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【ひろしまユニコーン10 STARTUP ACCELERATION 2023】挑戦者の紹介VOL.3⦅株式会社Medlarks⦆

「広島から、ユニコーン企業に匹敵するような、企業価値が高く急成長する企業を10年間で10社創出する」ことを目標に掲げた「ひろしまユニコーン10」プロジェクト。このプロジェクトの一環であり、事業の急成長を伴走支援する「ひろしまユニコーン10  STARTUP ACCELERATION 2023」に挑戦中の16社に、改めて事業の概要や今後の展望などをインタビューしました。

■株式会社Medlarks 代表取締役&Co-Founder 松浦 康之さん
「カテーテル関連尿路感染症の予防」

代表取締役&Co-Founder 松浦 康之さん

プロフィール
因島(現:尾道市)生まれで、小学生時に東広島市へ移り住む。広島大学附属高校から広島大学に進学し、総合科学部での情報科学専攻、大学院工学研究科を経てパナソニック関連企業に入社。HDDレコーダー、Blu-rayオーサリングシステム、自動車用ECUなどのソフトウエア開発に10年以上携わる。2014年の退職後はベンチャー企業設立に参加しつつ、起業や新事業創出に挑戦する人材の育成を目指す「グローバルアントレプレナー育成促進事業(EDGEプログラム)」などに参加したほか、2018年には県の支援を受けて広島大学からインドに派遣され、全インド医科大学のSchool of International Biodesignバイオデザインフェローシップに参加。1年間、デザイン思考に基づき医療現場ニーズを出発点として革新的な医療機器を開発する方法について学んだ。帰国後、広島大学と県の共同研究講座において「ひろしまバイオデザイン」プログラム実施に参画。2022年にインド人研究者と共同で現在の会社を起こしたほか、現地でも同名の会社を運営する。


― 事業内容は ―
「カテーテル関連尿路感染症(CAUTI)」を予防する機器開発です。この感染症は、入院患者などの排尿を補助するために留置される尿道カテーテル(管)と尿をためる排尿パックの接合部や、パックの排出ポートといった部分から細菌が侵入することで起こります。CAUTIでの死亡率は2%程度と高くないのですが、年間1,000万人以上が罹患する世界最多の医療関連感染と言われています。
機器の仕組みとしては、管の中へ紫外線を照射して菌を死滅させるほか、小刻みに振動することで菌の増殖を防ぐ効果を見込んでいます。既に国内特許を取得しており、完成目標は2025~26年頃。まずは日本とインドで承認を得て商品化する計画です。

カテーテル関連尿路感染症の予防機器を開発


― 他社との違い、強みは ―
既存策として尿道カテーテルに抗菌素材を使う方法があるものの、高いコストに対して効果は限定的なものでした。当社の機器は特別な技術を用いずに直接殺菌ができるので、低コストで高い効果が見込めます。途上国などに展開していくためには安価での提供が欠かせません。


 創業のきっかけは ―
インドへの渡航が大きかったと感じています。ITのイメージが強い国ですが、医療機器の開発においても他業種の技術や知見を生かす取り組みが進んでいます。バイオデザインフェローシップではチームを組んだインド人メンバーと一緒に、実際に何をするか考えました。その際、まだ具体的な解決法がなく、エンジニアとして培った技術が応用できる分野としてCAUTIに着目し、メンバーと共に調査を行い機器の開発を始めました。現在は2人体制で実用化に向け取り組んでいます。


― プログラムの参加のきっかけは ―
県が主導するプログラムには以前から縁があったので、ユニコーン10についても知っていました。昨年度の第1回も参加を検討したのですが、同じく県が協力するジェトロ広島の「ヒロシマ グローバル ユニコーン インキュベーター」事業のアドバンスドプログラムに採択されたため、重複を避ける目的でいったん断念。本年度、改めて応募させていただきました。こうした取り組みへの参加を通じて当社を広く認知してもらい、ベンチャーキャピタルなどから投資を受けて開発を加速させるほか、製造や販売のパートナー企業を探したいと思っています。

特別な技術を用いずに直接殺菌ができるのが特徴


― 事業拡大により世の中にどのようなインパクトを残したいか ―
まずはCAUTIの感染者を減らすことですね。死亡率は高くないと言っても、世界で年間約24万人が亡くなっている事実があるので、一人でも多くの命を救うのが第一です。そもそもCAUTIは、衛生面に細心の注意を払えば6~7割は防げるとされています。しかし医療の現場にはそこまでの余裕がありませんし、途上国では劣悪な環境で治療を受けるケースが多いというのが実態です。当社の機器を実用化することで、医療を受ける側と提供する側の両者に貢献していきたいと思っています。
先進国の場合、感染すると抗生物質の投与などを含め18万円以上の医療費がかかるとされています。非先進国も含めた平均が10万円としても、世界の患者数でみれば年間1兆円の負担を減らせると考えています。各国・地域で医療機器としての承認が必要となりますが、まず日本とインドでビジネスを展開し、その後、米国など他国へも順調に拡販が進めば、商品化から3~4年で100億円レベルの売り上げも夢ではありません。

社内の様子


― 編集後記 ―
世界1,000万人のCAUTI患者や、医療従事者のために研究を続ける株式会社Medlarks。CAUTIの治療には最大で2週間ほどかかることがあるそうなので、それがなくなれば社会の生産性向上にもつながります。ちなみに紫外線で管の中を殺菌するという仕組みは、他の感染症にも応用できる可能性があるそうです。松浦社長は「自分は医療のプロではないから、手を出しやすい分野を狙っただけ」と言っておられましたが、専門外だからこその着眼点や発想がビジネスにつながるのかもしれませんね。

★☆株式会社Medlarksについての参照サイト★☆
https://www.medlarks.com/ja_jp


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