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【ひろしまユニコーン10 STARTUP ACCELERATION 2023】挑戦者の紹介VOL.2⦅株式会社マテリアルゲート⦆

「広島から、ユニコーン企業に匹敵するような、企業価値が高く急成長する企業を10年間で10社創出する」ことを目標に掲げた「ひろしまユニコーン10」プロジェクト。このプロジェクトの一環であり、事業の急成長を伴走支援するひろしまユニコーン10  STARTUP ACCELERATION 2023に挑戦中の16社に、改めて事業の概要や今後の展望などをインタビューしました。

■株式会社マテリアルゲート 代表取締役 中野 佑紀さん
「素材の力で未来を創る」

代表取締役 中野 佑紀さん

プロフィール
大阪府出身で広島大学理学部化学科卒、2013年に同大学大学院理学研究科化学専攻を修了。大阪の化学メーカーに就職し、研究開発を3年間、事業部を5年半経験した。大学院時代の指導教官だった西原禎文教授と交流を続けており、2017年に西原教授らが「単分子誘電体」というコンピュータの新たなメモリ素材を開発したことに大きなビジネスチャンスを感じ、ベンチャー設立に向けて意気投合。脱サラし、2023年6月に会社を設立した。


― 事業内容は ―

新素材「単分子誘電体」の製造やライセンス供与を目指しています。単分子誘電体は、広島大学大学院の西原教授や加藤智佐都博士らを中心とする研究チームにより開発に成功し、2018年に論文発表しました。単分子誘電体は、全く新しい物理理論により単分子で強誘電体のような特性を振る舞う材料です。強誘電性とは、電圧により分極を発現し、さらに電圧をゼロにしても、分極を保持する材料のことをいいます。この方向をデジタルの0と1に対応させることでメモリなどの情報記録材料に用います。室温以上で特性が観測されることから実用化に適しています。


― 創業のきっかけは ―

子どもの頃からお絵かきやブロック、ミニ四駆の組み立てなどで遊び、創造性や物事の仕組みに対する興味が養われたように思います。小学~高校では理科の授業が楽しみで、大学時代は化学について、大学院では磁性・電気物性などを研究しました。単分子誘電体の可能性に引きつけられたのも自然な流れだったのでしょう。単分子誘電体は世界を変え得る素材です。このように真に新しい素材を世に広めることは、日本の科学技術・産業基盤の発展に大きく貢献できると考えています。これこそが我々スタートアップの使命だと考え、創業しました。


― 他社との違い、強みは ―

単分子誘電体の一番の特徴は圧倒的な微細化です。この素材のメモリ実装により、従来メモリの1,000倍近い高密度化、さらにはコンピュータ消費電力の90%近い削減に寄与することが期待できます。従来、コンピュータメモリには、高速処理は可能だが消費電力の大きな「揮発性メモリ」と、消費電力は小さいが処理速度は遅い「不揮発メモリ」がありますが、「単分子誘電体メモリ」はこれらを全て置き換えるポテンシャルを有します。今のコンピュータは、メモリ自体はもちろん、メモリとの間のデータ伝送に膨大な電力が消費されています。当社の単分子誘電体メモリを社会実装すれば、コストを抑えながら、大幅な消費電力削減が可能なコンピュータの実現が期待できます。

単分子誘電体の特徴


― プログラム参加のきっかけは ―

実は、今回の「ひろしまユニコーン10 STARTUP ACCELERATION 2023」に採択される前から、広島県庁には広島型エコシステム・イノベーション創出プログラム「Hiroshima Global Unicorn Incubator」(ジェトロ広島、広島県、CIC Tokyoが運営)などで支援していただいていました。地域として有望なスタートアップを集中支援することを目指す「J-Startup WEST」(中国経済産業局などが運営)にも採択されるなど、広島は支援環境が本当に手厚く、感謝しています。ひろしまユニコーン10では事業計画や組織的な面をブラッシュアップしたいと、参加を決めました。シード期で計1億円の資金調達を目指します。


― 事業拡大により世の中にどのようなインパクトを残したいか ―

世界的にまだ化石燃料の発電が主流の中、脱炭素の観点からもコンピュータの消費電力削減が社会課題となっています。まずはエッジAI(端末のAI)等に組み込まれる「SRAM」代替メモリとしての実績化を目指し、2030年にはメインメモリに広く使われる「DRAM」、2035年までにSDカードやUSBメモリなどの記憶媒体にまで展開を目指します。これらメモリ素材の市場は世界で約1兆円規模。ライセンス提供を含めて、将来的には全て単分子誘導体に置き換えたい。生成AIなどの新たなテクノロジーが次々と生まれていますが、それらを下支えするのが「素材」だと考えています。どんなに高機能のサービスでも、メモリのキャパシティが足りなければ使えません。素材の力で未来を創っていきます。

事業展開のロードマップ


― 編集後記 ―

「素材の力で未来を創る」という理念を持って本プログラムに臨んでいる株式会社マテリアルゲート。消費電力を90%削減できるコンピュータメモリの新素材は、従来のボトルネックを一気に解決する可能性を秘めています。米国調査会社によると、世界のパソコン出荷台数は2021年に過去最多の約3億4,900万台を記録。広島発の新たなスタンダードとして、世界展開が期待されます。中野社長は将来、さらに新しい素材を手掛ける夢をお持ちです。社名からも「素材の窓口」役を担う決意が感じられました。

★☆ 株式会社マテリアルゲートについての参照サイト ★☆
https://www.materialgate.com/


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