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【ひろしまユニコーン10 STARTUP ACCELERATION 2023】挑戦者の紹介VOL.7⦅株式会社抗体医学研究所⦆

「広島から、ユニコーン企業に匹敵するような、企業価値が高く急成長する企業を10年間で10社創出する」ことを目標に掲げた「ひろしまユニコーン10」プロジェクト。このプロジェクトの一環であり、事業の急成長を伴走支援するひろしまユニコーン10  STARTUP ACCELERATION 2023に挑戦中の16社に、改めて事業の概要や今後の展望などをインタビューしました。

■株式会社抗体医学研究所 代表取締役CEO 横崎 恭之さん
「間質性肺炎などに有効な医薬品開発」

代表取締役CEO 横崎 恭之さん

プロフィール
広島県出身で、修道高校から広島大学医学部へ進学した。博士号を取得後、産業医科大学(北九州市)、カリフォルニア大学サンフランシスコ校、国立療養所広島病院(現:東広島医療センター)で呼吸器系の研究や臨床経験を積み、2003年に広島大学へ復帰。間質性肺炎や肝硬変などの「線維症」に効果のある抗体医薬の開発を進めている。支援者を集める目的で2022年に会社を設立し、翌年には大学からも離籍して創薬に打ち込む。


― 事業内容は ―
皮膚の構成に欠かせないコラーゲン・ヒアルロン酸・エラスチンといったタンパク質を作り出す「繊維芽細胞」という細胞があります。正しく働けば美肌効果や傷を修復する役割を果たす一方、過剰に活動してしまうことがあり、それが肺で起こると間質性肺炎、肝臓であれば肝硬変の原因になってしまうのです。いずれも、まだ根本的な治療法はありません。過剰な活動が起こる理由は不明ですが、繊維芽細胞の働きを抑える「中和抗体」を含む薬があれば治療効果が見込めます。当社では動物試験を経て臨床試験を開始、第2フェーズ開始前後の2027年にM&Aもしくは株式公開する計画です。そして新体制下の2035年頃に患者さんのベッドサイドに届けることを目標としています。

オフィス風景


― 他社との違い、強みは ―
多くの研究者が線維症の改善に向けた医薬品の開発に取り組んできました。しかし副作用の大きさから、人体に使える薬はまだ存在していません。当社は細胞の表面で刺激や情報を伝える役割のタンパク質「インテグリン」に着目。24種あるインテグリンのうち、繊維芽細胞に影響を与える特定の種類への抗体を作ることに成功しました。他の細胞に作用することがないので、副作用の発生を抑えられると考えています。次のステップではヒトに投与する臨床試験に備え、毒性・安全性を慎重に確かめる予定です。


― 創業のきっかけは ―
新型コロナウイルスの流行以降、ワクチン開発などが急がれたことで治験にかかる費用が高騰しており、その資金確保が最大の目的です。当社では約2億5000万円が必要と考えています。中和抗体の研究は広島大学在籍時から進めていたのですが、大学の予算でそれだけの金額を準備することは不可能。製薬会社などのスポンサーを集め、実験から創薬という一連の開発プロセスを踏むためには、法人化するしかないと判断しました。


― プログラムの参加のきっかけは ―
知り合いの研究者が広島県の取り組みを教えてくれました。それまでは、良い研究をしていれば名前が売れ、勝手に支援者が集まると思っていました。しかし実際は、自分からこうしたプログラムに手を挙げ、研究内容やその意義を知ってもらい、評価されることが重要だと知ったのです。2023年1月には広島県も協力している、ジェトロ広島のスタートアップピッチコンテストに出場。ベーシックプログラムへの採択10社の中からベスト3に選ばれ、バイオテックの中心地である米国ボストンでの研修へ参加させていただきました。


― 事業拡大により世の中にどのようなインパクトを残したいか ―
私は研究者であると共に医者なので、まずは治療の難しい病気で苦しむ人の力になりたいと思います。その先の目標としては、次の世代に研究や創薬の面白さを知ってほしいですね。日本では若い人材が研究を極めようと思っても、経済的な事情から断念するケースが多くあります。当社の抗体医薬が実用化されれば、市場規模は国内だけでも年間500億円以上、世界で見れば兆の単位になるはずです。創薬にはそれだけのポテンシャルと、高い社会貢献性があります。一方で、研究者の地位はまだまだ低いと言わざるを得ません。ビジネスとしての成功例になることで、研究者を志す人たちに夢を与え、医療のレベル向上につなげていきたいと考えています。

肺線維症治療薬のマーケット


― 編集後記 ―
画期的な医薬品の研究開発によって、治療が難しい病気の改善に挑んでいる株式会社抗体医学研究所。横崎CEOは医学の専門的な内容や自身の経験を非常に分かりやすく、時に冗談を交えながらお話ししてくださいました。カリフォルニア大学の在籍時には、後にiPS細胞の研究でノーベル賞を受ける山中伸弥さんと出会い、今も年に一度ゴルフに行く仲だそうです。線維症に悩む人は多く、その一種で国の指定難病とされる特発性の間質性肺炎に限っても国内で1万人以上の患者がいるとのこと。広島から、そうした病気を治す薬が実用化されることを期待したいですね。



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