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片渕監督が被服支廠で語ったこと

12/23、映画『この世界の片隅に』の片渕須直監督が被服支廠を歩かれました。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191223/amp/k10012225351000.html


キャンペーンメンバーの瀬戸も見学に同行させていただきました。
ご本人に許可をいただき、そのときのお話をみなさんにも共有します。


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(外壁側をぐるりと端から端まで歩きながら)

次の世代、もっと後の世代にとって本当に意味のあるものになってくるんじゃないかと思うんです。近くに住んでいてもどんな建物なのか知らなかったという話もありましたが、単純に、意味を伝えるって努力をするべきだと思う。歴史ってどんどん消えていってしまうけど、少しでもそこに残って、意識の上に置いたまま生きていけるように。そのために大事なものだと思います。」

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(建物を見上げて)
この大きさだけでも物語るものがありますよね
 南側の窓を見ると(曲がったりはしていなくて)、西側の窓が爆風の影響を受けていたのがすごくよくわかる。こちらが残っているからこそ、あちら側も意味をより持つようになりますよね。(原爆投下直後に)周りに何もなくなった時に、ここにだけ救いがあるというのも、この大きさで残っていて初めてイメージできる感覚。」

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(敷地内に入って建物前でインタビュー)
<被服支廠に来たいと思った理由>
「昔のもの、特に戦争中のものが消えていくのを幾つも幾つも目の当たりにしてきたものですから。ここにまたそういうものがあって、それが今危うい状態というのが、なんとかして守れないのかなと言う気持ちがありました。
僕らが映像で戦争中ってこんなでしたよ、戦争前ってこんなでしたよ、って語ることはできるんですけど、僕らは限界を知っていて、僕らがつくったものは触れないんですよ。
だからできるだけレストハウスとか、呉の下士官兵集会所とか、昔あった(そして今も建物が残っている)ものをできるだけ画面の中に出そうとするんですけど、そうすればそこにあった時代をみなさんが触る、触って感じとり直すことができる。触れるということが映画の中では全然語りきれないような大きなものだ、というような思いがあったからなんです。」

「そういう意味でも、昔のものがそのまま残っているということは、そこに本当に大きな情報量というか、無限の情報量があるんだと思うわけです。
僕は別のところでは飛行機のことも調べていて、戦争中の飛行機一つ残っていて、すごくきれいに修理して保存したいとおっしゃっていた方もいて、それはやめていただいて、そのままの形で展示してください、って。そのままの形で展示すると飛行機のリベットがここは綺麗に打ってあるけどここは乱れてて、いろんな工員さんたちの手が、ひょっとしたら女学生たちまで含めた、いろんな人の手がそこに加わっていたことがわかるわけです。飛行機の形が大事なんじゃなくて、そこに関わってらっしゃった人がどうやってそのものに関わっていたかが大事なんです。」

「それと同じで…同じかわかんないですけど…ここは被服支廠はただ建物があるというだけじゃなくて、大きいですよね。すごく大きい。この大きさ全体見ても、当時の日本の陸軍ってどんなものだったかっていうのをなんか考える一つのよすがになりますし。」

「それから原爆が落ちた直後にたくさんの方が、負傷した方が歩いて来られて、ここへ行けば救いがあると思って。歩いてこられたんだとしたら、その気持ちとかって、どういう風に我々は汲み取るんだと思った時に。建物を見ながらそういう話を聞くと、すごく生々しく理解できるような気がするんですよ。臥せっている方とか、こんな様子で歩いてこられた方がとか、なんか目の前に目の当たりにできるような気がして。」

「そういうものが歴史的な遺産なんじゃないかなと思うんですよね。だから綺麗にするとかそういう以前に、このままでいいから保存されたい。綺麗にして再利用というのはそれも僕は違うと思っていて。さらに言うと、戦後にどう使われてきた(学校、倉庫、寮として使われてきた)とか、それも全部含めて広島の歴史だと思います。」


<大部分を解体するという広島県の方針について>
「なぜ壊す必要があるのかそのものがわからないですよね。どれか一つを残すじゃなくて、どれか一つでも壊すことの意味がわからない。」

「ここにこんなにちゃんと残っているものが、これは僕らだけじゃなくて、僕らより先の人たちが必要としているものなんじゃないかなと思うんです。もしこれが原爆の生き証人としてのものだとしたら、それは広島県とか、だけじゃなくて人類全体で考えていかないといけない。将来的にはいろんな国の人たちがそういう場所だったんだと思って見に来るべき、そういう場所として残されないといけないと思う。」

「費用の話は、県とか国とかがちゃんと支出するべきだと思います。もしそれでもできないというならば、これは地球上の人みんなに必要なものだと思いますから、みんなから募れば良いと思いますし。仮にですけどね。もし本当にでないなら、です。でもそれは(県や国が)出してほしいと思います。
でもみんなでこれを守っていかないとということになれば、たくさんの人が協力してくれると思います。」


<建物を目の前に想像したこと>
「この大きな鉄の扉があって、窓に全部ついてて、これ全部開け閉めしてたんですよね、人の手で。その人たちがここにいる姿を想像できるじゃないですか。たくさんの人がここにいて。今これは本当に一見みると廃墟のような形になってしまっていますけど、そこに立つことができるならば、そこにいた人たちを想像できるんじゃないかと思うんですよね。」

「ここは”僕らのもの”ですらないかもしれない。未来の人たちのものでもありますよ。と思います。僕らはたまたま戦後七十何年経ってここにいるけど、戦後100年経ってここにいる人もいるかもしれないし、200年経ってここにいる人たちもいるかもしれない。75年の人たちが壊しちゃったから見れない、ってことになっちゃうわけです。

「やはり、歴史的なものの存在、存続させることの意味について、近い距離での、すぐ目の前にあるものとしての判断じゃなくて、もっと長い長い、人間の歴史の上での1ページのものとして、判断してもらいたいなと思うんです。それを今壊してしまうことの恐ろしさを考えて欲しいなと思います。


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<署名サイトへのコメント>
「本当にね、いろんなものが消えていくんですよ。消えてしまったらもう、もとに戻らないし。でも、そこにあるものからはいろんなことが教えてもらえると思います。
それが僕らはまだそれが見て取れないかもしれないけれど、僕らよりもっと後の人たちはもっとたくさんのことがそこから見えるようになるかもしれない。それを今壊しちゃったら、この先の人たちは何もわかんなくなっちゃうかもしれない。これは残すべきだと思います。」


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だいじなお話をお聞かせいただきました。ありがとうございます。

●片渕須直監督のアニメーション映画『この世界の(さらにいくつもの)片隅に』、2019年12月20日より上映中です。前作『この世界の片隅に』に250カット以上の新規シーンを加え、主人公・すずのみならず戦時中の広島で生きる「さらにいくつもの」人々の心の動きを描き出した新作。ぜひ皆さんも劇場に足を運んでみてください。

●わたしたちのキャンペーン

わたしたちは、取り壊す方針で話されている旧広島陸軍被服支廠の全棟保存を求めて署名活動を中心に活動を広げています。


●片渕監督が被服支廠を訪れたニュース

https://www.chugoku-np.co.jp/local/news/article.php?comment_id=599103


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