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勧誘ビンゴがまた1マス……アムウェイに勧誘された思い出

大人の女性であれば、一度くらいは勧誘に悩まされたことがあるのでは?
もし揃ったからといって何の得もない「勧誘ビンゴ」があるとしたら、エステ、補正下着、宗教、保険などの錚々たる並びの中でも角に位置するのはアムウェイのマスじゃないかと思うんです。

私がアムウェイに勧誘されたのは、2016年の春のことでした。
けっこうスリリングで面白かったその経験をどう処理するか宙ぶらりんにしてきましたが、次第に、あれはもっと怒ってもよかったと思うようになりました。
最近、身近でもアムウェイに勧誘された話を聞いたので、私の経験を記録しておこうと思います。

ホームパーティーへの招待

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ホームパーティに誘われたらアムウェイだと思え――というフレーズを聞いたことがありますか?
極端に思えますが、案外そうでもないのかも。
ホームパーティーに誘ってきたのは、夫が学生時代にアルバイトしていたレストランの先輩にあたる女性Aさん。
Facebookだけで繋がっていたけど、かなり近所に住んでいることがわかってコンタクトを取ってきたとのこと。
Aさんはご夫婦でレストランを経営されていて、私も伺ってお話したことがあります。明るくて可愛らしい、感じのいい女性です。

Aさんから「寿司職人を呼んでその場で握ってもらうホームパーティーがあるんだけど、奥さんと一緒にどう?」と夫にお誘いがありました。会費制。いくらだったかな。5,000円はしなかったはず。
私たち夫婦はふたりともあまり社交的ではありません。ずいぶん迷いましたが話し合って参加することにしました。寿司に合うワインとお花を用意して、マンションの一室へ。

出迎えてくれたのは五十代くらいの女性でした。
ここでは便宜上マダムと呼びます。マダムは話上手で気さくな奥さん。お花をずいぶん喜んでくれました。
参加者はマダム、マダムの配偶者。Aさん。あとは私たちと同じ二、三十代の男女で、全部で十名ほど。中には車のディーラーもいて、(えー……お仕事大変ですね……)と思ったのをよく覚えています。

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このホームパーティーでは何も起こりませんでした。マダムが場を取りまわしてみんなに色々と質問してくれて、ふつうの飲み会よりも満足度が高かったくらい。
その場で炙ったお寿司、マダムお手製のチーズケーキ。たいへんおいしくいただいて帰りました。問題はその後です。

「エステの練習をさせてほしい」

翌週、Aさんから私に「アーティストリーって化粧品知ってる? 今度エステの仕事を始めようと思っているので、もちろん無料でいいから、練習台になってもらえない?」と連絡がありました。

(ああ、急に接近してきたのはエステの勧誘だったのか!)
内心がっかりしつつも、ハハーンなるほどね、と納得しました。
エステの客になるつもりはありませんよと伝えて、それでもいいというので再びマダムのお宅へ。
でも、なんでマダムの家なんだろう?
違和感を覚えましたが、そもそもAさんがエステの仕事をはじめたいのが離婚を考えているからってことだったので、Aさんは自宅が使えないのかな? マダムは自立の手助けをしてあげたいのかな? と勝手に納得していました。

突然目に飛び込んできた「日本アムウェイ」

前回と同じく温かく出迎えていただき、リビングへ。それは、テーブルでお茶を待つ間のことでした。
正面にあったリビングボードをなにげなく眺めていたら、突然「日本アムウェイ」の文字が目に飛び込んできたんです。
二度見です、二度見。「図解 ひと目でわかる日本アムウェイ」という本でした。

(サイバラが遊びに来た友達に「あんたアムウェイやってんの?」ってせせら笑われたって描いてた、あの……!!)
※漫画家・西原理恵子が、昔の本でアムウェイをやっていたお母さんの置いていった洗剤だかを友達に見られてそういう反応をされたと描いていた

大げさかもしれませんが、会話している相手が犯人だと気付く、ミステリーの一場面のような緊張が走りました。
いやいや。本があるだけじゃまだ決定打とは言えない。ドキドキしながら、さりげなく目の前に並べられた化粧品の裏表示を確かめて、小さな小さな「日本アムウェイ」の文字を見つけて、確信。

アムウェイは主に連鎖販売取引で家庭日用品などを販売する企業。個人がディストリビューター(現在はABOというらしい)として、紹介してくれた人のもとで商売します。マダムが「親」で、Aさんが「子」なんでしょう。Aさんの売上げの一部がマダムの懐にも入るのが、こういった商売の仕組みです。

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ホームパーティーで人を集める理由。手料理を振るまい、エステの練習の名目で友人に部屋を提供する理由。
すべて合点がいきました。

「アムウェイって知ってる?」

それからは、いつ勧誘がはじまるのか内心ワクワクして待ちました。
エステの練習が終わったあと、マダム手作りのケーキをいただいていたら、突然小さなホワイトボードを出してきました。
「人が生きる意味はなんだと思う?」「搾取される人生でいいの?」「50、60になってスーパーのパートしていたい?」「人生のステージを上げたくない?」などのゲス質問タイムを経て、とうとう――の前に、「50、60になってスーパーのパートしてたい?」のゲスさすごくないですか? Aさんがすかさず「したくないです!」と答えたとき、まじまじ顔を見てしまった。聞く方も答える方もどのツラ下げてレジ打ってもらってるんだろう。
閑話休題。とうとう来ました。

「アムウェイって知ってる?」

これが!! 噂の!! という興奮を抑えきれず「知ってます!! アムウェイやってる人に生まれてはじめて会いました!!」と食いついてしまい、少しペースを狂わせてしまったようでしたが、なかなか貴重なお話が聞けました。あとで調べて、さすがだなぁ~(褒めてない)と思ったのは、この時はっきり勧誘だと取れる言葉がなかったことです。予め目的を告げてないので勧誘したら違法なんですよね。

「ここいら(のアムウェイのディストリビューター)でアタシを知らない奴はモグリ」なんて女悪党みたいなセリフが聞けて感動したんですが、「DV夫から逃げて母娘ふたり、子供と過ごす時間を確保しながらやっていける仕事がアムウェイだった」という”理由”には、魂を売る価値があったのかもなぁ……と思ったりもして。
だからといって参加しようとはさらさら思いませんが。

はっきりした勧誘の言葉はなくとも、なんとなく漂う“待たれている”雰囲気……「よくしていただいて申し訳ないんですが、その気はないので、今日は楽しかった思い出を胸に帰りますね」と言うとマダムはスッと引いてくれました。ま、引かないと違法なんですけど。

怒っていいと思えるようになった理由

それからもfacebookやLINEで集まりのお知らせは届くものの、強引な勧誘などはありませんでした。時間と手土産代以外、私に損失があったわけではありません。いただいた食事もケーキもおいしかった。
だけどずっとモヤモヤしてて……なぜだろうと考えていたんですが、この数か月後ちょうど新しい分野の趣味ができて、新規の人間関係を作っていくうちにわかってきました。

恋愛の話でよく「ジャブを打つ」なんていいますけど、恋愛じゃなくても、人と人とが親しくなるときって好意のキャッチボールをしてますよね。
なにかの縁で出会った人に個人的に誘われたら、口にはしなくても、あなたにいい印象を持った、という好意の表明です。それに応えるのは、私も同じ! と好意を投げ返すこと。
そういう好意のキャッチボールをくりかえして人間関係を築いていく。知人から友人になる。運と相性がよければ親友と呼べる距離になれるかも。

ホームパーティに誘われたとき、やっぱりちょっと嬉しかったんですよ。数合わせかもしれないけど、私たちと会いたい、話したいと思ってくれたわけじゃないですか。
それなのに、向こうの投げた好意の皮を被った球には商売という別の目的が隠されていた。
販売員さんや美容師さんなど利用してるお店の人と親しくなることもあるでしょうけど、そういう場合は最初から商売の相手として出会ってるわけで、話が違います。
社交の社の字もわからない夫婦が顔を突き合わせて「どうする……?」「行ってみよっか? たまにはらしくないこともしてみた方がいいかも」って相談した時間とか、慣れないもんだから「ホームパーティー 手土産」でググって、わざわざ繁華街まで出て可愛いフラワーバスケットを買い、これで大丈夫かなぁってドキドキしてた私とか、哀れだし気の毒だよ。不愉快になって当然だよ!!

勧誘に気をつけて!!

というわけで、一年以上経ってやっと怒っていいことだと気づき、細々と続いていたfacebookの友達をやめ、LINEをブロックしました。遅い。

母にこの話をしたところ「アレまだあったの!?」と驚かれました。私が小さなころ社宅の奥さんから勧誘されたらしい。アムウェイだけでなく、タッパーウェアなど他の連鎖販売取引の勧誘経験談も聞きました。
私の場合は遠い繋がりだったからよかったけど、子供の人間関係のネットワークだったり、上司の奥さんに誘われたりした場合を考えると気が遠くなりますね。ほかにもこの話をしまくってたら友人から経験談が集まってきたので、昔活発だったものが一旦なりを潜め、また盛んになっているようです。

今回は抵触してなさそうだけど、連鎖販売取引の勧誘をするには最初に目的を告げなくてはいけません。嘘をつくことや威迫して困惑させるなどの不当な行為も禁止されています。違反すると業務改善指示(法第38条)や業務停止命令(法第39条)、業務禁止命令(法第39条の2)などの行政処分のほか、罰則の対象となります。困ったら消費生活センターなどに相談を。

国民生活センター ●消費ホットライン

そして、結果的に損しなくても怒っていいよ!! 「よくしていただいて申し訳ないんですが」なんて言う必要なかったな……と今でも悔やんでいます。クソが!!

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