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都会在住クリエイターを島に呼び込み、今までにない視点で八朔の商品開発・魅力発信。因島の活性化に貢献する

Hiroshima FOOD BATON【公式】

広島県尾道市に属する因島ー。
                                    
ここは尾道市と愛媛県今治市の島々を7つの橋でつなぐ「しまなみ海道」が通る島で、尾道側から数えると2番目の島だ。戦国時代に瀬戸内海で活躍した「村上海賊(村上水軍)」の拠点があった島でもあり、「ポルノグラフィティ」の2人がバンド活動を始めた島でもある。
                        
そして、忘れてはいけないのが「因島は八朔の発祥地」ということだ。
          
そんな因島で八朔を栽培しているのが「comorebi farm(こもれびファーム)」。「僕たちは因島が抱える『八朔の危機』を解決するために、様々な視点から八朔の持つ可能性を再発見し、今まで以上に八朔の価値を高めたいと思っています」と語ってくれたのは、comorebi farmの代表である小嶋正太郎(こじま・しょうたろう)さんだ。
 
彼の言う「八朔の危機」とは、なんのことなのだろうか?「Hiroshima FOOD BATON」を通して、comorebi farmはどのようなことに取り組むのだろうか?そして、どのように地域の活性化に貢献しようとしているのか?詳しく話を聞いてみた。

comorebi farm 代表 小嶋正太郎さん
               
大学在学中にウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートにてインターンシップを経験し、顧客体験の設計方法を学ぶ。ライフスタイルメディア「TABI LABO」の編集者として従事した後、環境メディア「ELEMINIST」の副編集長に就任。フリーランス編集者として独立後、2022年1月に「comorebi farm」を立ち上げる。

comorebi farm
広島県尾道市因島にて約5,000㎡の耕作放棄地となった畑の再生利用を行いながら、八朔など柑橘の魅力を島外の人たちに届けるべく活動中。
 

農業人口に占める60歳〜99歳の割合は93.7%
どのように後継者不足問題を解決するのか?

「今、因島は農家の高齢化問題に直面しています。因島商工会議所に教えてもらった情報によれば、尾道市全体の農業人口に占める60歳〜99歳の割合は93.7%。70歳〜99歳の場合は71.5%だそうです。
  
そして、因島の農業人口は兼業農家を含んで372人。そのうち5年以内に農業を引き継ぐ後継者を確保しているのは約9.6%しかいないそうです。
  
このまま何もしなければ、島内の八朔のつくり手は減少し続け、それと同時に生産量も減少し続けることになります」。
 
2021年10月に耕作放棄地となった八朔畑を受け継いだ小嶋さんは、八朔の栽培を通して多くの柑橘農家に出会い、徐々に後継者不足・担い手不足の問題に気づき始めたという。こうした問題を簡単にまとめた言葉が「八朔の危機」だ。

小嶋さんは「島外移住者で農業未経験の僕を受け入れてくれて、優しく丁寧に栽培方法を教えてくれる農家さんたちに、ちゃんと恩返しをしたいんです」と自身の原動力について語りつつ、どのように「八朔の危機」を解決しようとしているのかを教えてくれた。
 
「農業人口が増えない理由のひとつは、多くの人が『農家は儲からない』というイメージを持ってしまっていることにあります。これは的を得ていると思いますし、否定する気もありません。でも、農業の始め方や耕作する面積、農作物の売り方を変えれば、農業に対するイメージも変わるはずです。
 
comorebi farmの場合は耕作放棄地となった柑橘畑を受け継いだことで、苗木から育てるよりも数年早く収穫ができています。耕作面積は島内平均のおよそ半分で、やらなければいけないことが少ないので、しっかりと八朔の売り方について戦略を練る時間が確保できています。
 
つまり、新しい就農モデルをつくり上げられれば、僕は農業でも稼げるようになり、農業人口が増えると考えています」。
 
彼は既存の農業におけるビジネスモデルが「大量に農作物を栽培しなければ儲からない仕組みになってしまっている」とも指摘。そして、小嶋さんは頭の中に思い描いてるアイディアを現実にするために、Hiroshima FOOD BATONを通して、農家民宿の開業とコミュニティの形成に着手する予定だ。

農家民宿は都市在住クリエイターと農業をつなぐ媒体
どのようにクリエイターを集客するのか?

農業人口を増やす上で、なぜ農家民宿の開業が必要になってくるのだろうか?小嶋さんはこう語る。
 
「もし誰かに農家になってもらおうと思ったら、農家の話を聞きつつ、農家の暮らしを体験してみることが一番良いと考えています。なので、農家民宿は就農希望者と農業をつなぐ媒体のように機能させる予定です。
 
でも、それだけでは間口が狭すぎます。就農希望者だけをターゲットにしても、そこまで母数が大きいわけではないので、あまり大きな変化は起こせません。 
 
そのためcomorebi farmが開業する農家民宿は、自然豊かな場所で暮らすことに憧れている人をターゲットにする予定です。そして、僕たちのように兼業農家として就農する方法があると知ってもらいたいと考えています」。
 
小嶋さん率いるcomorebi farmに関わっているのは、彼を含めて合計4人。その4人は編集者、ブランドディレクター、デザイナー、ビデオグラファーとしてリモートワークで生計を立てながら、因島で柑橘栽培をおこなっている。全員が兼業農家なのだ。
 
「まとめると、農家民宿のターゲットは、自然豊かな場所で暮らすことに憧れを持っている都会在住のクリエイターです。クリエイティブ職に就いている人たちはリモートワークがしやすいので、移住のハードルもあまり高くありません」。
 
ここまで言い切れる理由として、彼は「comorebi farmに関わっている4人が東京から因島へと移住してきているから」と語る。では、都会在住のクリエイターに兼業農家としての暮らしをアピールするために、どのような工夫を凝らす予定なのだろうか?

「まず、一番大切になるのはファームツアーです。畑を回りながら『草刈りをしながらアイディアを考えたりしてます』『農家になって農業系メディアから仕事の依頼が来るようになりました』など、編集者と農家の相乗効果についても話すこともあります。これまで都会在住のクリエイターを30人ほど柑橘畑に案内しましたが、かなり反応が良いです。
 
あと、クリエイターの人たちは農業を通して自分のブランドづくり・商品づくりのチャンスを得られることにかなり興味を示すので、農家民宿では商品アイディアについてブレインストーミングするワークショップも開催したいと考えています」。
 
他にも農家民宿に泊まった人同士が打ち解けあえるホームパーティーも開催予定とのこと。小嶋さんは、こうして農業に関わるクリエイターのコミュニティを形成しつつ、その中から就農希望者を見つけ、農業人口を増やそうとしているようだ。
 
そうなると気になるのは、どのように都会在住のクリエイターに農家民宿の存在を知ってもらうのか?小嶋さんはこう答える。
 
「僕はもともとメディア業界でWEB編集者として働いていました。過去の仕事のつながりを活かし、都会在住のクリエイターをオーディエンス(読者/視聴者)として抱えているメディアにアプローチをしていきたいと考えています。
 
また、comorebi farmに関わっているメンバーの1人はブランディングディレクターとして活躍しています。その知見を活かし、comorebi farmと農家民宿のブランディングに力を入れ、少しでも多くのメディア関係者に注目してもらえるように努力していきます」。
 
「最初からブランディングにはこだわっていた」と語る小嶋さんは、comorebi farmの代表として、2006年に創刊した非営利の環境メディア『greenz.jp』から取材を受けたようだ。

その記事は、2022年10月6日、同メディアにて<荒れ放題の柑橘畑が導いたのは、一生続けていきたい仕事だった。編集業と農家の掛け算で、心地よい生業をつくる「comorebi farm」>という記事タイトルで公開されている。


因島には非常に多くの耕作放棄地がある
どのように地域の活性化に貢献するのか?

最後に気になるのは、農家民宿の開業とコミュニティの形成によって理想的に農業人口が増加した場合に、どのようなことが地域に起きるのかという変化について。自身の体験をもとに、小嶋さんはこう予測する。
 
「comorebi farmは耕作放棄地を再生させ運営を始めたことによって、わずかながらも耕作放棄地の減少に貢献しました。僕たちの農業の始め方を広め、農業人口が少しでも増えれば、その分だけ耕作放棄地を減らすことができます」。
 
彼は「因島には非常に多くの耕作放棄地があり、その一部は蘇らせることができ、再び柑橘農園として運営を始められる」とも話している。他にも変化はあるのだろうか?
 
「八朔を使用した幅広いラインナップの加工品を生み出し、それらの商品の需要が思い通りに高まれば、comorebi farmでは八朔の生産量が追いつかなくなります。そうなった場合は、島内の農家さんから八朔を買い取りさせていただく予定です。
 
comorebi farmをきっかけに就農した人と一緒に、このようなポジティブな効果を出せたら非常に嬉しいなと思っています」。
 
ちなみに、彼は市場平均の+200%で八朔を買い取れるように、加工品の価値を上げる施策を計画しているとのこと。

そして、最後に小嶋さんはこう話す。
 
「農家民宿を通して、多くの人に会ううちに『1年は島で暮らせないけど、柑橘農園は運営してみたい』という意見が出てくると予測しています。そういった需要に応えるために、提携してくださる農家さんを集め、定期的に畑を管理する有償のお仕事をお願いできたらいいなと思っています。
 
一定期間、信頼できる農家さんに畑の管理を依頼できるのであれば、就農したいと思う人も多くなるはずです。一方、これが実現できれば、雇用創出にもつながります。comorebi farmはこのようにして因島の活性化に貢献したいと考えています」。
 
耕作放棄地が減少し、農業人口が増えた島は、いったいどのような雰囲気になるのだろうか?また、何が大きく変わるのだろうか?comorebi farmの取り組みは、定期的に注目したいものだ。
 
ちなみに、彼は「こうした考えに共感し一緒に活動してくれる仲間が増えたら、新しい方法で課題解決を思いつけるかもしれないし、より大きなインパクトを出せるかもしれないので、常に仲間は募集しています」とも話していた。