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これまで食べていなかったものを乾燥させて町を想ってもらう【実装支援事業】

(株)hakkenの広島拠点(安芸高田市)にお邪魔したのは2021年夏のこと。そのときは野菜を乾燥させていました。
今回のステージは大崎下島だと聞いて、「どんな野菜を乾燥させるのかな」とか思っていた過去の私、甘いよ。

答えはサムネイルにもあるとおり、なんと雑草でした。

乾燥野菜で世界を救う

(株)hakkenが昨年D-EGGSプロジェクトで行ったのは、廃棄されてしまう野菜を乾燥させて、新たな商品開発を行う実証実験でした。

野菜の水分量を12%未満まで乾燥させることで、
・消費期限が20倍に延びる →食品ロス削減
・重さが10分の1になる →輸送にかかる燃料も削減

などメリットがたくさんあります。

広島県安芸高田市の古民家に広島オフィスを開き、同社第2の拠点として現在も地域密着で乾燥野菜プロジェクト「UNDR12」を進めています。上記記事の取材中にも、地域の方がふらりと拠点を訪れて、竹井さんと田村さんに会いに来ていたのが印象的でした。

(株)hakken 竹井淳平さん

穫れすぎる甘夏をどうにかしたい

今回、この乾燥野菜プロジェクトを実装するのは、(一社)まめな。「くらしを、自分たちの手に取り戻す。」をミッションに掲げ、 大崎下島の久比地区を中心に、農業、学育、コミュニティづくりなど、様々な分野でプロジェクトに取り組んでいます。

その中でも、「nouno《のうの》」という持続可能な農の探究拠点を作る活動に取り組む福島大悟さんと齋藤陽太さんにお話を伺いました。
農業高校出身で21歳になる同い年のおふたりです。

農業分野でなにか問題が起きても、関係者以外の人で関心が高い人は多くありません。すべての人たちに農を身近にすることを目的に、2022年2月「nouno」をスタートしました。
青果を生産して販売する行程でいちばん大変なのは、保存と運送。どちらも解決できる乾燥野菜に期待しています。

(一社)まめな 福島さん(写真左)・齋藤さん

町の名産である甘夏は、昨年も1.5トンほど収穫されました。実が美味しいのはもちろん、農薬不使用の甘夏は皮まで余すことなく利用できますが、収穫したすべてを販売する途がなく…。

昨年は、ECサイト、有機野菜の卸売業者、飲食店、無人販売、店頭販売など、考えつく限りあらゆる販売方法を試しました。
試してみていちばんのネックになったのが送料です。さらに生モノのためどうしても1~2割は傷んでしまう。それを乾燥させることで、長期保存ができ、圧倒的に軽くなるので封筒で送ることもできるようになって、販路が大きく変わってきます。

(一社)まめな 福島さん・齋藤さん

乾燥させてパウダーにすると、1㎏以内であれば日本郵便のクリックポストで発送ができるようになります。34×25×3㎝の箱に入れて、全国一律185円。1㎏の甘夏をそのまま送る場合と比べると圧倒的に安価に送ることができるのです。

大崎下島はアクセスが難しいため、観光客を誘致するという戦略では他地域に比べてかなり不利。乾燥甘夏のようなモノやコンテンツでつながりを作っておいて、ときどき訪れてもらうような、都会に住む人の「第4のふるさと」になれたらいいですよね。①育った地②長く住んだ東京③気に入ってよく訪れる観光地、その次くらい。
単に「ときどき訪れる」だけでなく、まめなと関わることで「私も大崎下島の発展に力を添えている」という気持ちになれる関わり方だと思います。

(株)hakken 竹井さん

でも甘夏は時期が合わなかった

生憎、実装支援事業の期間と甘夏の旬がずれていたため、他のものを乾燥させることになりました。それが「雑草」です。

…雑草…?

実は以前から雑草に興味があって。島内の雑草が食べられるかどうか、岡山大学の教授に調べてもらっています。意外にも昔から食べられていたり、レシピがたくさんある草もあるんですよ。
乾燥機を使った商品第1弾は、耕作放棄地や畑の雑草を使ったフレーバーティーです。

(一社)まめな 福島さん

雑草を提案されたときは驚きました(笑)が、hakkenのコンセプト「これまで食べられていなかったものを食べられるようにする」ということにも合うなと思いました。

(株)hakken 竹井さん

12月には、広島市内でフレーバーティーの試飲会も開催。乾燥させたセイタカアワダチソウ、アカメガシワ、アマチャヅルの3種をそれぞれ熱湯で淹れた試作第1号のお味はいかに。

(株)hakken田村聡さん(左)と一緒にフレーバーティーを淹れる福島さん(中央)、齋藤さん(右)

「野草みあふれる」
「苦みが残る」
「体がぽかぽかしてきたような?」
「焙煎したらどうだろう」
と、初めてのフレーバーにたくさんの感想が飛び交いました。

さらにフレーバーティーの「フレーバー」は、「雑草の香り」というだけではありません。

商品名は「問《とい》のフレーバーティー(仮称)」と名付けました。まずは「耕作放棄地味のフレーバーティー」。美味しいかまずいかではなく、そこで採れた草の香りを味わってもらうことで、テーマについて考えてもらうきっかけにしてほしいんです。
「そもそも耕作放棄地が増えることは善なのか、悪なのか」
「雑木ってお茶にすると意外に飲める」
という気づきもあるかも。
次のフレーバーティーは「おばあちゃんちの畑」味かもしれないし、「あいだす※の庭」味かもしれません。
製造過程をコラムにして、飲みながら・読みながら考えてもらえる、商品自体が媒体になるものにしていきたいです。

(一社)まめな 福島さん・齋藤さん
※あいだす:まめなの活動拠点のひとつ

大崎下島のみかんの木にたくさんからまるアマチャヅルは、漢方にもなる代物だとか。繫殖力が強い外来種として嫌われがちなセイタカアワダチソウも、原産地の北米ではハーブティーとして飲まれていて、他にも漢方や生薬に使われる草が町内にあることも分かっているそうです。

フレーバーティーや野菜を乾燥させる加工場も、なんと手作りというから驚きです。苦節およそ3ヶ月。多くの人の手を借りながらこの冬、30㎡ほどの加工場が完成しました。

大事にしていることのひとつが「できることは自分たちでする」こと。やってみたからこそ気付くことがあったり、愛着が生まれたりします。加工場は、数100㎏の甘夏を乾燥できるほどの大きい乾燥機を入れても不自由なく使いたかったので、既存の空き家を活用するのでなく新築しました。
久比の人たちもすでに乾燥機に興味津々で、「切干大根を作ってみたい」という声も聞こえています。商品づくりの合間には誰でも乾燥機を使えるようにして、新たなコミュニティの場にもなったらいいですね。

(一社)まめな 福島さん・齋藤さん

雑草フレーバーティーのその後の展望

(株)hakkenでは、乾燥野菜の商品開発にとどまらない次の展望を持っています。乾燥野菜パウダーの健康への効果を調べるため、1ヶ月間モニターに野菜パウダーを食べてもらい、栄養摂取状況を記録してもらいます。栄養状況の記録に使うのは、同じく昨年度のD-EGGSプロジェクトと、今年度の実装支援事業にも採択された(株)ユーリアの検査キットです。
((株)ユーリアも、大崎下島を舞台に実装支援事業に取り組んでいます。)

厚生労働省が定める、成人が1日に摂取する野菜の目標は350g以上。しかもそのうち緑黄色野菜が120g以上です。もしこれが野菜パウダーで補えるなら、とてもお手軽!

そしてまめなでも、次なる展開が着々と構想されています。
福原さん・齋藤さんが雑草の次に乾燥させたいものは、野菜。さらに大崎下島産の乾燥野菜定期便の販売も目論んでいます。

その根本は、久比地区に根付く独特の文化「農床《のうどこ》」にありました。少数多品目を栽培する家庭菜園のスペースがどの家にも付いていて、あっちの家では早生、こっちの家では晩生というように作物の時期をわざとずらすことで、お互いに足りない野菜を補って物々交換しているのだとか。

そしてまめなが次に考える仕掛けは、「農床のシェア」です。

その日、久比に滞在した人がクリエイティブに農業に関われる場所として、管理者のいない農床を作りたいと思っています。
水をやるのか、種をまくのか、自分で考えて決めてもらう。記録して、次の人に繋いでいく。次の人は記録を見てまた何をするか自分で決める。
そこで穫れた野菜のうち、一定の割合のみを定期便に入れます。定期便の中に入るシェア農床の野菜は、世話をする人の人数や農床の穫れ高によって変わります。穫れる野菜も、滞在者次第。
今年新しい野菜に挑戦したことや、どんな野菜がたくさん穫れたか、定期便を開くと分かってもらえます。日常的に農作業をしていない人でも、畑や農業を身近に感じてもらえる仕組みを作っていきたいです。

(一社)まめな 福島さん・齋藤さん

●EDITORS VOICE 取材を終えて

まめなには、毎週のように県内外からお客さんが訪れるそうです。そして雑草採りや加工場づくりなど作業を手伝ってくれた人もたくさんいて、自然と人を惹きつけているのだなあと感じました。hakkenの広島拠点で感じたことに似ているかもしれません。
対価とか効率とかそういうことにとらわれすぎない活動が、まめなの周りに広がっているように思います。
(Text by 小林 祐衣)

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