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モノサシは偏差値だけじゃない。受験のミカタは仮面ライダー?!【RING HIROSHIMA】

いつ経験するかは人それぞれだけど、多くの人が一度はどこかのタイミングで経験するライフイベント、THE 受験。誰もが「偏差値」という名のモノサシを突きつけられ、それに対して自分の学力を当てはめて進路を決める。というか、そのモノサシによって自分の進路が決められていく…。そんな当たり前を「おかしくない?」と斜めに見る一人の若者がいます。判断材料って偏差値のほかにもあるでしょ!と。そして、とある挑戦を引っ提げてRING HIROSHIMAにやってきました。

CHALLENGER フリーランス 松川拓馬さん

まずはこちらの調査結果を。

志望校を選ぶ基準は?中学生回答の上位5項目
偏差値:   子ども45.2%、保護者52.5%
校風・雰囲気:子ども44.7%、保護者43.6%
アクセス:  子ども34.5%、保護者45.3%
進学実績:  子ども21.7%、保護者45.3%
教育方針:  子ども21.4%、保護者32.8%

明光義塾「中学生の進路・進学に関する意識・実態調査」(2023年4月公表)より

この結果に対してモヤっているのが、この春大学を卒業したばかりの松川拓馬さん。「なんと約45%の中学生が、自身の基準よりも他人が作った基準、つまり偏差値を重視しているんですよ!」

松川拓馬さん

場所、校舎、制服などの基本情報や学科、部活、行事、校則そして先輩の声。そんな情報をいっぺんに取得できるプラットフォームがあればいいのに。そう思った松川さん、受験を意識し始める中学2年をターゲットに、中学生の6割が使うインスタグラムでの情報発信を始めました。広島市内の高校を一括比較できるのがウリ。発信は、偏差値という評価軸以外だけ。

自身の特性を考慮しない進路選択って、生産性が低くないーー?そんな問題意識の出発点には、松川さん自身の体験があります。

「高校受験と大学受験、どちらも第1志望ではなく、落ちて入った。二度の大きな受験で『評価されない』『僕には何もないのか』と1年ぐらい苦しんだ」

松川さん、大学2年で就職や教員採用試験を意識し始めたころ、キャリアコンサルタントに出会い、自分と向き合いました。「僕は他に何か秀でているものがあったのに、進学率とか偏差値でしか見ていなかった」。

学力的にこのランクの高校なら行けるからその中から選ぶ、ではなく、行きたい高校を主体的に選んでほしい。そんな思いでインスタを立ち上げました。「高校受験が中学生にとって自身の特性を見つめるきっかけになれば

思い立ったら一直線。関西の大学を卒業後、地元広島市に戻り、起業。挑戦に共走してくれるセコンドがいるRING HIROSHIMAを知りました。打ち立てた実証内容は、投稿作成の効率化・自動化、情報掲載量の増加と質の向上、そして、フォロワーの質の向上。

この挑戦に伴走するのは、めちゃ頼りになる雰囲気漂うこのお二人です。

SECOND 株式会社みらいワークス 岩本大輔さん

岩本さんは、昨年に続いて二度目の登板です。

岩本大輔さん

「昨年RING HIROSHIMAに参加しておもしろいと思ったので、またやってきました」

本業は、プロフェッショナル人材を企業の経営課題や地域の課題と結びつけて「地方副業」という形で支援するお仕事。株式会社みらいワークスで「Skill Shift」という事業の責任者をしています。「自分自身が実践者としてやってみることは、事業をやっていく上でも大切ですよね」

SECOND 安芸高田市役所 逸見寿教さん

逸見さんは、セコンド1年生。広島市の北隣にある安芸高田市の市役所職員です。松川さんとほぼ同世代の娘が一人いるお父さんでもあります。

逸見寿教さん

「子育てがある程度済んで、相談を受けることが増えています。サポートに関して自分の知らないことの勉強もあるので楽しみながらやっていきたい」

さて、松川さんのインスタ。SNSに投稿された各校の生徒たちの声を拾ったりして参考になりそうな情報をアップ。高校生のフォロワーから「実際通ってみてどうか」といった点をヒアリングしたりもします。

松川拓馬さん「たっくん」が立ち上げたインスタ@highschool_hiroshima

「ある学校がツーブロックOKというのは高校時代から知っていたんですが、生徒に聞いたら髪を染めるのもOKとか。そこまで自由なんだって驚いた」

双方向のコミュニケーションも大切に。例えば、校則のこういうところが知りたいといった希望や、学校の雰囲気はといった質問は、毎週1回土曜に質問コーナーを設け、悩みや疑問点を受け付け、ストーリーで回答しています。

「トイレに力入れすぎました!?」
「某アイドルの衣装と制服が同じ!?」

各校のトップの見出し、トガってますね〜。「すべて、僕が考えてます」で、手応えはどうなんでしょう?

「中学生や保護者の方から個別にDMをいただくことが最近多くなっていて。『投稿を見てもう1回頑張ろうと思いました』とか『子どもの見守り方がわかりました』とか。少しは役に立てているかな」

セコンドのお二人の見方はどうでしょう。

セコンドのお二人

岩本さんは「マネタイズポイントがないと趣味みたいな形で終わってしまって継続性がない。松川さん非常に勉強熱心でご自身でもいろいろ調べて行動に移していくので、しっかり事業化していける触りまで持っていければ」。

逸見さんは、学校を取り巻く現状に触れた行政マンらしいコメント。「この事業は必要性がある。行政側で言うと、少子化で廃校とか目の前にあるのに生き残る方向が見えない。この取り組みは、一般の人も見ることによって高校を再認識できる。高校同士の意識が上がり、学校の質も上がってくるんじゃないか」。

さて、懸案のマネタイズ。松川さんは、保護者専用のオープンチャットを始めました。構成をどうするか、特商法など法律周辺の問題をどうクリアするかといった観点で、セコンドの二人は適切な助言者を紹介したりしました。

松川さん「オンラインサロン感覚で、保護者の質問や不安、お金の話といった情報をプラスして発信していく。現状は月額1500円+税。最初は10人集まればいいかな」

課題の一つ、投稿の効率化はどう実現していけばいいのでしょうか。

岩本さん「中長期的には、学校からも信頼されるところに持っていく必要がある。松川さんの方から連絡せずとも、学校の方がぜひともここをPRしてくださいというところまで持ってこれたら実装しやすい」

当初は800人がフォロワー数の目標でしたが、既に9割方達成済み。1月末までに1000人を目指します。「ホーム率はずっと70%以上。この数値は50%いけばいい方。キープしつつ1000人を達成したい」と松川さん。

フォロワーは、保護者が割合として最も高く40%ほど、次いで中高生の層、そして保護者よりも少し年齢が高めの層。この内訳、松川さんも少々驚いています。「中学生が一番多いかなと思ったんですけど、子どもの進路に熱心な保護者が多い。その点が今回オープンチャットの導入でのマネタイズに繋がりました

そして、仕事を通して「人」を見つめてきた岩本さんが、本質的な指摘をします。「学生や保護者に対し、学校選びのキャリアカウンセリングを実践している人間だと認識してもらいたい。インスタ発信も大切だが、カウンセリングで一定の評価をもらえるようになるのを目指さないと」

そうですよね。受験って人生の大きな岐路。
信頼できる情報か、経験豊かな人が発信しているか。

岩本さん「マネタイズのポイントで大切なのは、学生と直接一対一、または保護者を含めてカウンセリングして、その学生の態度変容に持っていけるかが、今後の事業価値の根幹になる。実践経験は武器になるし、それがあるから発信で還元できるところも大きくなる。そこの可能性を探るのも実証実験の目標。この人が言うのなら納得できるし安心、というところに持っていきたい」

そこは、松川さんも認識しているようです。「実際に向き合って伴走して志望校を決めていくお手伝いをするため、生徒の考えの引き出し方や接し方をスキルとしてつけたい。あるいは、そういうスキルを持った人を近くに置くことが必要ですね」

「僕は仮面ライダーって言ってるんですけどね」。逸見さんはそう切り出しました。え?仮面ライダー?

イメージ画像です(笑)

「松川さんの事業は二面性がある。一つは中学生向けの、何でも教えてくれる松川さん。もう一つは、保護者向けの、信用できる松川さん。松川さんが2人いる。変身している松川さんは中学生向け、俳優の松川さんは保護者向け。松川さんが伸びていくことが大事で、それによって信用度や魅力は固まっていく」

子どもと保護者それぞれが松川さんをみて、親子で受験の話をするきっかけができるーー。逸見さんはいいます。「経験上、受験や進学について親子で仲良く話をするのは難しい。親子の会話ができて学校選びができれば、家庭環境が良くなる。一緒に松川さんの話をするようになったらいいですね」

松川さんの究極目標は、学校を作ること。通っていた頃、自分を振り返る期間が欲しかったという松川さんは、やはり学校の中にそういう場所があるべきだと考えます。「学校を自分で持って、入学した年は全員自分を見つめる期間にし、その後目標に向かって勉強していく教育がやりたい」

受験の風景を変える挑戦に取り組む3人衆!

「RING HIROSHIMAは、一人の力で立つ基盤を作る場所。キャリアがほぼない僕を、セコンドや事務局が支援してくれる。半年間で自走できる状態にしたい」

がんばれ!仮面ライダー。


EDITOR'S VOICE 取材を終えて

偏差値という名の数字をペタッと貼られ、ベルトコンベヤーに乗せられ、その数字に応じて振り分けられていくような受験。子どもたち自身がありたい姿、ひいては社会について主体的に考える機会を奪っていると思う。そんな受験の姿を広島発で変えられたら、それこそイノベーティブ・ジャパンの幕開けかも。(text by 宮崎園子)


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