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Oggiを買って読む女性が放つメッセージ

このところ書店に立ち寄っても書籍・雑誌をお金を出して買うことが少なくなった。都内でサラリーマンだった頃は会社の帰りにわざわざ東京駅で降りて書店で時間を過ごした。八重洲ブックセンター、丸善本店は品揃えがよく新刊本もよく目につくところに配置されている。そのためかどのような書籍が話題になっているか、売れる本というのはどんなものなのかよくわかった。そしてビジネスの書籍をよく買ったものだった。

ところがサラリーマンを辞めて大学で教えるようになると本屋さんにいくことが少ない。本を買うという習慣でさえほとんどなくなった。大学の図書館が身近にあるためである。書籍もそれほど安いものではない。時間に追われることもなければあわてて買う必要もない。公共図書館で少し待てば読める。雑誌コーナーも充実している。ネットでも格安だ。

ある時、葛飾区金町中央図書館にいった。窓があって日が差し込むところに雑誌コーナーがある。わたしはこれまでビジネス関連の雑誌の表紙くらいしか見ていなかった。ふと振り返ると女性雑誌コーナーがあった。そこで目の高さにある雑誌が目に入ってきた。Oggi(オッジ)という雑誌だった。しばらく表紙を眺めた後、手にとってパラパラとページをめくった。写真が多い。モデルさんばかりだ。厚みがあって結構重い。そして値段を見た。このような雑誌を誰が買うんだろう。

あるオンラインイベントでOggiについて話をした。これを見たことありますか。だれが手にとるんでしょう。わたしは不案内なことは一般の人たちに聞くことにしている。イベントに参加してきたひとたちは5人。若い男性が2人。年配男性が1人。あとはシニアの女性一人だった。

その女性はいった。これは若い女性が着る服であってその広告媒体でしょう。昔と違って社会で多様性と自由化が進んだ。オフィスではこれだという型の決まった服を着なくてもよくなった。自由に自分たちの気に入った服を着てきてもよくなった。そのライフスタイルではないのか。

若い男性が続けた。かなり昔のように会社が女性社員にユニフォームを支給することはなくなった。ひとつには会社がコスト削減を進めていること。ユニフォームを着ることで職員が全体に合わせる必要がなくなったこと。そして会社の中に服の担当者を置く必要がなくなったこと。担当者がデザイン、発注、新品交換、あるいは洗濯といった業務にお金をかけれなくなったこと。製造業からサービス業に業態がシフトした。それにより接客業が増えた。

ユニクロでなくもう少し特徴のある服を着ていく女性が増えた。そういった内容だった。

わたしはだまって聞いていた。イベントが終わったあとしばらく考えてこのOggiという雑誌を買って、そこに載っているモデルさんの服を着ていく。そこにはなにかしらの意味があるのではないかと想像した。

それはこの雑誌を買って読む女性はなにかしらのメッセージを発しているのだろう。以下の3点であろう。ひとつは自分たちは都会派であること。次に若い世代、特にZ世代であること。最後にファッションには十分にお金と時間、労力を使うということ。なんら新しいことではない。しかしSNS時代においてはお付き合いする友達もそういうはっきりとしたスタイルの傾向を示してくる。どういうことだろうか。

まずこれは東京でいえば都内で働く女性たちが着ていく服であり、バックや財布を見てもオフィス・ワーカーであること。これは間違いない。都内には製造業という工場と隣接している会社はほとんどなくなった。ということはメガバンクやIT企業をはじめとしたサービス産業が中心になっている。比較的裕福であり、それなりの年収のある会社で働くひとたちが身に着けるファッションであること。そうなると田舎にいる女性たちはなかなか身に着けない。これを着ていくオフィスが少ないからだ。

次に40代以上の女性が身にまとう服ではなかろう。服だけでなく財布やバックを見ると若い女性が好みそうな形態をしている。40代以上になるとやはりそれなりの落ち着いたものを身につけたい。次第にOggiに掲載されている身の回り品には目もくれなくなっていく。たとえ独身であってもスポーツを積極的にしたりとか会社でバリバリと働くといったライフスタイルではなくなっていく。しかし20代、30代の女性はお金を稼ぐために一生懸命に働かざるを得ない。そこでファッションにこだわる。

そしてこの雑誌に載っているモデルさんのような恰好をすることでしっかりとしたメッセージを発している。若い都会派であってファッションに資源を投入しているということ。資源というのは自分が持っているお金、時間、そして労力をそれだけかけているということだ。ということはそこまでのリソース(資源)を投入しているのであってそこを理解してくれる知り合いとつながる、つながりたいということであろう。これがSNSへとむすびつく。

わかってくれるひとたちとのコミュニティーをつくる。そのコミュニティーにはいっていく。そのメッセージを発している。シニアのひとたちとは群れることはない。

わたしは都内の図書館によくいく。葛飾区だけでなく、墨田区の中央図書館や中央区日本橋の図書館にいく。そこには雑誌コーナーがあってふと見渡すと若い女性向けの雑誌が所狭しと並べられている。これを一体だれが見るのだろうか。そこが気になっていた。江戸川区や足立区の図書館にもたまにいくことがありそこでも雑誌コーナーは目立つところにある。それだけ読者が手に取りやすいということだ。

ところが千代田区の日比谷図書館というのはビジネス街にあるため雑誌があってもビジネス関連のものが多い。

やはり普段からこういったことをどこかで気にしていてひょっとしたらこのような雑誌を見て労力を割いている女性のメッセージを感じた方がいいであろう。そうでない人たちを別の人として見るわけではないけれどもOggiのようなライフスタイルに合わせていきたいとメッセージを発していると考えられなくもない。なんでもいいというわけではなかろう。

この週末は図書館よりも銀座や表参道にいくことにしよう。そこで観察するのも楽しい過ごし方だな。