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男性は終了したのか

1970年代からアメリカで盛んにいわれるようになった女性解放。1980年代に入ると男女平等改革が浸透しはじめた。その動きは一過性のブームで終わることなく今日まで続いている。男女間で差別をしてはならない。機会の平等を起点に仕事やプライベートでも平等。仕事では同じように要職につき仕事に見合った同額の給料を差をつけることなく与える。プライベートで男性は外で女性は内。それをやめる。同じように家事を分担して育児をする。東京でもそういったライフスタイルが定着してきた。

西洋諸国ではこういった運動を推し進めたことで今日あることが指摘されるようになった。男性が草食系になってきた。さらには男性は終了したのではないかという議論まで上がってきている。

あるオンラインイベントで男は終わったのかという質問をしてみた。背景はこの30年くらいで男性の役割に変化が生じている。わずかながら女性がマネージャー職を得て役員室にも席を置くようになった。上場企業でそれぞれ15%と11%だという。まだその率は低い。

よく引き合いに出された男性の象徴として権力、財力、影響力。そういったマッチョなイメージはもう流行らない。女性もそれを男性に求めなくなり違うアイデンティティを探すようになったという。

そういう傾向もあるのだろうか。東京では男性の実に4人にひとりが50歳まで独身でいるという。それの理由は給料が安すぎて家庭をつくることができない。男性の多くが結婚を回避しているため女性の未婚率も上昇し5人にひとりが未婚のままだという。

イベントに参加したひとによると付き合ってみたけど男性が期待していたほどではなかった。結婚をしたけど次第に尊敬できなくなってきた。そういったことが周りで聞こえてくるという。

これらの意見を聞いて私は自分なりの回答を持つにいたった。男は決して終わってはいない。ただ男性の役割は明らかに変わってきている。つまり権力、財力、そして影響力といったものにそれほど関心を示さなくなっている。そうなるとそういう男性に対して女性が魅力を感じるのかどうか。価値観のシフトが起きるのかということであろう。

まず権力について。民間企業であれば平社員から課長とになりやがて部長になっていく。部長になる年齢が平均40歳だという。18年働かないとなれない。中国やタイでは30歳程度で部長になる。そこでは部下を束ねて事業を仕切る仕事を30歳でしている。ところが日本の場合はどんなにがんばっても若くして部下をたくさん持てない。そのため指導をしたり指示を出すことがない。自然と権力を持つことに興味がなくなる。会社においては重い責任をとりたがらなくなる。40歳になる前からリスク回避をしはじめる傾向がある。

次に財力について。フリーターやパートで仕事をする人が増えて給与が不安定になった。短期契約で働く人が多い。労働人口の36%は契約社員だという。そのひとたちは正社員がやりたがらない仕事をまかされている。スキルもそれほどあるわけではない。そうなると結婚する時期を遅らせるかしない。家族を持つことに抵抗感が出てくる。

都内であれば親がいる実家から仕事に出かける。一人暮らしをすることなく実家にいることで親が面倒を見てくれる。好都合だ。その暮らしにすっかり慣れてしまい経済的・社会的に独立しなくなった。親にもいささかの財産や年金がある。それをあてにして生きていくほうが楽だという考えを持つに至った。職場でもより多くのお金を求めてがんばろうとはせず低飛行の安定をめざす。それでいいだろうという考えになってきた。

三つめは自らが何らかの方法をつかって人を巻き込んでいこう。なにかの影響の輪を使って改革を仕掛けていこう。そういうことを考えなくなった。つまりSNSのような楽しいことばかりで時間を過ごす。影響力のある人というのはインターネット上で視聴回数の多いエンターテイナーのことをいう。そういった人たちの周りにぶら下がっていることがいいこと。かっこいい、そしてきれいだという方ばかりに傾いていく。娯楽と悦楽の世界が現実になる。ファンタジーの世界に近い。それ以外の世界を受け付けず自ら影響力を与えたいとは思ってもみない。

こういった考えが男性にあるのであればわたしは決して反対をしない。むしろ歓迎する。問題は女性がそういう男性に対して魅力を感じるかどうかであろう。価値観シフトして魅力を感じてほしいとも願う。別に権力がなくても低姿勢でいいではないか。お金がなくても東京ではなんとかやっていける。なにか影響を与えなくてもいいのであろう。なにかいっしょにやろうと声掛けをしない。それで自由であり解放される。

こういった草食系そして本来男性の本能に逆らう生き方をしていると人口は相対的に減少しやがていつかは滅びるだろう。ただこれは価値観の問題であってそれを女性が好むのであればそれでいいではないか。普通はありえないがありえないほうにシフトするように迫られている。

50年以上続いている女性解放運動。男女間格差がなくなり機会の平等が欧米並みに推進される。結構なことである。ただ残念ながら実際はそうなってはいない。なってもいないのに男性が要職につきたがらずお金をかせぐ方向にいかない。そして男性は弱体化していく。草食系といわれようがだらしないといわれようがますます家に引きこもり外に出なくなる。活動自体しなくなるであろう。

それでも男性は終わってはいないだろう。ただこのままいくと種の保存すらも危ぶまれることになろう。絶望することはないが奇跡は起きない。