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読んだはしからすぐ忘れるから!18冊目「人魚」19冊目「ことりぞ」20冊目「題のない本」21冊目「街娼」

たまたま遭遇したアンソロジー紙礫の3冊目「人魚」読了いたしました。巻頭を中原中也の「北の海」が飾り、人魚といえばこれ!といわんばかりの「赤いろうそくと人魚」が続く強烈なラインナップ。

しかし!
ワタクシ発見しました(今更!)!
オスカー・ワイルドの「漁師とかれの魂」というとんでもない作品を(今更!)!

これは非常に面白かったですねえ。人魚に恋をした若い漁師が、彼女と一緒に暮らすために自らの魂を切り離してしまい、再び一緒になることを願う魂がまるで千夜一夜物語のように一年ごとに再開した漁師に語る物語の奇妙な味わいと、途中から魂を我が体内に戻した漁師の遍歴、最後の展開もいい話で締めるようでいて何だか不思議な決着を見るところなど、本当に「奇妙な物語」だなあ!と感心しきりでした。

また、アイルランド民話の人魚(男の人魚)の話を、河童に置き換えて綴った「カッパのクー」も、何だか変な話です。アニメ「河童のクゥと夏休み」とはまったく関係はないようですが。そしてこのアンソロジーの表紙(と中の挿絵の一部)は水嶋爾保布!こないだ読んだばかりの「魔性の女挿絵集」に取り扱われていた画家でした!

皓星社の同じレーベル紙礫の「街娼」も読みました。8人の作家が描く「街娼(パンパン、オンリーなどと呼ばれた)」の出てくる(出てこない、予感させる)物語。広池秋子、長堂英吉、吉田スエ子は初めて聞いた名前(まあそんなこという前に、収録作品全部初めて読んだのだけれど)。集中一番長い長堂の「ランタナの花の咲く頃に」がじわっと面白い。そして中盤からじわじわ怖くなってラストで衝撃!の大江健三郎「人間の羊」、平熱以下の文章で淡々と綴られるも個人的に大変肌馴染みのよい、ずっと読んでいられる(読んでいたい)文章の色川武大「星の流れに」が、特に好きな作品でありました。

つづいて絵本。いいペースで読めております。京極夏彦のシリーズ妖怪えほん「ことりぞ」は、いわゆる「子取り妖怪」の絵本。ことりぞ、といういうのは島根県あたりでいわれている妖怪だそうで、子供を攫って油を取るんだそうです。これはEテレ「怖い絵本」で松本穂香さんの朗読で放送されましたね。

山科理絵さんの描く少女は妖しい色気があって良いですね。

そして安定の不穏!ゴーリーの「題のない本」は、「声に出して読みたいタイプの絵本」ですね。絵本というと読み聞かせなどが定番ですが、特にこのような意味のない言葉(オノマトペ的な)の絵本はいいです。定点観測のような絵の構図も素晴らしい!

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