好感度も下がるかもしれない。
そこに広告費を出す企業なんて、最初はともかくとして月日が経ったら間違いなく存在しない。

・・・と、今は思う。けど、「家賃はタブレット広告費で賄える」という話を聞いた時、最初は鵜呑みにしていた。
それはきっと、私だけでなく、焼肉側のコンサルタント、宮迫さん、そして中田さんもそう思ったはずだ。(もしかすると、納得していないけど、これ以上突っ込んでも仕方ないと思ったかもしれないが)

このように、「専門家の意見」をまるまる鵜呑みにしてしまうことは、やはりビジネスの現場でも非常によくある。コンサルタントの意見や部下の報告。違う分野の担当者のフィードバック。そういった言葉に対して、まるまる鵜呑みにして、自分で考えて疑問を抱くことを放棄していないか。
時には、本当に領域外のこともあるだろう。そういった事は、誰かに判断してもらうしかない。でもそれは最小限にしたい。
コンセプト、ターゲット、売上見込、報告。そういった事柄は、最終決定者が妥当性や是非を判断していくしかない。特に売上見込なんてものは、楽観的に計画を立てられやすいから尚更だ。
そしてそれは、知見が無い領域だと判断は出来ない。だからこそ、最初はスモールビジネスで、自分のやったことのある領域(もしくは、少しだけずらした領域)で経営を進めていくしか無い。


まとめ

色々書いてしまったが、私は宮迫さんやノーブルプロモーション株式会社を、中傷や嘲笑したいわけでは決して無い。仮に私が彼らの立場だとして、必ずなにか問題は起きているだろうし、判断を間違えることは多々起きているに違いない。とんでもない経験をされていると思う。挑戦は応援していきたい。
だからこそ、今回のようなドキュメンタリーを公開してくださることに、心から感謝している。我々のようなしがない経営者、ならびにこれから経営者になろうとしている人々が、まるで経営をしているような疑似体験をさせてくれる。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」という名言がある。今回の宮迫さんのドキュメンタリーは、間違いなく「経営あるある」だ。その経験を公開してくれていることを心より感謝しつつ、我々は同じような失敗を決してしないように、歴史から学んで行く必要がある。


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