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いろいろどうでもよくなってきた。いい意味で。

僕はいまマレーシアのイポーというところに住んでいて、滞在歴は8年目になる。日本に本社がある会社からマレーシアの工場に赴任しているという立場だ。

この2年ぐらいは世界がこんな感じなので、日本への一時帰国がままならず、人生で初めて2年以上日本に帰らない生活をしている。

いわゆる会社員が世界のどこに赴任していたとしても、恐らく2年以上日本に帰らないというのはそうそうないことなんじゃないかと思う。

現時点では緩和の方向に進んでいるとは言え、現在のルールでは日本に一時帰国しようとすると、日本で14日間、マレーシアに戻ってきても7日間の隔離が義務付けられているので、それだけで3週間は隔離生活をしなければならない。
ワクチン接種を終えていても、出入国時のPCR検査で陰性が証明されても、このルールには従わないといけない。
これは外人が日本に入国する場合でも、僕みたいな日本人が一時帰国する場合でも、同じルールが適用されてしまう。

海外赴任者というのはほとんどの場合、現地に日本人が大勢いるというわけではない。一時帰国をして日本で1週間自由に行動したとしても、隔離期間を入れると1ヶ月かかってしまう。仕事のことを考えると、それなりにハードルが高くなってしまうのだ。

先月からマレーシアでも2回のワクチン接種完了者に限って外食が許可されて、半年ぶりに友達とバーやレストランで酒を飲めるようになった。

昨晩もしこたま飲んできたのだが、最近自分の心境に変化が出てきたような気がして、それを明確にするために文章に残そうと思ってこれを書いています。

この2年間ぐらいの間、外出がほぼ禁止され、道路には警察と軍隊による検問があふれていた厳しいロックダウンも経験したし、徐々に生活が戻ってきたと思って喜んでたらまたロックダウンが始まるような生活を繰り返してきた。

マレーシアのロックダウンというのは、マスクをしていないのを警察に見つかっただけで罰金1000リンギット(約2万6千円)が課されるし、飲食店の闇営業なんかも絶対に許されない。僕が知っているお店も、いくつか違法営業をしていて警察に踏み込まれてオーナーや店員が逮捕されて多額の罰金を支払ったぐらい厳しいもので、日本に住んでいる方は恐らく想像もつかないと思う。

つい最近まで、状況が良くなってきた国が入国時の隔離免除を始めたというニュースを見て羨ましがったり、逆に状況が悪くなってきた国のニュースを見て落胆したりしていた。

「日本に一時帰国したい」とか「ラーメンが食べたい」とか「美味しいマグロの握りが食べたい」などの気持ちが強くて、一刻も早く世界が元通りになることを期待していたのだが、なんというか、そういうのがどうでもよくなってきた。

もちろん日本には大切で大好きな友達もいるから早く会いたい、両親も高齢ながら健在なので顔を見に行きたいという気持ちは強くある。

しかしこればっかりは自分の力ではどうにもならないということにやっと気づいたんだと思う。

感染者数の増減に一喜一憂するのも意味がないし、政権の方針を批判しても簡単には変わらない。誰もこの世界をもとに戻すことは出来ないのだ。

ラーメンやマグロの握りが食べたいんだったら250キロ離れたクアラルンプールに行けばなんとかなるし、言い方は良くないかもしれないけれど、希望を持てば持つだけ落胆の幅が広がるだけだということをようやく自分が理解したんだと思う。

こんなのはジャニーズの誰かと結婚することを夢見ているアラサーやAKBの誰かと付き合えるかもしれないと勘違いしているオタクと同じで、希望を持ってもほぼ100%無理だし、ジャニーズやAKBの誰かが結婚してしまったことに落胆しても、誰のためにもならないし世界は変わらない。
せいぜいやけ酒を飲んだ分だけ居酒屋の親父が儲かるぐらいだ。

ケ・セラ・セラである。なるようにしかならない。

一年半以上かかってやっとこの境地にたどり着いた感じだ。清々しくもある。今なら瀬戸内寂聴先生の言葉にも素直に深く頷ける自分がいる。

今週から来週にかけては精一杯酒を飲みに出かけるつもりだ。

こういうことは出来るときにやっておかないと、出来なくなったときに後悔するから。

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