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「ミニミニ外国」にいらっしゃい!【RING HIROSHIMA】

「ミニミニ外国」ってなんだかかわいい名前。それは身近でコンパクトなポップアップ型の異国の街。アーチをくぐるとレストランやカフェ、銀行があって、話す言葉はすべて英語。ここで外国を疑似体験してるうちに、いつのまにか苦手な英語にも慣れていって――そんなテーマパークが広島にあったらどう思う?

医療の世界から転身した今回のチャレンジャー、起業の世界はワンダーランドだったのでしょうか?

CHALLENGER「株式会社MMGインターナショナルサービス」宮井ふみ子さん

宮井ふみ子(みやい・ふみこ)さんは以前は薬剤師。20年間安佐北区で病院薬剤師として働き、40歳すぎに広島大学病院に治験コーディネーターとして転職した。それが人生の転機となった。

新しい病院に移って、世の中がグローバル化してることを初めて知ったんです。私は中学生の時から英語が大の苦手で、それなのに英語でメールやファクスが届いて全然対応できなくて……。それで「これからの時代は英語ができないと仕事にならない」と思い、中3の息子に留学やホームステイを勧めたんです。そしたら「外国に行くのは怖い」って言われて。その「怖い」って一言がきっかけになって、「じゃあ海外に行かなくても日本の中に小さな外国の街を作ったらどうだろう? そこに行けば外国と同じ環境があって、英語を使わざるを得ない場所があれば……」って思ったんです

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん

きっかけは自身の経験であり子供の反応から。そこから宮井さんは日本国内で英語体験ができる「ミニミニ外国」事業を立ち上げることを考える。

ミニミニ外国とは、つまりテーマパークのようなもの。そこは多くの外国人が街を作って待ち構えている。パスポートを持って入国審査を通過し、ミッションをこなすとお金がもらえる。それを銀行でドルに両替し、そのお金でショップで買い物ができるのだが、その過程は常に英語で行われるのがミソ。ゲーム感覚で楽しみながら異国の生活が体験できる仕組みなのである。

アイデアが閃いた宮井さんはさっそく行動に出た。

みんなに言っても「いいね」とは言ってくれるけど誰も取り合ってくれなくて。それでも諦めずに周囲に話してたら「テーマパークは難しいけど、イベントならできるんじゃない?」ってアドバイスをもらって。それで2012年、フジグラン高陽のスペースを借りてやってみたら150人もの親子が集まってくれて大盛況だったんです

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん
パスポートを持って入国審査。海外旅行の疑似体験ができる

実際やってみたことで手応えも気付きもたくさんあった。

最初は「受け入れられるのかな?」って半信半疑だったけど、参加してくれた子供たちはみんな笑顔だし、ご両親にも感謝の言葉をいただいて。あと手伝ってくれた外国人の人がみんな楽しそうだったんです。みなさん「子供たちの歓びが自分の歓び」って感じで期待の何倍ものパフォーマンスを見せてくれて。それでもっと多くの人にこれを届けたいと思うようになりました

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん

これまでミニミニ外国として大きなイベント52回、その他のイベントを280回開催。当初はNPO法人を立ち上げ薬剤師と二足のわらじを履いていたが、「ミニミニ外国一本でやっていきたい!」という想いが強くなり2017年に「株式会社MMGインターナショナルサービス」設立。今は専業で事業に取り組んでいる。

今は事務所のあるサンモール5階で定期的にイベントをやったり、住宅展示場やショッピングセンターで開催したり。でもゆくゆくは常設のテーマパークを作りたいんです!

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん

そんな大きな夢を抱えてRINGの世界に飛び込んだ。

SECOND「株式会社ファルコン・キャピタル」立野剛超さん

 宮井さんのセコンドに付いたのは、東京で経営コンサルティング会社「株式会社ファルコン・キャピタル」を経営する立野剛超(たちの・こうき)さん。

僕は故郷が広島で。今は東京で会社をやってますが、いずれ東京と広島の2拠点生活ができればと思ってたんです。会社でやってるのはM&Aの仲介や経営コンサルティングなど。最近はスタートアップの資金調達の紹介やアドバイスもやってます

(株)ファルコン・キャピタル 立野さん

まさに経営のプロと言っていい立野さんの夢は「広島発の世界企業を創出・支援したい」。宮井さんのビジネスプランを聞いたときは何を思ったのだろう?

僕ももともと英語は得意じゃなくて。でも外資系コンサルに転職したとき、英語ができない底辺5%に入って苦労して。それで30歳すぎにアメリカに留学した経験があるんです。だから宮井さんのアイデアには共感するし、支援したいと思いましたね

(株)ファルコン・キャピタル 立野さん

立野さんにも英語で苦労した経験があったとは。

立野さん、第一印象は怖そうで(笑)。本当にボクシングのセコンドそのままのイメージ。でも厳しいことを言ってくれる人と出会わないと成長できないですからね。これまでの5年間はイベントをやってはいるけど赤字続きで、誰かのアドバイスを求めてたんです。それでHPの作り方、メールの署名の書き方といった細かい部分から経営のことまで見てもらうようになりました

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん

夢は大きいが経営は素人のチャレンジャーと、経営に関して叩き上げのセコンド。このコンビでミニミニ外国の活性化がはじまった。

小学校の英語授業に参入
実証実験として4校が採用!

そんなミニミニ外国が今回RING HIROSHIMAでトライしたのは、県内の公立小学校における実施検証だ。

今のミニミニ外国の参加者は「おりこうさん」の子供が多くて。家庭に経済的なゆとりがあって、親の意識が高い方が応募してくださるんです。でもそれだと子供たちの格差は広がっていくばかり。私も3人の子育てをして3人分の参加費を出すのが大変だということはわかりますからね。それで公立小学校の授業として提供できれば、すべての子供に体験してもらえると思ったんです。あと英語教育の義務化で大変な先生の負担を少しでも軽減できればという気持ちもありました

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん

ミニミニ外国を授業の一環として採用してもらえないかというのが今回のポイント。しかしすぐに壁にぶち当たった。

最初は広島県の教育委員会から23市町村の教育委員会、そこから459の公立小学校にミニミニ外国のことを伝達してもらって、希望校を募ろうと思っていたのですが、公立小は県の管轄ではないと聞いて絶望して……その後、HPで各市町村の教育委員会を調べて、直接連絡を取るというやり方に変えたんですけどまったく反応がなくて……最初の1~2ヶ月は何も進みませんでした

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん
ゲーム感覚で外国人とのコミュニケーションに慣れていくという仕組み

それでも2人は挫けなかった。開き直って各学校に飛び込み営業を仕掛けていくうちに次第に視界が開けてきた。

お会いして話すと校長先生とか意外とウェルカムで。「こんなすごいこと無料でやってもらえるの?」「これ6年生の最後の授業にやりたいね」ってみなさん前のめりで語ってくださるんです。しかも外国語授業の一環として、時間割を変更してまで検討してくれて。改めてここにニーズがあることがわかりました

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん

RING HIROSHIMAの事務局には「期間内に3校で実証実験を行う」と伝えてたけど、10月の中間報告時には1校も決まってなくて。チャレンジャーやセコンドの方に「お知り合いの学校があれば大至急紹介してください!」ってお願いして。だけどそこからはトントン拍子で進んでいきました。それも10年事業を続けてきた宮井さんの下積みの成果だと思います

(株)ファルコン・キャピタル 立野さん

最初こそ停滞したプロジェクトだったが、動き出してからは早かった。あまりの引き合いの多さに、当初3校だった予定を4校に増加。12月には廿日市市の平良小学校、廿日市小学校、年明けには広島市の祇園小学校、廿日市の大野学園で「授業としてのミニミニ外国」が開催される。

RINGで成功しても真の成功にはならない
大事なのはRINGを機に事業が伸びること

 これまでの活動を振り返って、2人はこう話す。

宮井ふみ子さん(左)、立野剛超さん(右)

教育委員会に電話しても電話しても跳ね付けられた時期は本当に心が折れそうで。そういうことを全部立野さんにぶちまけて、悔しさを聞いてもらってここまで来れました。本当に力になってもらったと思います

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん

僕はRINGで成功しても宮井さんの成功にはならないと思ってるんです。RINGをひとつのステップに、ミニミニ外国が事業として伸びていかないと意味がない。実証実験を終えた後は、常設に向けてのパートナー、スポンサー等のためいろんな企業を紹介していくつもりです。そこで大企業に食い物にされちゃうスタートアップも多いので、そうならないようアドバイスしていきたいですね

(株)ファルコン・キャピタル 立野さん

想いを持った情熱派チャレンジャーと、それを支える現実派セコンド。2人の組み合わせはRING HIROSHIMAが目指す理想的なコンビネーションであるように感じられる。

常設のテーマパークを作るのが宮井さんの夢!

最終目標は、広島に常設のテーマパークを作ること。そのためにRING HIROSHIMAが終わった後もみなさんからアイデアをいただきたいですし、立野さんも完全に取り込んで進んでいきたいと思ってます(笑)

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん

「国際平和文化都市」を自認する広島の中に、もうひとつの独立国=ミニミニ外国が誕生する。それはとても素敵な話だし、その日が来るのは案外遠くないかもしれない。


●EDITOR’S VOICE 取材を終えて

個人的に、たまたまサンモール上階に貼ってあるミニミニ外国のポスターを見て、「これ何だろう?」と思ってたんです。こんなテーマパーク活動が行われていたとは。なるほど、納得できました。

宮井さんの話で印象的だったのが、ミニミニ外国は子供たちのためであると共に、広島在住の外国人のためでもあるということ。

「国際平和文化都市・広島」ならではの交流を活性化!

広島には面白い外国の方がたくさんいるんです! みんな日本が好きで、広島が好きで希望を持って暮らしてるのに、いい仕事が見つからなくて帰国しちゃう人を何人も見てきて……ミニミニ外国をちゃんと事業化したいという気持ちの裏には、そういう人たちを少しでも多く雇用したいという想いもあるんです

(株)MMGインターナショナルサービス 宮井さん

国際都市を目指すには、多くの外国人が快適に働ける環境があってこそ。ミニミニ外国は広島の街の未来の在り方も問うているように思えます。

(Text by 清水浩司)

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