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営利でいくか非営利でいくかの選択


わたしがこの記事を書いた著者と初めて会ったのは13年前の6月のことだった。以来いろいろなところで彼のことを知り学ぶことができた。著者は慎泰俊(Taejun: TJ)氏といって五常・アンド・カンパニーの代表取締役である。

わたしは2010年代にTJからさまざまなプラスの影響を受けてきた。それまで影響を受けてきた人はいるけれども、その人たちというのは20代の会社の上司。あるいは大学院時代の教授であった。会社の上司というのはUBS時代のスイス人とアメリカ人の上司で二人とも博士号を持っている。また大学院時代の教授はもちろん博士号を持つ識者だった。

そこでこの文章では記事でTJが何をいっているのかのか。わたしなりの解釈を試みて読者に紹介してみたい。もうTJとは12年ほど直接会っていないので推測している部分があることは認めざるを得ない。ただし、推測とはいえ、とてもよく理解できる記事である。TJを宣伝しておきたいこともある。

記事のポイントはまず社会解決型ビジネスと非営利事業とは境目があることからはじまる。違うということが言いたいのであろう。それはTJが五常・アンド・カンパニーというビジネスのオーナーであること。一方で彼がかなり前にはじめた非営利組織(NPO)のLiving in Peaceの代表理事であること。二つの組織のオーナーとして違いがあるということを言っている。では何が違うというのだろうか。

事業には内と外がある。事業の目的は価値創造である。この価値創造が社会解決事業には外の割合が大きい。非営利の場合は組織の外に生み出される割合がかなり大きい。

またビジネスは財務的指標がどうしてもついてくる。しかし非営利では財務的指標のみでは評価ができない。非財務指標というものでしか表せない。それはビジネスがお金で測定できる反面、非営利はお金儲けではない。

利益の追求ではなく人道的支援であること。かなり危険な単純化・省力化した言い方でいうとビジネスはお金、非営利は人であること。社会課題は弱者の救済というのが前提であること。

この困っている人の数が膨大になってきており、政府だけでは助けることが困難になってきた。政府が税金を使って適当にやってもうまくいかない。かなり経営の専門的なスキルが必要になってきたといえよう。特にファイナンスや組織開発。

よって政府機関の補完、あるいはそれ以上に社会の問題を解決する組織が必要になってきたといえる。税金を使うだけでは解決できない、それ以上のスキルが要求される社会課題が増えたということになる。

多くの識者がずいぶんと前から経済よりも社会の課題が深刻になるというのは言っている。最初のポイントは社会課題を解決するビジネスであれ、非営利であれ、組織の外での価値創造がかなりを占めるということ。わたしはこの見解は正しいと解釈している。

次にTJが願っている二つの観点について解釈してみよう。政府がインパクトスタートアップと非営利組織をきちんと区別できること。これを願っているのでないか。政府がこの二つを混同しないこと。それは人道的支援という表向きのミッションが同じように見えても二つは経営が違うという点がある。

どういうことだろうか。わたしはこう解釈した。

ビジネスでは財務諸表がある。貸借対照表、損益計算書、そしてキャッシュフローといって財務三表がある。そこで多くの株主が見るのは貸借対照表にある資本金であること。株価といういいかたもできるかもしれない。そして売上と利益という指標がある。

もちろん非営利組織であっても同じような財務諸表はあるでだろう。しかし非営利組織では資本金と解釈をしない。非営利組織には株価というものはない。株式市場でどのような期待があって評価がされているのかという圧力はない。非営利組織には市場原理というものが適用されない。

ここを政府の職員がきちんと区別してほしい。そういうことがいいたいのではないか。

最後に社会課題をビジネスで解決するのか。それとも非営利組織で解決するのか。営利でいくのか、それもと非営利でいくか。実はこれをアドバイスできるひとはかなり少ないのではないか。探してもそう多くはない。書籍を片っ端から読んでアドバイスできるわけでもない。実践が伴ってないからだ。

そこでTJを宣伝するわけだけれども、その理由は彼の著作がある。「働きながら、社会を変える。」という書籍であって、わたしはアマゾンで注文した。2012年の2月にTJのサインをもらった。この本は実によく書かれている。12年前に書かれたとしてもかなり進歩的な書籍であること。ファイナンスの専門家として実体験をもとによく書かれていること。

また数年前に六本木にある政策大学院(GRIPS)での講演実績がある。この大学院で講師として招かれるというのはそれなりの評価を受けていないとできない。

TJがもともとアントレプレナーとしての素養があり、それを知っていてかなり努力をしてきたということもある。営利か非営利か。これは一度決定してやりはじめたら後戻りできない選択であるからしてTJにアドバイスを求めるというのはいいことだと思う。これをアドバイスできるひとは少ないのではないか。かなり専門的なアドバイスになるであろう。

記事についてわたしの解釈がそれほどずれておらず、かつ、この文章がTJの宣伝になることを願う。

偶然とはいえ13年前に会ったことはよかった。